【高論卓説】気になる若者の内向き志向 海外留学で異文化学ぶ機会必要
日本人の海外留学者数は、2004年の8万2945人をピークに、10年には5万8806人と激減した。背景には、若者の内向き志向と長期化した景気低迷がある。そこで、官民一体で「トビタテ!留学Japan」事業を進め、留学の形態や世帯年収に応じて、費用を補助してきた。
夏季2週間の語学研修プログラムでも、異文化体験や実践活動などが含まれていれば適用になる場合もある。その効果もあるのか、16年度は9万6412人(日本学生支援機構調査)と留学者数は増加傾向にある。
海外留学者を増やす狙いは、日本がグローバル人材を育成しなくてはならない状況にあるからだ。それは国際社会のあらゆる分野で、日本が優位性を保てるかどうかにかかる。自国の利益や立場を主張できる人材がいなければ、国際社会での存在感は低下する。
今の子供たちの内向き志向の改善のためには、半強制的にでも海外へ出す環境をつくらなければならない。私は先月、米ボストンにある昭和女子大学ボストン校を訪ねた。昭和女子大では、国際学部英語コミュニケーション学科と国際学科、グローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科の学生は、半年から1年のボストンでの留学が義務付けられている。
さらに米国内外の協定大学での留学を希望することもできる。その他の学科も希望すれば、短期・長期の留学が可能だ。昨今、半年から1年の海外留学を義務付けている大学は増えているが、昭和ボストンに通う学生は、必ずしも受験する段階で、この制度を知っていた人ばかりではなく、入学が決まってから「有り難い制度と感じた」という。
「ここ(昭和ボストン)に来る学生は、初めて海外へ行く人も、初めて共同生活(寮は2人、もしくは4人部屋)をする人も、初めて親元を離れる人も少なくありません。英語の上達はもちろんですが、人間としての成長ができることが、ここでの目的の一つでもあります」(フランク・シュワルツ昭和ボストン学長)。
学長の期待通り、学生たちは初めての異国での共同生活で、問題に直面しても、それぞれが自分で納得し、乗り越えてきた様子が垣間見られた。一見、何事にも受け身のように見えるが、困難な状況があれば、主体的に取り組む素質は持っている。
ただ、留学期間延長や協定校での研修を希望するか聞いてみると、「これ以上、(経済的に)親に負担をかけられない」「就職活動のことを考えると、資格もいろいろ取らないといけないし、これ以上はいられない」という。これが今の学生が置かれている現実でもある。
「トビタテ!留学Japan」を利用した高校生は、2週間未満が51.2%であるのに対し、6~12カ月はわずか8%。大学生でも1カ月未満が60.1%で、12カ月以上となると2%しかいない。
「海外を見る」という意義にグローバル人材の育成をつなげるには、継続的に歴史や宗教も含めた異文化を学ぶ機会が必要だ。また、それは大学以前に小学校や中学校の段階から、年齢に合わせた経験の場が必要である。
中国教育部によると、17年に中国から海外へ行った留学生は60万8400人。当然、世界一の留学者数である。そのうち博士課程・博士号取得者が22万7400人いるという。日本の今の子供たちは将来、このような中国人とともに国際社会に存在することになる。グローバル人材の育成は、単に英語の習得にとどまらず、国際人として生き抜くための実践的な教育を発達段階に合わせ、継続して行っていかなければならない。
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【プロフィル】細川珠生
ほそかわ・たまお ジャーナリスト。元東京都品川区教育委員会教育委員長。テレビ・ラジオ・雑誌でも活躍。千葉工業大理事。1児の母。父親は政治評論家の故細川隆一郎氏。
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