中国では庶民の足として人気も… なぜシェア自転車は東京で流行らないのか

提供:PRESIDENT Online
※写真はイメージです(Getty Images)

 セブン-イレブン・ジャパンは自転車のシェアサービス事業を拡大する。これまでもNTTドコモ傘下のドコモ・バイクシェア(東京)と組み、都内など32店舗で約150台を設置してきたが、新たにソフトバンクの子会社、オープンストリート(同)と協業することを2017年11月に発表した。オープンストリートとソフトバンクが運営するシェア自転車サービス「ハローサイクリング」と連携し18年度末までに1000店で5000台配置する。

 利用には会員登録が必要で、スマホなどで自転車の予約をする。料金は場所や条件によって異なるが15分60円ほど。登録したクレジットカードで決済する。すでにさいたま市内の9店舗で導入しており、セブンの広報担当者は「来店者数の増加につなげたい」と話す。18年春をめどに横浜市と川崎市の店舗にも設置し、その後全国展開する方針。

 シェア自転車をめぐっては、庶民の足として自転車が定着している中国で急激に広がっている。大手の「摩拝単車(モバイク)」「ofo(オッフォ)」などが中国国内で約1600万台の自転車を投入しており、東南アジア、欧州にも進出している。日本ではモバイクが札幌市でサービスを始めている。

 日本勢もフリーマーケットアプリのメルカリ(東京)が18年にシェア自転車事業を国内で始める予定で、動画配信サービスなどのDMM.com(同)も参入を検討している。セブンの事業拡大は日本でシェア自転車が本格普及するきっかけになるかもしれない。

 本当に必要なのは郊外、生活の足になれるか

 シェア自転車自体は、日本でも観光地を中心に観光の補助として定着しているが、普段の生活の移動手段としての考えは浸透してこなかった。中国では庶民の足となり人気となったシェア自転車だが、サービスをそのまま日本に輸入するのは難しいという。

 中国経済などに詳しい東京大学社会科学研究所の丸川知雄教授は「中国では自転車をどこにでも乗り捨てられる利便性の高さが評価され、一気に広がった」と説明する。乗り捨てられた自転車はそのまま別の人が利用したり、GPSを辿ってスタッフが回収しにきたりする仕組みになっている。放置自転車に対する世論が厳しい日本でその方式を実現するのは「難しい」のだ。

 そんな中、日本で成功する鍵となるのはいかに自転車を借りたり返したりできる“ポート”を多く、必要とされる場所に設置できるかだという。東京都千代田区、港区などがドコモ・バイクシェアと組んで都心部の約300カ所にシェア自転車のポートを設置しているが丸川教授は「現状として全く足りていない」と手厳しい。

 「日本は土地の所有権が複雑で、自治体が主導すると、自治体の所有地にポートが設置されることが多くなってしまう。それでは『家』『駅』『スーパー』など生活にかかせない拠点を結ぶ足とはなりにくい。そもそもどこに設置しているのかもよくわからない。その点、コンビニは生活に密着しているうえ、駅前や住宅地にもあり、ここにポートがあればシェア自転車の使い勝手が各段によくなる。シェア自転車を人々に認知させ、使ってもらうには最適な場所である」

 また、セブンがサービスを埼玉県や神奈川県に広げることも評価する。「都心部であれば地下鉄もあるし、駅から行きたい場所はだいたい徒歩圏内だ。実際、自転車が多く利用されているのは郊外である。民間企業が自分のリスクで狙いを定めた場所にポートを設置していくことはとても“筋が良い”計画で、期待ができる」。

 日本式のシェア自転車は放置自転車の減少にもつながる可能性を秘めている。丸川教授は「セブンのみならず、他のコンビニでも貸し借りできるようになれば理想的だ」と話す。

 (プレジデント編集部 鈴木 聖也)