【IT風土記】香川発 企業・市民の活用がカギ 高松市「スマートシティ」テーマにシンポジウム開催
高松市はIoT(モノのインターネット)共通プラットホーム「FIWARE(ファイウェア)」を活用した「スマートシティたかまつ」の推進に取り組んでいる。ファイウェアはEU(欧州連合)が開発し、欧州を中心に世界の都市が採用するプラットホームだ。2月24日、高松市内で開催されたシンポジウム「スマートシティたかまつシンポジウム2018-データ利活用で未来のまちづくり-」から高松市が目指すスマートシティの姿に迫った。
EUが開発したデータ利活用の共通プラットホーム
今回のシンポは、高松市が取り組むスマートシティの取り組みを市民に周知することを目的に開催された。シンポの冒頭、高松市の大西秀人市長は「データ利活用型スマートシティは、官民のデータを共通プラットホーム上で適正かつ効果的に利活用することで、社会インフラを効率的に運営し、本市のいろいろな地域の課題解決につなげていこうとするものです」とあいさつし、スマートシティの実現に向けた取り組みが本格化していることを市民にアピールした。
スマートシティは一般的に中規模以上の都市で、ICT(情報通信技術)やIoTなどを活用して高機能な社会インフラを効率的に活用することで、快適な市民生活を実現する取り組みだ。高松市では、情報を収集するデータ連携プラットホームにEUで開発された「ファイウェア」を日本で初めて採用した。
「ファイウェア」とはどんなものなのか。ファイウェアの普及を目指す非営利団体「ファイウェア・ファウンデーション」の望月康則理事(NEC執行役員)は、こう説明する。
「これまで交通や防災、金融などそれぞれの分野で独自のプラットホームでデータを活用していたが、分野を横断してデータを利用することが難しかった。ファイウェアはシステム間のデータをオープンに利用できる。分野を横断したデータの利活用が容易になり、今までできなかった新しいサービスを生み出す可能性も出てくる」
例えば、独自のプラットホームでデータを活用している企業のデータを自治体が利用する場合、自治体が活用するプラットホームで活用できるようデータを入力し直す必要があるが、企業と自治体が共通プラットホーム上でデータを活用していれば、そうした作業を省くことができる。コスト削減の効果も期待できるという。
スタートは観光・防災分野から
高松市では、2月27日から観光と防災分野でファイウェアによるデータ利活用の活用を本格的にスタートさせた。シンポで、高松市の広瀬一朗総務局次長は高松市の取り組みを説明。観光分野では、GPSを通じて移動経路を記録する「GPSロガー」を同意を得た観光客に人気のレンタサイクルに設置。訪日外国人観光客に利用してもらい、外国人観光客がどんな場所に移動し、どんなところを観光しているのかの情報を国籍などの属性別に収集する。
また、防災分野では、大雨や高潮などの災害に備え、水路や護岸に水位センサーや潮位センサーを設置。その情報を市役所でモニタリングし、災害情報をいち早く市民に知らせる仕組みを構築し、早期の災害対策に活用するという。
広瀬総務局次長は「観光と防災は市の喫緊の課題。防災面では過去に高潮の被害を受けている。また、観光でも一昨年のデータで高松・さぬきエリアが全国で人気上昇エリアの1位になった。市が抱える課題の中で、見えやすいところから対応することにした」と語り、今後、介護や福祉など幅広い市政における利活用をする考えを明らかにした。
データ利活用のカギを握るのは
一方、「30年後の高松のために今われわれができること、今すべきこと」をテーマにしたパネルディスカッションでは、高松市が取り組むスマートシティを実現する上での課題や期待が浮き彫りになった。
パネルディスカッションでは、香川大学工学部の八重樫理人(りひと)准教授をコーディネーターに大西市長、高松大学・高松短期大学の佃昌道学長、四国電力系情報通信会社、STNetの田口泰士取締役らがパネリストとして参加。大西市長は「これまで産学民官の連携はそれぞれの持ち寄りで『足し算』的なものでしかなかったが、30年後、人口が減少する中で、活力を維持するには共通の目的を持って、連携を密にする『掛け算』的な形で何かを生み出していく必要がある」と指摘。産学民官の連携の強化やファイウェアを活用するデータ利活用人材の育成、新たな価値やビジネスを生み出そうとする活力の必要性を訴える声が上がった。
市が共通プラットホームを用意しても、市民や地元企業、教育機関などが活用しなければ無用の長物になってしまう。高松市では、市民や企業がファイウェアを活用しようとする環境を整備するため、新たな取り組みにも着手した。
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