避難後の「災害関連死」防止へ 各地の避難所に広がり、体の負担減らす段ボールベッド
西日本豪雨による避難後のストレスや体調悪化で死亡する「災害関連死」を防ごうと、被災地の避難所で段ボールベッドの活用が広がっている。段ボールベッドは感染症などを軽減する効果が期待され、実際に使った被災者からは「雑魚寝より体の負担が減った」と好評だ。だが、避難所生活が長期化すれば関連死のリスクが高まる。専門家は「段ボールベッドを含め、避難環境の改善を進める必要がある」と訴える。(小松大騎)
「体を起こす動作が雑魚寝と比べて格段に楽になった」。広島市安芸区の矢野南小学校の体育館で避難生活を続ける女性(80)は、笑顔でこう話した。
約70人が身を寄せる体育館には10日に段ボールベッドの材料約60台分が届き、避難者が協力し合って組み立てた。避難している高齢者の多くは足腰や体調に不安を抱えているといい、女性は「猛暑日が続き、疲弊している高齢者が多い。少しでも体の負担が少なくなるよう、段ボールベッドが他の避難所にも広がってほしい」と話す。
「雑魚寝は適切な睡眠環境とはいえず、体力の低下につながる。段ボールベッドが避難所の環境改善の第一歩になれば」。こう話すのは、全国段ボール工業組合連合会(東京)で「防災アドバイザー」を務める水谷嘉浩さん(47)だ。
床の上に大勢の避難者が寝る「雑魚寝」は体が冷えたり、足音や振動が伝わりやすい。人の出入りで床のほこりが舞い上がりやすく、肺炎など感染症のリスクも高くなる。水谷さんによると、段ボールベッドで寝た場合は頭が床から30センチ程度高くなるため、ほこりを吸い込む量が減る。起き上がる動作も楽になり、体を動かさずにいると発症しやすいエコノミークラス症候群の予防にもつながるという。
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平成26年の広島市の土砂災害や、28年の熊本地震でも、避難所に導入。災害時に段ボールベッドの提供を受ける防災協定を段ボールメーカーなどと結ぶ自治体は増えており、7月時点で全国283の市区町村と29の都道府県が締結している。西日本豪雨では協定に基づき少なくとも広島市に約150台、岡山県倉敷市に約2700台、愛媛県に約千台が運ばれた。
一方、避難所に身を寄せたが亡くなった人も出始めている。広島県などによると東広島市で8日、避難所にいた80代の女性が夕食後に意識を失って死亡。12日には愛媛県西予(せいよ)市三瓶町の避難所に避難していた1人が亡くなった。いずれも、生活環境の変化が死因となった可能性があるという。
水谷さんは「避難者は雑魚寝をよしとせず、行政に支援を求めるべきだ。避難生活の質を上げなければ関連死は防げない」と話した。
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