「全部売っても赤字。だから行政がやっている」 ジビエ、食文化定着への道半ば

 
静岡県伊豆市の処理施設「イズシカ問屋」(同市提供)

 増加したイノシシやシカによる農作物の食害対策として注目される野生鳥獣肉(ジビエ)料理。精肉の市販に必要な専用の食肉処理施設の稼働率が低かったり、赤字続きだったりするケースが各地で相次いでいる。猟師が持ち込む鳥獣の質が安定しないことなどが理由。食文化として定着するまでの道は険しい。

 「害獣を活用できればと思ったが、こんなはずではなかった」。富山県高岡市で処理施設を運営する食肉販売会社「にくまる」の米山晴隆社長は、ため息をついた。

 平成27年に静岡県の補助金100万円を利用するなどし、計約500万円で施設を開いたが、処理実績は2年余りでイノシシ8頭のみ。狩猟期に入った昨年11月15日以降も閑散としたままだった。

 開設当初こそ猟師の注目を集めたものの、持ち込まれるのは、サイズが小さく、銃弾で可食部が大きく傷ついたものが目立った。買い取りを断ることが増え実績は伸び悩んだ。最適な大型の雌は猟師が自家消費するケースも多いとみられる。

 苦戦は民間だけでない。伊豆市が約5800万円をかけ、23年に開設した処理施設「イズシカ問屋」。28年度は計約千頭のイノシシとシカを処理し、精肉約1800万円を売り上げたが約1千万円の赤字だった。

 市は「全部売っても赤字。だから行政がやっている」と話す。農作物の食害を防ぐには捕獲意欲の維持が不可欠。猟師からの買値は下げにくく、売値を上げれば、消費拡大に水を差す。開設後数年で民営化する目標は達成できないままだ。

 厚生労働省によると、ジビエ処理施設は29年5月現在で全国に630カ所あり、1年間で78カ所増えた。ただ多くは処理数が年50頭以下だ。日本ジビエ振興協会(長野県)の藤木徳彦理事長は「大半の施設で採算が取れていない」と分析する。

 藤木理事長は、腹部を撃たないことなどを「消費者との間にいる施設が猟師に指導するべきだ」と指摘。ジビエ定着には「大手外食産業も巻き込んだ流通拡大が必要」と話している。