職員の採用難、あえぐ自治体 説明会やポスター工夫、あの手この手で囲い込み
自治体が職員の採用難にあえいでいる。若年人口の先細りで、民間との人材争奪はさらに過熱が予想される。必要な人員を配置できなければ行政サービスに支障が出かねず、各自治体は試験の見直しや、保護者への説明強化に取り組んでいる。
63%が辞退
滋賀県が2016年度に行った採用試験のうち、道路などインフラを担当する土木職は、22人の採用予定に対して受験者は38人。結果が一定水準に届かず、合格者は16人にとどまった。追加募集で乗り切ったが、県担当者は「東京五輪や東日本大震災の復興もあり、技術職は引く手あまた。少ないパイを官民で奪い合っている」と説明する。
自治体間の競争も激烈だ。北海道では、主に大卒を対象とする16年度1次募集の行政職試験で367人が合格。ところが63%が採用を辞退し、札幌市や国の出先機関、民間などを選んだ。
試験日程が他自治体と重ならないよう13年度から1カ月前倒しした結果、併願が増え、合格者が別に流れる傾向があるという。総務省幹部は「最近は自治体の中でも転勤の少ない市町村の人気が高い」と指摘。道は2次募集で人員を確保したが「優れた若い人たちに仲間になってもらう努力をしなければならない」(高橋はるみ知事)と危機感を募らす。
就職活動は今、学生が優位に立つ空前の「売り手市場」。好景気と、少子高齢化による人手不足が背景にある。厚生労働省などの調査によると、今春卒業予定の大学生の就職内定率は17年12月1日時点で86.0%。この時期としては、調査が始まった1996年以降で最高を更新した。
人手が足りないのは地方公務員も同じだ。行政改革で職員を減らしてきたが、子育て支援や観光、治安・防災分野の需要が拡大。17年4月時点の全国の自治体職員は23年ぶりに増えた。
保護者向け説明会
自治体は、あの手この手で学生を囲い込もうと躍起になっている。
目立つのは、法律や数学などの知識を問う専門試験や教養試験の廃止だ。宮崎県都城市は17年度から、国語や一般常識といった基礎能力を測る適性検査に切り替えた。「公務員試験対策は不要」とうたい、担当者は「民間志望の学生も受験できるようにし、多様な人材を確保したい」と語る。
派手な採用ポスターで注目を集めようとする自治体も。長野県中野市は、お笑いタレントのブルゾンちえみさんに扮(ふん)した女性職員が「新しい市役所で、働きたくない?」と呼び掛ける。市庶務課は「『ポスターを見て役所のお堅いイメージが変わり、志望の気持ちが強まった』という受験者もいた」と明かす。
兵庫県加古川市は、片膝をついてプロポーズしているような姿勢をした男性らの写真の横に「君が欲しい!」とのキャッチフレーズを書き添えてアピールする。
就職活動を控えた学生の保護者に狙いを定める動きもある。徳島県は17年度、保護者に仕事や職員の体験談を紹介する説明会を初めて開催。担当者は「親のアドバイスを就職に生かす学生は多い。県外からのUターンも含め、受験者を掘り起こしたい」と話している。
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