春闘スタート 「3%の賃上げ」どこまで進む 官製5年目、働き方改革も論点

 

 「官製」5年目、働き方改革も論点

 主要企業の労使が意見を交わす経団連主催の「労使フォーラム」が22日、東京都内で開催され、2018年春闘が事実上スタートした。安倍晋三首相が賃上げを呼びかける「官製春闘」は今年で5年連続。今年はデフレの完全脱却を狙いに3%の賃上げを経済界に要請しており、実際に各企業でどれだけの賃上げが実現するかが焦点となる。経団連の榊原定征会長は冒頭のあいさつで「賃上げのモメンタム(勢い)をデフレ完全脱却につなげるため、積極経営のギアをあげていくことが望まれる」と強調。連合の神津里季生会長は講演で「大手が先行して賃上げを引っ張る従来の考えではなく、中小企業が大手を上回るような底上げが必要だ」と説明した。労使フォーラムは23日まで。同日午前にはフォーラムとは別に経団連会長、連合会長のトップ会談も行われる。

 今年の春闘で注目されるのは、デフレからの完全脱却に向け、個人消費拡大につながる賃上げを、過去4年の官製春闘よりも高めることができるかだ。

 2013年以前は、大企業の従業員の基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)と働いた年数に応じて基本給が増える定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率は1.8~1.9%。定昇が1.8%前後とされ、ベアはほぼゼロだった。

 官製春闘が始まった14年以降は賃上げ率が2.2~2.5%程度まで上昇しているものの、安倍晋三首相が要請する3%賃上げの実現には、さらに踏み込むことが必要だ。連合も今春闘でベアを2%程度、定昇を合わせて4%程度の月例賃金の引き上げを求めている。

 経団連は3%要請を社会的な期待として意識し、各社に前向きに取り組むよう呼びかけるが、強制力はない。しかも、3%を超える賃上げは1994年の3.1%以降実現していない。このため、多くの経営者が非常に高いハードルとの認識を示しており、3%賃上げの実現に向けて、今後、労使で厳しい交渉に臨むことになる。

 また、昨年に引き続き、「働き方改革」も大きな論点だ。

 経団連は長時間労働是正の中で、残業時間が減り、その分が収入減になることを問題視する。残業減とはいえ従業員の総収入が減少すれば、デフレ脱却、消費拡大のため実施する賃上げの効果が薄れるからだ。

 残業が減っても生産性向上で収益を維持・拡大させ、その分を処遇改善に充てるべきだと指摘する。

 ボーナスや残業手当に代わる手当の新設で、年収を減らさないような措置が長時間労働是正に取り組む上で、不可欠としている。

 連合は同一労働同一賃金に向け、非正規労働者と正社員の賃金水準の格差是正に取り組む。非正規労働者が全労働者の4割を占めることを踏まえ、労使交渉の中心に非正規労働者の待遇改善を据える。非正規・正社員の賃金格差解消に取り組むことが、全体の底上げとなり、デフレ脱却につながるとしている。(平尾孝)

 経団連・榊原定征会長「積極経営のギアを上げて」

 企業を取り巻く経営環境が改善し賃上げのモメンタム(勢い)は続いているが、個人消費は力強さを欠き、景気回復を実感できていない。政府に社会保障制度改革に全力で取り組んでもらうと同時に、経済界もより踏み込んだ対応が必要だ。

 企業収益は過去最高を更新し、今後も多くの業種や企業で好業績が見込まれる中、賃上げに対する社会的な関心は非常に高まっている。経団連は従来より踏み込んで呼びかけている。

 デフレからの完全脱却と経済好循環の拡大・加速につなげていくためには、経営者自ら積極経営のギアをさらに上げていくことが望まれる。賃上げや総合的な処遇改善を実現することによって、わが国経済全体の好循環の歯車が力強く回っていく。

 連合・神津里季生会長「中小企業の底上げが必要」

 大手企業と中小企業の賃金格差が広がり、正社員と非正規労働者の格差も大きくなっている。このままの状態が続けば、大手企業で賃上げが実施されても、デフレ脱却にはつながらない。中小や非正規の賃金を引き上げる底上げこそが、デフレ脱却に最も必要なことだ。企業業績が好調な中、経営側が動き出す今年の春闘は、極めて重要な局面を迎えている。

 安倍首相の3%賃上げの要請は評価できるが、連合が4%の賃上げを要請している中で、3%上げればいいという風にとらえられることは困るし、賃上げできない中小企業が自分には関係ないと受け取ることは問題。大事なのは「波及」だ。中小企業も含めた賃上げの社会的広がりを考えなくてはならない。