コインランドリー多彩に ペット用施設やカフェも
コインランドリーの店舗が多彩になっている。かつては学生ら1人暮らしの利用者が多いイメージもあったが、最近はペット用の施設やカフェを併設した店が各地に登場。業界の推計によると、家事の時短目的の需要が高まっていることなどを背景に店舗数は増加傾向。おしゃれな雰囲気で、ファミリー層の利用が増えている。
◆遠方からも来店
東京都渋谷区の住宅街にあるコインランドリー「クリーンプラザルーシー代々木上原店」。大型の洗濯機が並ぶ店内の一角に、ペットを洗って乾かす設備が整っている。
車で30分かけて来たという東京都内の50代の主婦は、洗濯が終わるのを待つ間に愛犬のトイプードルの体を洗った。「毛布を洗うのを待っている間に、犬の世話もできてとても便利」と気に入った様子だった。
店内は明るい色彩で統一し清潔な印象に。自分の前にどういう人が使ったのか気になるという人にも配慮し、洗濯前に中を洗う機能が付いている。
◆抵抗感なく利用
近くに住む30代の主婦は小さな子供を連れて来店。「昔のコインランドリーと違って明るい感じで抵抗感なく入れる。家では冬になるとタオルなどが乾きにくいが、ここなら強力な乾燥機があって気持ちがいい」と話していた。
店の担当者は「洗濯以外のサービスを提供しようとペット用の施設を付けた。週末は首都圏各地からペット連れのお客さんが来店する」と言う。
◆本格派コーヒー
宇都宮市に平成29年にオープンした「ランドリーコーヒー」はカフェを店内に併設している。メニューは各種コーヒーのほかケーキもそろえる本格派だ。運営するのは市内でプロパンガス事業を営む大章液化ガスで、コーヒー専門店と協力して開店した。
大章液化ガスの大塚孝典社長は「共働きの夫婦が増え、洗濯物をまとめて洗うことからコインランドリーの需要が増えている。若い世代に売り込むためにおしゃれなカフェを思い付いた」と説明。洗濯に来た客の半分は待ち時間にカフェを利用しているという。
業務用洗濯機の大手「アクア」(東京)の担当者は「新タイプの店舗開設について問い合わせは増えている。今後は訪日外国人旅行客のコインランドリー利用も見込まれる」と期待する。
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■スマホで空き状況など確認
スマートフォンで多彩な機能を操れる洗濯乾燥機を備えたコインランドリーが昨年11月、千葉市美浜区にオープンした。運営会社「ウォッシュプラス」(千葉県浦安市)の高梨健太郎社長(44)は「付加価値で集客につなげたい」と意気込む。
会員登録したスマホを使い、空き状況の確認や終了の通知を受信、支払いもできる。「終了後3分以内に洗濯物を取り出すとポイント2倍」といった特典も用意。美容室などの業務使用を想定し、領収書もメールで発行する。年間の利用額に応じて、洗濯機の窓を曇りガラス状に切り替えたり、洗い・すすぎ・乾燥の時間を細かく設定したりする機能も利用できる。
厚生労働省の統計によると、全国のコインランドリーは平成25年度で1万6693軒。それまでの15年ほどの間に1.5倍に増えた。新規参入や出店拡大が相次ぎ、「ファミリーマート」は32年までに、コンビニに併設して500店を展開する予定だ。
神戸国際大の中村智彦教授(地域経済論)は「出店続きで最近は飽和状態になりつつある。事業者は質の高いサービスや異業種との提携など、価格競争による消耗戦に陥らないための工夫が求められる」と話す。
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