日本女性初「レゴブロック職人」奮闘 考える力、楽しみながら伸ばす

 
ワークショップに参加した子供たちと作品のサルを飾るなかやまさん(中央)=大阪市中央区(須谷友郁撮影)

 最初の発売から半世紀以上がたつ今も、世界中で愛されているレゴブロック。子供向けのイメージが強いが、巨大建造物を精巧にかたどったものや、プログラミングによって指示通りに動くものなど、驚くほど完成度の高い作品もある。レゴ職人「マスター・モデル・ビルダー」のなかやまかんなさん(28)は、日本人女性で初めて「ビルダー」になるほどの実力で、レゴが持つ大きな可能性を体現している。(尾垣未久)

丸みまで表現

 「今日は箕面にたくさんいるサルを作ろうね。今作っているのはサルのどの部分かわかるかな?」

 なかやまさんが、ワークショップに参加する子供たちに質問を投げかける。「背中? 正解! じゃあ、この直角の背中を少し丸くしてみよう」

 四角いレゴによって、サルの丸みのある背中と立体的な顔が作られ、細長い手が取り付けられていく。「動かすこともできるから、好きなポーズにしてあげてね」。仕上げに目のパーツをつければ、わずか10分強でかわいらしいサルができあがった。

大人のレゴナイト

 大丸心斎橋店(大阪市中央区)で4月15日まで開催中の「PIECE OF PEACE 『レゴブロック』で作った世界遺産展」では、モン・サン・ミシェルやサグラダ・ファミリアなどの世界遺産を模した大作に加え、なかやまさんが制作した、大阪のランドマークである太陽の塔などの作品を見ることができる。展覧会初日と翌日には、レゴで動物を作る子供向けワークショップも行われた。

 なかやまさんが勤務するレゴランド・ディスカバリー・センター大阪では、参加者と一緒にレゴを組み立てるイベントを多数行っている。通常は15歳以下の子供同伴での入場に限られるが、月に1度「大人のレゴ教室」や、大人のみの貸し切りで午後9時まで営業する「大人のレゴナイト」も開催されている。

不器用でもできる

 なかやまさんがマスター・モデル・ビルダーコンテストで優勝を果たしたのは平成27年2月。小さい頃からレゴが大好きで、幼稚園の卒業文集には「レゴ社に入りたい」と書いた。レゴをきっかけに興味を持ったロボットやプログラミングを学ぼうと、大阪大学の基礎工学部から基礎工学研究科の博士課程へ進学。

 「オフィシャルにレゴにかかわる仕事に就くため、まずメーカーなどで知識を積むことも考えて進路を選びました。仕事にするのが無理なら、趣味としてレゴを続けられる時間を確保できることが就職先を探す基準でした」と話すように、レゴにかける熱意は大きく、優勝は必然だった。

 「レゴの魅力は、不器用でも設計図さえあれば好きな物を作ることができること。そして同じパーツでも組み方次第でいろいろな物が作れること。自由なところが好きですね」

 現在は、夏に予定されている世界遺産展に向け、屋久島の縄文杉の模型を構想中。レゴ教室の課題のデザインも手がけ、大人向けにはインテリアライトなど実用的な課題を設けており、「子供たちの作品を飾ることで完成する展示を作りたい」という。上達の秘訣(ひけつ)を聞くと、「楽しむこと」ときっぱり。「楽しんでいれば、覚えることも考えることも苦じゃないですから」。子供だけでなく、大人にもレゴを楽しんでほしいといい、「大人だっておもちゃで遊んでいいんですよ」と笑顔を見せる。

 「レゴは考える力がつくし、上手な作品を観察してまねすることは、ほかのどんなことにも役立ちます。『うまくできないからダメ』ではなく、クリエーティビティを大切に、楽しく続けてほしい」