精神疾患の親をもつ子どもの会「こどもぴあ」発足へ 本や集会で理解呼び掛け

 
学習会で顔を合わせた(前列左から)「こどもぴあ」副代表の小林鮎奈さん、代表の坂本拓さん、(後列左から)横山恵子さん、蔭山正子さん=東京都内

 精神疾患のある親に育てられた人たちが、互いに語り、支え合う場をつくろうと「精神疾患の親をもつ子どもの会(愛称・こどもぴあ)」を発足させる。彼らを応援する専門家も、支援の大切さを広く知らせるため、患者の子供たちの体験記を集めた本を出版。平成30年から活動を本格化、会への理解や参加を各地の集会などで呼び掛けていくという。

成人後も問題に

 親の精神疾患は子供の生活や発達に大きな影響を与える。親の病気を十分理解できず、不安や孤立感を抱えて成長する子供は多く、成人後のさまざまな生きにくさにつながっているという。だが「そうした問題に目が向けられるようになったのは最近です」と、家族支援に取り組んできた埼玉県立大の横山恵子教授(精神看護学)は話す。

 こどもぴあのきっかけになったのは、NPO法人が続ける家族の相互支援プログラム「家族による家族学習会」。参加者の中心は患者の親だが、「子供のニーズは異なるのでは」と考えた横山さんらの企画で、27年から患者の子供を対象に学習会を始めた。

 そこでは各自が、幼少期、中高生時代、成人後と成長の過程をたどり、体験や思いを語る。「参加者が抑え付けていた自分を取り戻し、元気になっていく姿を目の当たりにした」と横山さん。

 学習会を重ねる中で運営を担うメンバーも20~50代の十数人に増え、こどもぴあとして30年1月のスタートが決まった。

自分と向き合う

 副代表を務める小林鮎奈さん(27)は、小学生の頃に母が、幻覚や妄想などの症状が出る統合失調症になった。自分は病気だと認められない母。誰も助けてくれない、という思いの中で「人への頼り方が分からないまま大人になった」という。

 看護学校に進学し、病気の理解が進むと、母への気持ちも変化。できることから少しずつ取り組むことで母の病状も好転してきた。学習会で子供の立場の仲間と出会い、ようやく自分自身と向き合えた。「一人じゃないよ、と伝えたいです」

 代表の坂本拓さん(26)は精神保健福祉士。鬱病とパニック障害に苦しむ母にあくまで尽くす生活を続けてきた。社会に出て支援者の職に就き「家族が全てを背負う必要はない」と改めて実感したという。「仲間とつながって見えてきたこともある。僕らが表に出て声を上げることで、特に若い世代の助けになれれば」と話している。

 精神疾患の患者数は増えており、厚生労働省の26年の患者調査によると約392万4千人。結婚して子供を持つ人の増加も必至だ。

「親になる」支援

 だからこそ子供が置かれた実情を知らせたいと、横山さんは学習会に参加した9人が寄せた詳しい体験を本にまとめた。「精神障がいのある親に育てられた子供の語り-困難の理解とリカバリーへの支援」(明石書店)で、共に学習会を支えてきた蔭山正子・大阪大准教授(公衆衛生看護学)との共編著。

 蔭山さんは「子供の支援の必要性が注目されてきたのは前進だが、多くの支援者の関心は、親による虐待の防止という観点にとどまっている。親になるという、人として当たり前の希望を、いかに早い段階から応援していくかが大切ではないか」と指摘する。

 学習会はこれまで東京で開いてきたが、こどもぴあの活動は全国に広げたいという。30年2月に福岡で開かれる家族支援に関するシンポジウムでメンバーが体験を話す。

 こどもぴあへの問い合わせはメールで。kodomoftf@gmail.com