バカンスの季節こそ要注意?! 「プライベートな話」で大失敗しないために

 
※写真はイメージです(Getty Images)

 【藤田尚弓の最強の話し方】 気持ちがうまく伝わらない。悪気はないのに相手を不快にしてしまった。皆さんも、そんな経験はありませんか? この連載ではコミュニケーション研究家でアップウェブ代表取締役の藤田尚弓が、ビジネスシーンでの「最強の話し方」をご紹介していきます。

 第12回は、「プライベートな話」がテーマ。この季節は夏休みに関する質問なども増え、プライベートについて話すことが多くなる時期です。

 皆さんは仕事関係の人とプライベートな話をどのようにしているでしょうか。プライベートな話をするときの「最強の話し方」を考えてみましょう。

◆プライベートな話をすると好感を持たれる?

 仕事関係の相手がプライベート話題をふってきたとき、皆さんはどんな気持ちになるでしょうか。自分もプライベートを話そうと思う人は多いでしょうし、相手と親しくなれたように感じる人も多いのではないでしょうか。

 パーソナルな会話は人間関係の促進に効果的です。その一方で、やたらと自分の話をする人に違和感を抱く、ストレートな質問に面食らうなど、ネガティブに作用してしまうケースもあります。

 自分の話をするというのは本来、親しくなるために有効ですが、なんでもOKというわけではありません。プライベートな会話を上手にできる人と空回りしてしまう人ではどんな点が違うのでしょうか。

◆3つのポイントに注意して

 成否を握るポイントは、「タイミング」「量」「内容」です。それぞれについて詳しくみていきましょう。

(1)タイミング

 ・残念な人…知り合ったばかりのタイミングでプライベートな話をするので「誰にでもオープンな性格の人なのだろう」と思われやすい。せっかくパーソナルな話題に触れても「自分だから話してくれた」と思ってはもらえない。

 ・好印象な人…何度か雑談を交わすようになったタイミングで自分のプライベートな話を織り交ぜていく。「プライベートな話をするのは信頼感や親近感が芽生えたからだ」と感じてもらいやすく、好印象につながりやすい。相手もプライベートな話を返したくなる。

(2)量

 ・残念な人…プライベートな話が多すぎたり、少なすぎたりと量が適切でない。自分の話が多すぎると好感度が下がるという研究もある。相手がプライベートな話をしているのに、自分のプライベートはほとんど話さないというのもNG。

 ・好印象な人…自分に関する情報をオープンにしていくが、自分ばかりが話すようなことはしない。話し過ぎた場合には「○○さんなので、つい話し過ぎました」などとフォローする。相手がプライベートな話をしたくれた場合には、自分も同程度のプライベートな話を返すようにする。

(3)内容

 ・残念な人…話題を選ぶというより、自分が話したいことを話す。金銭、身体、パーソナリティーといった相手がコメントしにくい話を選んでしまうこともある。ストレートな質問をして相手を戸惑わせることも。

 ・好印象な人…家族構成、出身地、趣味といった事実からスタートし、関係性が進むにつれて感情や価値観などの話題も増やしていく。嘘はつかないが、関係性などを考慮して開示する内容はコントロールする。

 残念な人と好印象な人の違いがわかったところで、どんな話題に気をつければいいのか具体例を見ておきましょう。

◆こんなプライベート話は嫌われる? 不適切な事例3選

(1)自慢話

 自分では自慢しているつもりはなくとも、相手にしてみれば自慢と感じられることもあります。子供自慢などは「家族思いの人」といったプラスな印象に繋がることもあるのですが、「○○に行った」「××を買った」といった話題には注意してください。

 相手がプライベートな話題をしてきたときには自分も同じような話を返すのが基本ですが、「○○に行った」「××を買った」という話の場合は例外です。「実は私も」と返してしまうとマウンティングのように感じられてしまうことがあります。

(2)ストレート過ぎる質問

 話の聞き方の基本として、相槌をうつ、質問をまぜるというのがあります。しかしプライベートに関する質問には配慮が必要です。

 ストレート過ぎる質問は相手を戸惑わせるので少しぼかして使うのが正解。例えば「どこに行ったんですか」という質問は「どのあたりに行かれたのですか」とぼかしましょう。答えにくい場合には、ざっくりとした返事ができるような余地を残すのがポイントです。

(3)自己宣伝

 「優秀だと思われたい」「社会的に好ましい人間であるよう見られたい」といった欲求は多かれ少なかれ誰にでもある感情です。自分でも意識していない「良く見せたい」という気持ちは、話す内容に影響を与えます。そういった意図は思っているよりも相手に伝わりやすいものです。

 特定の印象を他者に植え付けようとするような話は、成功した場合にはメリットがあるのですが、見透かされた場合には失うものが多いものです。気づかずにやってしまいがちなので、プライベートな話をするときには特に意識するとよいでしょう。

◆コミュニケーションが豊かなほうが長生きする?

 これだけ注意点があると、もういっそのこと「プライベートな話などせずにビジネスライクにしたほうがいい」と思う人もいるでしょうか。けれども、筆者は人生をより豊かにするために、プライベートな話も積極的にしたほうがよいと考えます。

 アーガイルとヘンダーソンという心理学の研究者は、対人コミュニケーションが豊かな人のほうが、そうでない人に比べ死亡率が低いと報告しています。

 皆さんの周りを見ても、対人コミュニケーションが豊かな人のほうが、人間関係においても、幸福度においても充実している人が多いのではないでしょうか。死亡率というのは少々オーバーかも知れませんが、心の健康は身体の健康に少なからぬ影響を与えます。

 プライベートな話は人間関係を促進するだけでなく、自分の感情を浄化したり、話をするうちに思考が明確になるといった効果もあります。

 夏休みの話題になりやすいこの時期はプライベートな会話に「挑戦」するチャンス。物怖じせずに楽しんでください。

藤田尚弓(ふじた なおみ)

コミュニケーション研究家
早稲田大学オープンカレッジ講師 株式会社アップウェブ代表取締役
企業のマニュアルやトレーニングプログラムの開発、テレビでの解説、コラム執筆など、コミュニケーション研究をベースにし幅広く活動。著書は「NOと言えないあなたの気くばり交渉術」(ダイヤモンド社)他多数。

【藤田尚弓の最強の話し方】はコミュニケーション研究家の藤田尚弓さんがビジネスシーンで活用できる会話術を紹介する連載コラムです。更新は月初木曜日。

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