ノンアルビールや避妊具も! ベビー用品詰め合わせセット、驚きの最新事情
赤ちゃん育ては“戦争”だ。そして祭だ。そしてそれをサポートするベビーグッズは巷に数々あふれている。が、新生児のお世話に明け暮れて疲れ切っている新米のパパやママに常にあれこれ試している余裕があるかというと、実はそれはかなり怪しい。時間的にも気分的にも、そしてしばしば金銭的にもだ。
◆オランダで出産した筆者も体験
その結果、あわただしく買い物かごに入れるのは一度試してみたとか、産院で使っていたなどの、より「安全」な選択肢になりがち。つまりメーカーにとって、とにかく新米パパ・ママに自社の製品を一度試してもらうことは、かなり大きなカギになるだろう。
そこで、筆者が二人出産したオランダでは、各ドラッグストアやスーパーがメーカーと提携して(もしくは自社ブランドで)、ぎっしり詰まったベビー用品詰め合わせセットを妊娠中の女性に配布している。
出産予定日と簡単な個人情報を記入した紙を渡せば誰でももらえるのだが、その中身がいかにも合理的で商売上手なオランダらしくなんでもありで、子育てに対する価値観の違いのようなものが透けて見えて面白い。
さっそく最新の各セットの中身を見てみよう。
オランダ最大のベビーグッズ専門チェーン店「プレナタール」が提供するのは、ノンアルコールビール2缶、新生児用おむつ1パック、おしゃぶり、哺乳瓶、おしりクリーム、歯ブラシ、妊婦日記帳、育児雑誌、生理用ナプキンサンプル、その他ベビーフードや赤ちゃん歓迎のホテルの割引券など。
余談だが、「中身はいつもらっても『サプライズ』になるように頻繁に変えているのだけれど、本当は内緒よ」と、今回は特別に写真を撮らせてもらった。
◆祝い客用のお菓子や栄養ドリンクも
産院で初回の妊婦健診を受けると自動的に加入している健康保険の会社から贈られるものもある。自宅出産の準備や産後処理、新生児のケアに必要な衛生用品一式(ベッドの上に敷くシート、へその緒を止めるクリップ、体温計や除菌グッズなど)、大人用スキンケア用品のミニサイズ詰め合わせだ。
こちらは商品のPRというよりも、医療費を抑えられる自宅出産を推奨する意味合いが大きい。実際オランダの自宅出産率は30%程度と高い水準を保っている。
その他大手スーパーマーケットなどからも配布されるが、その内容はベビー用おもちゃ、ベビー服、敏感肌用の洗濯洗剤や柔軟剤、幼児向けの健康的なスナックなど盛りだくさん。
しばらく両親が手をかけられなくなるであろう上の子ども用のワークブック、お祝いに訪問するお客さんにお出しするためのコーヒーやお茶菓子もあれば、なんと、夜の授乳を分担して寝不足になるパパ向けのレッドブル(エナジードリンク)、しばらくは次の妊娠を避けるであろう夫婦のためのコンドームまで入っていたりする。
市の図書館もちゃっかり本と引き換えられる券を忍ばせていたりもする。
◆親自身の幸福も重視する価値観
そこここに親の楽しみのためのグッズが入っているあたりに、個人主義で親自身の幸福も重視される価値観が透けて見える。特に、どうしても自分のことが後回しになりがちなママのためのいたわりグッズは心にしみる。
あれもこれも大変な育児の中で「赤ちゃん特需」が期待できる家庭に、効果的にアピールしたいと各社がしのぎを削った結果である。ただ、その「戦場」の中で、しかもホルモンの関係もあり感覚が敏感になっている女性にとって、「おめでとう」の言葉とともに渡されるこのギフトのインパクトは相当なものである。
そのインパクトと、新生児期の我が子の思い出とともに試した製品の印象は、自動的に格段にアップする。無機質に小さな試供品を配布するのとは全く次元の違うPR効果である。
◆フィンランドは80年の歴史を誇る
ちなみに、世界でもっとも有名なセットは、1938年の開始から今年で80年の歴史を誇るフィンランドのもの。衣類や衛生用品、ケア用品がぎっしり入っている。
しかし、これは政府からの新生児全員を対象とした支給となり、ビジネスというより社会的・医療的な意義が大きい。妊娠中の女性を地域の医療システムが把握することや、新生児期のケアの質の向上につながり、配布開始後から赤ちゃんの死亡率が格段に低下したという。
イギリスでは、2013年に第1子を出産した王室のキャサリン妃にフィンランド政府から贈られてBBCで紹介されたのを機に、いくつかの病院が配布を始め、現在アメリカやヨーロッパ諸国でも検討する自治体が増えている。
また、フィンランドでは3人の父親が始めた会社が世界に向けて販売しており、日本からも購入が可能。
フランスでは無料のセットはなく、ベビーグッズのブランドが様々なタイプのセットを販売している。(ステレンフェルト幸子/5時から作家塾(R))
《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。
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