高齢者に多い「心不全」 予防に食事管理や禁煙、節酒

 

 心臓の機能に障害が起き、体にさまざまな症状が出る「心不全」。自覚症状があっても心不全と気付かずに放置し、悪化させてしまう人は少なくない。高齢化の進行にともなって患者の急増が心配されており、早期発見し適切な治療を行うことが喫緊の課題となっている。(平沢裕子)

学会が一般向け定義

 日本循環器学会と日本心不全学会が10月末、心不全を「心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と一般向けにまとめた定義を公表した。人生の「末期の病気」と誤解する人が多い心不全について、正しく理解し、予防や早期発見・治療につなげたいためだ。

 心不全は、全身に血液を送り出すポンプの働きをする心臓が、ポンプ機能を果たせなくなり、体に症状が現れた状態(病態)のこと。現在の患者は約100万人だが、団塊世代が後期高齢者(75歳以上)となる8年後には120万人に急増すると推計されている。発症すると5年間で半数以上が亡くなり、大腸がんよりも予後が悪い。

 心不全に至るまでには、発症の背景となる基礎疾患があるが、富山大大学院医学薬学研究部内科学講座の絹川弘一郎教授は「基礎疾患の治療が十分でなく、心不全となってしまう人が少なくない」と指摘する。

 基礎疾患は、高血圧や不整脈、虚血性心疾患などで、遺伝やウイルスが原因の場合もあるが、多くは生活習慣に起因する病気。心不全はこれらの病気が悪化した結果ともいえる。

65歳以上で急増

 心不全の主な症状に、坂道・階段で息切れする▽手足が冷たい▽だるい・すぐ疲れる▽尿量・回数の減少▽むくみ・体重増加▽夜間の呼吸困難やせき-などがある。

 高齢者はこれらを「加齢による衰え」と勘違いして受診せず、診断が遅れがちだ。「心不全は65歳以上で急増する。シニア世代でこれらの自覚症状がある人は心不全を疑い、早めに検査を受けてほしい」と絹川教授。

 早めの検査は、急激に悪化する「急性心不全」を予防する意味もある。急性心不全になると、心筋が大きなダメージを受け、元に戻らない部分が出てしまう。急性心不全の自覚症状は、呼吸困難や息切れ、食欲不振など心不全と似ているが、より強い症状として現れる。速やかに医療機関を受診した方がよい。

塩分1日6グラム以下に

 心不全の予防や治療の一環として、生活習慣を見直すことが大事になる。特に注意したいのが塩分摂取で、1日6グラム以下が推奨される。減塩に詳しい管理栄養士の荒牧麻子さんは「1日3食のうち、1食分を塩分が少ない食事にしてみては」と勧める。例えば、食パン1枚(6枚切り)とコーヒー、ヨーグルトなどの乳製品、フルーツで1食分とすれば、パンにバターを塗っても塩分は1グラム以下に抑えることができる。パンをやめれば塩分ゼロになり、6グラムの塩分を残りの2食に使えることになる。

 また、禁煙は必須。飲酒も控えるべきで、男性ではビール中瓶1本か日本酒1合程度、女性はこれより少ない量が勧められる。

 ■“自分ゴト”認識を

 循環器病研究振興財団(大阪府吹田市)は9月、20~60代の男女1000人を対象にインターネットで心不全に関する生活者調査を実施。それによると、心不全の症状や内容まで理解している人は3割にとどまり、理解している人の5割超が「心不全は人間が死亡したときの診断名のこと」と回答した。

 また、肥満やたばこ、塩分の取り過ぎが心不全の原因となることを知っている人は半数以下だった。一方で、正しい知識を提供した後には、「自分も心不全になる可能性がある」というリスク意識や、予防意識が高まった。同財団の北村惣一郎理事長は「早期発見・治療には病気を“自分ゴト”化してもらうことが重要。そのための啓発活動が急務だ」と指摘している。