睡眠の大切さを教える「眠育」って何? 規則的な睡眠で不登校予防、家庭内暴力も収まる

 
良い眠りの3要素

 夜に十分に睡眠を取れないことが、子供の不登校など心身の発達に影響しているとして、医師や研究者、学校関係者らによる「日本眠育推進協議会」が昨年12月、設立された。大阪や兵庫などに先進的な地域がみられる「眠育」。全国に約13万4千人(平成28年度)いるとされる不登校の小中学生だが、「眠育」の先進地域では、実際に不登校が減るなどの成果が現れている。(加納裕子)

 変わる子供

 堺市の三原台中学校区では平成27年度から、子供たちに睡眠の大切さを教える「眠育」が始まった。生徒指導に長く携わる木田哲生教諭(34)は「不登校の子には、学校に行きたいのに行けない子が少なくない。気持ちの問題として心に寄り添うだけでなく、生活リズムを整える『体の支援』を組み合わせる必要があると考えました」と振り返る。

 校区の小中学生全員に睡眠の大切さを説明するリーフレットを配り、年に3回、授業を実施。いつ寝ているのか「睡眠表」を付けさせ、睡眠の質や量を検討し、問題の多い子供には、親も交えた面談も行った。

 ある中学3年の女子生徒は10日出席しては10日休むことを繰り返していた。親が夜も働いており、夕食は午後11時、寝るのは日付が変わった後だったという。親も交えた面談の後、夕食を7時に食べて11時には寝られるようになり、その後は1日も休まず登校した。

 また、中学2年の男子生徒は連日午前2時ごろまで塾の宿題に取り組み、朝、親が起こすと暴れるように。面談後、塾をやめて夜十分に寝るようになり、家庭内暴力は消えたという。

 「小学生の時はできても、中学校に上がると部活や塾で睡眠時間がさらに減り、やがて体が動かなくなる。頑張る子ほどそうなる」と木田さん。3年間で不登校率は約37%減り、29年度からは、堺市全体で眠育に取り組んでいる。

 保育園から

 子供の睡眠の大切さを長年、訴え続けてきたのが、兵庫県立子どもの睡眠と発達医療センター参与で熊本大学名誉教授の小児科医、三池輝久さん(75)だ。福井県や青森県、兵庫県などでも睡眠教育に協力してきた。

 26年に文部科学省が発表した実態調査によると、不登校のきっかけの上位は(1)友人との関係(2)生活リズムの乱れ(3)勉強が分からない-となっている。だが、三池医師によると、睡眠障害で脳機能がダメージを受け、対人関係や勉強に支障が出ることも多く、多くのケースに睡眠が関係している可能性がある。

 またこうした睡眠の乱れは、就学後に始まるわけではないという。全国の保育園で眠育を推進する「アートチャイルドケア」が保育園児約7千人を調査した結果、午後7時から午前7時の間に9~11時間寝ておらず、入眠時間や起床時間にばらつきがあるなど睡眠障害が疑われる子供は、落ち着きがない、集中力がない、暴力的-といった発達障害のような特徴が多くみられた。

 三池医師は「睡眠障害は治療によって治すことができる。放置しないことが大切だ」と訴えている。