「水の都」復活を 舟運の定着狙う 五輪に向け東京都が社会実験

 
東京都が実施した社会実験で、乗客を乗せ日本橋の船着き場を出発する船=13日、東京都中央区

 東京都が海や川、運河など水辺の魅力を生かし、江戸時代から「水の都」と呼ばれたにぎわいを復活させようと、名所を船で巡る「舟運」の社会実験を重ねている。2020年東京五輪・パラリンピックに向けて新路線を就航させ、増加する外国人観光客らの交通手段としても定着を図る考えだ。

 今月13日夜、東京都中央区日本橋の船着き場で乗客ら約10人を乗せた船が出発した。日本橋をくぐってUターンし、高層ビル群を眺めながらスカイツリーも見える隅田川に抜けた。

 約40分間のクルーズで乗船料は大人1千円。乗客は夜景に歓声を上げ、写真を撮っていた。練馬区の主婦、矢野知子さん(57)は「日本橋出発は斬新で普段は見られない橋の下も見られて満足だった。これで千円はお手頃」と声を弾ませた。

 東京では江戸時代、物資や人を水路で運んでいたが、明治時代以降、鉄道や自動車の発達に伴い移り変わったとされる。都によると舟運は現在、浅草やお台場、羽田空港などを結ぶ約10コースの定期航路があり、複数の事業者が1日約50便を運航。このほか、不定期の観光クルーズ船や、船内で飲食と景色を楽しむ屋形船も営業している。

 都は平成27年度から舟運の調査運航を始め、29年度も12月まで5ルートで社会実験を実施。クルーズ後、中央区銀座の歌舞伎座で歌舞伎を鑑賞する企画便も運航した。32年までに隅田川に架かる12の橋をライトアップし、新たな観光名所とする。

 ただ、舟運の認知度が低い上、船着き場が鉄道の駅直結ではないなどアクセスが悪いことが課題という。今後、利用客の需要や事業者の採算性を検証した上で、30年度以降に新たな定期航路を運航させるかを検討する。

 舟運への注目は東京以外の地域でも高まっている。9月には大阪府内の淀川で大阪市と枚方市を結ぶ民間の定期観光船の運航を開始した。国土交通省淀川河川事務所は今後も京都市までの航行が可能となるよう検討を続ける。

 都の担当者は「東京五輪に向け、外国人観光客に東京の水辺をアピールするチャンス。舟運を活性化させたい」と話した。