子育てがしやすい社会に ステッカー「ALRIGHT BABY」に賛同集まる

 
作成者の岩城はるみさん(右上)は「育児中の親子に寛容なことが当たり前で、ステッカーがいらない社会になってほしい」

 小さな子供とその親に優しく、少しでも子育てがしやすい社会になりますように-そんな願いが込められた小さなステッカーには、「ALRIGHT BABY」の文字とともに、幸せそうにほほ笑む赤ちゃんのイラストが描かれている。作成者の岩城はるみさん(35)=奈良県生駒市=は、「『子連れなら周囲に遠慮すべきだ』という見えないプレッシャーが減って、もう少しマイペースに過ごせる社会になってほしい」と話す。(尾垣未久)

視覚で子育てママを「助ける」

 ステッカーは、直径5・5センチのMサイズ(税抜き150円)と直径3センチのSサイズ(同120円)。かわいい赤ちゃんと、奈良にちなみ、シカのキャラクター「ロク」が、やさしいイメージを伝える。

 電車などの公共交通機関で、ベビーカーを使っていて肩身の狭い思いをしたり、泣き声をあげる子供に困ったり…。周りの人たちがステッカーを貼ることで、「大丈夫だよ」とお母さんに伝え、助けてあげようと制作された。

 「『母親なら子供を泣きやませて当然』『子供がかわいそう』と、親になった途端に厳しい目を向けられる社会では、子供を持とうという意志も薄れてしまう」(岩城さん)

 岩城さん自身、9歳と6歳の子供を持つ母親。「育児がとても大変だった」と話す岩城さんは、通っていたベビーマッサージ教室で母親仲間と話をすることで救われたという。

奈良から広がる

 ベビーマッサージの講師の資格を取得した岩城さんは現在、生駒市など奈良県内に3つの教室を構えているが、母親たちの悩みが変わっていないことに違和感を持っていた。

 ステッカーを制作するきっかけは、昨年12月に訪れた。奈良市のイベントで「日本人が持つ母親像」をテーマにプレゼンを行った岩城さんは、同市のデザイン事務所「アマノジャックデザイン」の三原賢治さんと出会った。

 「小さな子供と育児中の親に優しい社会を目指したい」-。岩城さんは、三原さんにステッカー制作を持ちかけ、かわいいステッカーができあがった。

 周りの人が、スマートフォンや身の回りのものにステッカーを貼っていれば、子連れの母親に大きな安心感を与えられる。運動の波は広がり、奈良市の仲川げん市長や生駒市の小紫雅史市長らも賛同している。

子育てに関係ない人に知ってほしい

 ステッカーから広がる「子供に優しい社会」への母親の期待は大きい。

 3人を育児中の京都府木津川市の石田理乃さん(35)は「帰省することになると、移動が不安で数日前から憂鬱に。ステッカーで意思表示してもらえることはありがたい」と話す。自身も育児中の仲田昌美さん(43)=奈良市=は「ステッカーを身につけることで、声かけがしやすくなった。不審がられることもないと思います」と笑顔を見せた。

 同市の1児の母、入川若奈さん(35)がいう「子育てとは直接関係のない人にこそ、ステッカーを知ってほしい」という思いは、多くの母親が最も強く持っているはずだ。

 大阪市の写真家、中西将史さん(34)には子供はいないが、岩城さんのプレゼンを聞き、「当事者ではない自分から見ても、社会が、育児中の親子に冷たいと感じることがあった。話を聞いて自分も何かできないかな、と思った」とステッカーを購入した。

 岩城さんも「ステッカーの周知がきっかけとなり、こうした問題を当事者でない方に意識してもらいたい」と話している。

キーワードは発信力

 「このままでは、自分の娘が親になったときも今と同じような悩みを抱えるのでは」と不安を感じ、ステッカー制作を決めたという岩城さん。次世代のためにも社会に変化をもたらそうと意見を発信する姿勢が印象的だった。

 見知らぬ子連れの親に対して手助けをしようと考えても、声かけなどの行動に移すには勇気がいる。ステッカーを使うことは、意思を発信するための第一歩として、相手だけでなく自分のことも励ましてくれるような気がした。