耕作放棄地で大麦育て発泡酒造り 「両河内エール」完売で地ビール工場へ一歩 静岡・両河内地区

 
「両河内エール」=8日、静岡市清水区(吉沢智美撮影)

 静岡市清水区の山間部、両河内(りょうごうち)地区の耕作放棄地で育てた大麦で発泡酒「両河内エール」を製造し、少量生産ながら1200本が完売した。農業体験会を手掛ける地元のNPO法人「複合力」(村上勝理事長)が地元の農作物を使った商品化にこぎつけたもので、夢の「地ビール工場建設」に一歩踏み出した。

(吉沢智美、写真も)

 茶やタケノコ栽培が盛んな両河内地区は、高齢化が進み耕作放棄地も増えた。かつて約90軒あった茶農家も8軒に激減。このため、住民有志らが地元の活性化を目指し、平成24年に「複合力」を結成。休耕地を活用して農業体験会を開き、タケノコ掘りなど観光客の誘致に向け活動している。

 中山間地域の特産品開発を支援する市の「これ一番事業」を利用。栽培に適した作物を探るため、薬草など約60種類を試した。その結果、「ホップがよく育ったことから、地ビール造りのつながった」と複合力の加藤伸一郎副理事長(58)。コメの裏作に大麦を栽培しており、「将来的に工場を建設して」地ビール製造に進もうと考えたが、酒税法の壁にぶつかった。

 酒税法ではビール製造の免許を取る場合、年間60キロリットルの製造が必要。大麦の生産量が足りないことから、年間6キロリットルと10分の1で済む発泡酒造りに切り替え、今夏、島根県江津市の石見麦酒に製造を依頼した。

 完成した発泡酒は大麦の香りと濃厚な味わい、きめ細かい泡が特徴。フレーバーとしてレモングラスが加えられ、爽やかな飲み口と好評を得た。商品名のエールには「地元を盛り上げようとの思いを込めた」(加藤副理事長)。

 「両河内エール」は地元の酒屋や複合力運営ショップcomo(清水区西里)で販売、市内のレストランでも提供した。7~10月に3回に分け計約400リットルを生産し、瓶詰330ミリリットルで540円(税込み)と高価だが、すでに完売。来春は大麦生産量を増やし、再び製造を依頼する。

 複合力では、希少な酒米「亀の尾」を入手。休耕田を利用して酒米の生産量を増やし、裏作で大麦の生産も拡大をする。来年も地発泡酒を発売するが、「将来的には工場を建設して地ビールを生産したい」と加藤副理事長。地酒の日本酒造りにも挑戦し、「地ビールと地酒のギフトセットを販売する」夢も描いて。