大人の男をプロデュース 「床屋」が高級理容室に進化 わずか一席、完全予約制の店も

 
「ザ・スマイル・カンパニー」は店の外のボードでも「大人の男の格好よさ」にこだわっている。決して安くはないがサービスの質は高い

 床屋というとどんなイメージを抱くだろうか? そこはかとなく「おじさん」もしくはオシャレに目覚める前の「少年」が行くイメージだろうか。オシャレな髪型と言えば主役は美容院で、床屋は髪型にこだわるというより伸びた髪を切り、顔剃りをしてもらう場所といった風ではないだろうか。

 男性のお洒落な髪型は、これまでは美容院が得意なワックスで動きを出した髪型が主流であった。しかしここ数年、オールバックやツーブロック七三など床屋が得意そうな「男らしい髪型」を好む人が増えている。

 そしてさらに、床屋のイメージが最近変化してきている。髪型のカウンセリングから髪の悩みに対するアドバイスなど、ただ髪を切る、ヒゲを剃るにとどまらない、お客さんの気持ちに歩み寄った満足感を提供する高級理容室が増えてきているのだ。

 では、そういった高級理容室とは一体どんなところなのだろうか? 美容院や普通の床屋とどこが違うのだろうか? 早速行ってみることにした。

▽床屋は大人の男が帰還する場所だった

 横浜市青葉区あざみ野で「ザ・スマイル・カンパニー」を経営する理容師歴25年の横浜晃治さんに聞いてみることにした。

 横浜さんが言うには、「男の人生」として、床屋で髪を切っていた少年が高校生くらいになると美容院に行くことになることが多いという。お洒落だからだ。街の床屋より洗練されたお店に流行最先端の格好をしたスタッフがいる美容院のほうが、確実にお洒落な髪型にしてもらえるものと考えるのも当然だ。

 しかし、お洒落な髪型を求めて美容院に通う元少年達も30代半ばを超えたあたりから変わってくる。お洒落な街の美容院に行ってもまわりのスタッフが皆見るからに自分より若い。会話をしてもジェネレーションギャップで話が通じない。そしてお洒落な街自体に疲れを感じる。結果、癒しを求めて住み慣れた街に休日の活動場所が戻ってくるのだ。髪も若すぎないおじさん方がやっている床屋に癒しを感じるようになる。そう、床屋は「大人の男が帰還する場所」なのだ。

▽ホテル風、スタッフがスーツ着用のお店も

 帰還をした元少年達は、今や自分の人生をしっかりと歩んできた立派な「大人の男達」である。彼らにはもっと彼らにふさわしい贅沢な床屋があってもよいではないか? そこが大人の高級理容室の始まりだという。

 横浜さんは言う。「スタイルは様々です。高級感を出すためにホテル風にしたお店もあるし、古き良きアメリカンスタイルのお店、スタッフがスーツを着用して施術をする店もあります。当店は音楽や照明にこだわり、徹底して居心地を追求した店です。どの店にも共通していることは、大人の男のための床屋ということですかね」

 「ザ・スマイル・カンパニー」の席数は1台だけ、そして完全予約制だ。いわば個室と同じようなものだ。音楽は普段は静かめのジャズが流れていることが多いが、お客さん自身が音源を持ってきた場合はその音楽をかけることも可能だ。

 実際に施術する前には、髪型に関してのカウンセリングが始まる。お客さんの「なりたい自分」について、骨格、髪質などを丁寧にチェックしてお客さんの希望を実現していくという。また髪型はカットした日だけよければよいものではない。次に来てもらうときまでの「持ち」も考慮しながらカットするという。

▽床屋ならではの「顔剃り」でリラックス

 そして美容院との一番の違い、顔剃りだ。横浜さんは照明をギリギリまで暗く落とし、お客さんの椅子を上半身が水平なベッドの状態まで下げる。そして特殊な機械でお客さんの顔にスチームをあててマッサージをしながら施術する。筆者もスチームをあててもらったのだが、これがかなり気持ちいい。

 「メンズエステにはこういうのがあったりするんですよ。リラックス感が格段と上がります。まあメンズエステに行くような人は美容院に行く人が多いのかもしれませんが(笑)」(横浜さん)

 将来は大人の男がこの店に来ることに優越感を感じるような「ステータスのある店」にしたいとのことだ。

 経済成長期もバブルも終わり過去のものになり切った今、社会全体が若い社会ではなく成熟された社会になっている。そんな中、こういった「大人のための床屋」のようなお店はどんどん増えていきそうだ。(ジャイアント佐藤/5時から作家塾(R))

 《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。