「どこどこで何を食べた」はダメ 銀座ママが忘れられない“しゃべり上手な男たち”

提供:PRESIDENT Online
※画像はイメージです(Getty Images)

 夜ごと、功成り名を遂げた男たちの憩いの場となる高級クラブ。50年以上彼らと接し続ける、銀座老舗クラブのママを直撃した--。

 一日の行動を日記のようにしゃべる人はダメ

 私は東京・銀座の「クラブ順子」のママとして50年間、政治家、経営者、スポーツ選手、作家など各界で成功している人をこの目で見てきました。小泉純一郎さん、小沢一郎さん、五木ひろしさん、なかにし礼さん、故平尾昌晃さん、故星野仙一さん……安倍晋三首相はここで誕生会もしてくれました。

 江本孟紀さん(元参議院議員、元プロ野球投手)が今秋の叙勲で旭日中綬章を受章されたとき、お祝いのお電話をしました。江本さんはここに来られてもお酒は飲まないし、タバコも吸いません。コーヒーを飲みながら、他のお客様から政治のことを聞かれても、嫌がらずにこやかに説明してくれますし、私たちの愚痴も聞いてくれます。背が高いうえに笑顔が素敵なんですね。

 男性を見極めるには、やっぱり第一印象ですね。これはものすごく重要です。おしゃれかどうか、姿勢、目線、笑顔。それからどんな靴下をはいているか。どんなバッグを持っているか。お店にパッと入ってこられたときに見せる笑顔でその人の人柄がわかります。笑い方にもいろいろありますが、ムスッとした中にも笑いがある人、ニッとした笑いを見せる人。その笑いの雰囲気で、その人の品格ややる気満々かどうかもわかります。

 森喜朗元首相は「良いしゃべり」

 ユーモアがあってジョークがわかる人は大好きです。森喜朗(元首相)先生は、世間ではいろいろ言われますが、言葉のキャッチボールがとても上手。明るくて楽しい「良いしゃべり」だから、周囲はいつも笑いが絶えません。

 あるとき、体格がいい森先生に、店のある女の子が、冗談ではなく「プロレスラーの方ですか?」と聞いてしまいました。普通なら怒ってもおかしくありませんが、森先生はカラオケのマイクを片手に「そうだよ。こないだも勝ったんだよ」と軽く返されました。

 ジョークっていうか、返しがうまい方。楽しいから人が寄ってくるし、それが人をまとめる力のもとになっているのだと思います。

 「?」に全部回答してくれる人はいい

 私たちは来られたお客様が静かに飲みたいのか、たくさんしゃべりたいのかをまず見極めなければいけませんが、しゃべりには、森先生のような「良いしゃべり」もあれば、「悪いしゃべり」もあります。「悪いしゃべり」の典型は他人の悪口。「誰々は誰々とつきあってる」とか、「あいつ変な服を着てる」とか、本当に嫌です。

 こちらが聞いてもいないのに、「今日、どこどこで何を食べた」とか、自分の一日の行動を日記のようにべらべら話す人がいますが、自分に中身がないことを饒舌でごまかしているのです。自分にコンプレックスがあるから、それを隠すためにしゃべり続ける。自分がどうやって生きていったらいいかわからない、自信のなさの表れです。

 別にしゃべることじたいが悪いわけではありません。自分の仕事の話を一生懸命してくれる方には、むしろ魅力を感じますね。聞いている私たちも何かしら学ぶことができますから。

 話し上手の方がいる一方、聞き上手の方もおられます。妙にはしゃがず、静かにしていて、何となく「声をかけてあげなきゃいけないかな?」という雰囲気がある、私たちの悩みを聞いてくれそうな人、ですね。

 お客様がそういう方かどうかは、何となくわかるんです。「どんな歌がお好きですか?」「どんな女性がお好きですか?」といった「?」に全部回答してくれますから、そこからどんどん会話が膨らんでいって、どんどん入り込む。話を聞いてくれるから、こちらも「私はこうなんですよ」と自分のことを話したり、それを上手に繰り返したりしてその場が盛り上がるんです。

 脳裏に焼きついた、渡辺淳一の言葉

 もてる男性は、自信がある顔をされていますね。自信過剰は否定的に取られることが多いですが、私は過剰でもいいし、ホラ吹きは大物になると思っています。ホラを吹いて、それに向かって邁進する。根拠のない自信を持っている男性の方が成功していますね。

 多くの方々がトランプ米大統領に対して嫌悪感を抱きますが、私はいい大統領だと思います。おしゃれで、スピーチで言いたいことを言うあの雰囲気は大好き。発言は全部計算していらっしゃると思います。時々ああいう人が出てくることで、世界が活気づくのでしょう。幼い頃、何度も防空壕に避難した私は、戦争はもちろんNGですが。

 自分が歩む人生を計算できる人、目標を立てることができる人には成功している人が多い。男性はプライドが高いほうがいいですが、中身がそこに付いていかない人はすぐにわかります。

 そうやって成功している人は、寡黙であることが多いですね。もちろん中身がないとダメですが、もの知りで寡黙な人は本当に魅力があります。

 もう亡くなりましたが、作家の渡辺淳一さんは寡黙でおとなしい。でもぽつりとしゃべる言葉が耳に入ってきます。「順子ちゃん一番きれいだよ」と言われると、饒舌な人に言われるよりも嬉しい。「順子ちゃんは鈍感だね。鈍感も才能のうち」と言われたことが、今でも脳裏に焼き付いています。時々ふわりとそういう“本当のこと”をおっしゃるんですね。どんなに成功している男性でも、苦しいことがあったからこそ成功している。敏感だったらストレスがたまって精神的に参ってしまいます。私も鈍感だからここまでやってこれたのです。

 渡辺さんは、私が気付かぬうちに店の女の子を口説いて、ご自分の秘書にしてしまいましたが、あれだけ羽を伸ばしても奥様がしっかりと支えていました。奥様の支えがあり、しっかりと周りに囲まれて、それに幸せを感じる人はいい顔をしています。最初にお話しした江本さんもそうですが、やはりそういう男性はもてますね。

 順子ママの教え

 ▼悪いおしゃべり

 ・他人の悪口を言う

 「あいつ○○とつきあってる」「変な服装」etc

 ・聞かれてもいないのに「自分」を語る

 「昨日○○食った」「俺って○○だからさ」etc

 ▼良いおしゃべり

 ・楽しい言葉のキャッチボール

 ・ユーモアがある

 ・寡黙だが、時折ふわりと「本当」を言う

 「○○ちゃんて、△△だね」「普通が一番だよ」etc

 (田村 順子 構成=大野和基 撮影=初沢亜利)