転職面接で「具体的に話す人」の落とし穴 面接官との間に生じる“2つのズレ”

 
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 【藤田尚弓の最強の話し方】 気持ちがうまく伝わらない。悪気はないのに相手を不快にしてしまった。皆さんも、そんな経験はありませんか? この連載ではコミュニケーション研究家でアップウェブ代表取締役の藤田尚弓が、ビジネスシーンをより良く切り抜ける「最強の話し方」をご紹介していきます。

 第6回は、転職のときに気をつけたい話し方。春の新年度を控え、一年の中でも2月は転職活動が最も活発になるシーズンです。今でなくともいつか転職したいという人も多いでしょう。面接官に与える印象はちょっとした言い回しがカギを握り、ほんの少しの差が採用の成否を占う決定打となってしまいます。転職対策サイトでは教えてくれない、面接での「最強の話し方」を確認しておきましょう。

◆受け答えの準備だけでは不十分?! 選ぶ言葉と印象の関係

 面接官の質問にどう答えればいいのか。そのノウハウを紹介するサイトはたくさんあります。転職活動をする人は当然ながらそういったサイトを参考に対策をしていることでしょう。

 しかし、面接というのは、限られた情報から印象を形成し、その印象をもとに判断をする傾向が強くなる典型的なシチュエーション。質問への回答だけでなく、どの言葉を選ぶかが非常に重要なのです。

 例えば、休日に何をしているかと訊かれたとしましょう。寝ていることが多いという場合でも、謙遜して「ごろごろしています」と答えるのはNGです。この言い回しでは怠惰な印象が形成されてしまいます。

 選ぶ言葉を変えて「月曜に備えて身体を休めるようにしています」と答えた場合はどうでしょうか。同じことを伝えても印象が変わるのがおわかりいただけると思います。

 想定質問への答えを準備するときには、一歩進んでどんな言い回しを選ぶかということも考えましょう。同じような回答でも、受かる人と断られる人がいます。その違いの一つが、選んだ言葉による印象なのです。

◆実績を伝えるときの落とし穴

 転職の面接で多い質問に、前職での実績があります。これは具体的に数字などを使って伝えるのが基本です。

例)

×「徹底的にムダを省こうという精神でコスト削減を行い、成果を出し続けました」

○「細部にわかる削減目標を設定し、コスト削減の責任者を務めた5年間で、累計○○円のコストカットを行いました」

 しかし、具体的に伝えられる人が陥りやすい落とし穴もあるのをご存知でしょうか。

 一つめは、求めているものの違いに気づきにくいこと

 具体的に伝える必要性を理解している人は、数字で伝えやすい実績に構成が偏りがちです。そこが相手の求めているポイントであればよいのですが、わかりやすい数字の部分に引っ張られ、要望のズレに気づけないというのもよくあるケースです。

 二つめは、具体的な説明をすることで、新しい職場とのズレが伝わってしまうこと

 転職では即戦力になる人物が求められますが、同じ業界の同じ職種であっても、やり方や求められるものは違います。具体的に元の職場での実績を話すことができるほど、そのズレも伝わりやすくなります。

 このような落とし穴の対策としてお勧めなのが、抽象度をあげたひとことを付け加えるという方法です。

◆ズレを補正する「抽象度をあげたひとこと」

 ズレを補正してくれるひとことを紹介するまえに、まずは抽象度について事例でみていきましょう。

 軟式テニスをやっている人が「趣味は軟式テニスです」と言ったとします。この場合「自分とは合わなさそうだ」と感じる人が多そうです。

 そこで少しずつ抽象度をあげてみます。

 軟式テニス→テニス→スポーツ→身体を動かすこと

 抽象度があがると、その言葉に含まれる情報量も増えるので「自分と合いそうだ」と思う人も増えます。

 面接で具体的な実績を伝えた後は、自分の強みの抽象度をあげ、貢献できることを伝えてみましょう。

例)「テストエンジニアとして培ってきた、気づく力、予想外のことに対処できる力を活かして、御社の××プロジェクトに貢献したいと思っています」

 万が一、具体的な実績が求めているものとズレていた場合でも、このひとことを付け加えると印象の緩和ができます。

◆家族の同意は日を改めて勝ち取る

 転職における難関は、なにも面接だけではありません。家族の説得もハードルの一つです。環境が変わることへの抵抗から、解釈がゆがみやすい状態だということを認識しておきましょう。

 例えば、現在の仕事のデメリットや新しい仕事のメリットを話しても、家族にとっては「我慢が足りない」「楽観的に考え過ぎ」といった解釈になりやすいことをあらかじめ心に留めておくと、感情的なやりとりを予防できます。

 予防対策としてまずやってほしいのは家族が反対する理由をしっかり聞くこと。このとき焦って反対意見を潰そうとしないようにするのが大事なポイントです。

 「収入が減るっていうけど、生涯年収ベースでは転職したほうがいいんだよ」などと、その場で説得を始めてしまうと、かえって心理的反発は大きくなってしまいます。それどころか、心配する気持ちや意見を聞いてもらえないという印象になってしまった場合、人間関係にヒビが入る可能性もあります。

 まずは話をじっくり聞き、家族の意見をしっかり聞いていると感じてもらえるようにしましょう。その後、日を改めて「安心してもらえるように○○について考えてみたんだけど」と切り出したほうが同意を勝ち取りやすいのです。

 相手目線で印象に配慮した言葉を選ぶ。これが転職というシチュエーションでの最強の話し方なのです。

藤田尚弓(ふじた なおみ)

コミュニケーション研究家
早稲田大学オープンカレッジ講師 株式会社アップウェブ代表取締役
企業のマニュアルやトレーニングプログラムの開発、テレビでの解説、コラム執筆など、コミュニケーション研究をベースにし幅広く活動。著書は「NOと言えないあなたの気くばり交渉術」(ダイヤモンド社)他多数。

【藤田尚弓の最強の話し方】はコミュニケーション研究家の藤田尚弓さんがビジネスシーンで活用できる会話術を紹介する連載コラムです。更新は月初木曜日。

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