【Luxeな日本~地元発】マンション地下の酒蔵は工夫が一杯 五十嵐裕美

 
五十嵐裕美

 広島市の中心部、中区白島九軒町にある10階建てマンションの地下で日本酒を造っていると聞き、足を運んだ。薄暗い階段を降りていくと、漂ってくる日本酒の香り。あった! 創業210年を超える老舗、原本店・蓬莱鶴の酒蔵だ。

 もともとここには原本店の広大な酒蔵があった。先代社長が亡くなったとき、もう大きな酒蔵は維持が難しいと解体が決まった。だが、当時別の醸造会社に勤めていた現社長の原純さんが、小さくても自分の造りたい酒を造りたい、と跡地の建物地下に酒蔵を作ったのだ。

 1995年に始まった原社長の酒造り。酒は光を嫌うため、地下は好都合だが、米を蒸す際に出る大量の蒸気をどう逃がすか、空気の流れを綿密に考えた。狭いスペースを有効に使うため蒸し機やしぼり機などは移動できるようにした。

 そして5年目に「蓬莱鶴 奏(ハーモニー)」が生まれた。すっきりしているのに、フルーティーな香りが広がる。1~1カ月半で出来上がるので、3つのタンクで交互に仕込み、常に新酒を提供できる。昨年は27回造ったという。

 原社長のアイデアと情熱が詰まった地下の酒蔵は見学可。一度訪ねてはいかが?

 【luxe(リュクス)】 フランス語で元の意味は「贅沢」。最近は優雅で上品でありながら、洗練された贅沢なもの・ことなどの意味で使われる。

<プロフィル>

 いがらし・ひろみ フリーアナウンサー。元NHK名古屋・鳥取。音楽とお話を織り交ぜた舞台の演出、脚本も手掛ける。

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