【著者は語る】中村瑞希氏「タタールスタン ファンブック」

 

 □筑波大学大学院博士前期課程・中村瑞希氏

 ■ロシア連邦最大の少数民族 徹底紹介

 本書はタタール人、そしてその多くが住まうタタールスタン共和国について、さまざまな視点から解説した、マニアックともいえる一冊です。日本では数少ない、タタールを研究対象とする研究者である櫻間瑛氏(日本学術振興会特別研究員)と菱山湧人氏(東京外国語大学大学院博士後期課程)との共著です。

 隣接するロシアが200近い民族を抱える多民族連邦国家であることをご存じの方は、どれほどいらっしゃるでしょう。本書で取り上げるタタールはロシア連邦最大の少数民族で、日本で一般的にイメージされる「ロシア人」とは文化も言語も宗教も異なる人々です。

 日本で知られるタタールといえば、元プロテニス選手のマラト・サフィン氏が挙げられるでしょうか。かつて体操選手として活躍したアリーナ・カバエワ氏もタタールです。このように、ロシア代表=ロシア人と思われがちですが、タタールが活躍する例も珍しくありません。それほどロシア社会の中でタタールは活躍し、さまざまな分野で大きな存在感を放ちます。つまり、タタールを知ることは、ロシアをより深く理解することにも繋がるのです。

 タタールの多くが住まうタタールスタン共和国は、近年ロシア連邦のなかでも最も勢いのある地域の一つです。同共和国の首都であるカザン市は「ロシア第3の首都」とも呼ばれ、とりわけスポーツの国際大会などを積極的に誘致していることから、日本でも時折名前を聞くようになりました。2015年には世界水泳選手権が開催され、18年ワールドカップ(W杯)ロシア大会では一部試合がこの街で行われます。

 しかし、この地に暮らすタタールのことはおろか、タタールスタン共和国について、日本語で入手できる情報は限られた状況にありました。本書はこうした状況を打開すべく、彼らのもつ豊かな伝統や文化、同共和国の歴史や観光情報を分かりやすく紹介することに努めました。

 日本にタタールファンが増えることが、筆者一同の願いです。

                  ◇

【プロフィル】中村瑞希

 なかむら・みずき 1993年生まれ。幼少期からさまざまな言語を学ぶことを趣味とし、やがてロシア語を使って少数言語を学ぶことに夢中に。タタール語を習得し、2017年開催の第5回「国際タタール語・文学オリンピック」で優勝。現在は筑波大学大学院博士前期課程在学中で、世界各地のタタール人の言語継承に関する研究を行っている。(2376円、パブリブ)