【視点】サマータイム導入、支持の目線で考えた 「働き方改革」として考えてはどうか

 
2020年の東京五輪・パラリンピックに向け建設中の新国立競技場。サマータイムは“切り札”となるのか=7月18日、東京都新宿区(桐原正道撮影)

 今年の夏はとにかく暑かった。気象庁によると、6~8月の平均気温は東日本(関東甲信、北陸、東海)で平年より1.7度高く、1946年の統計開始以降、最も高かった。西日本(近畿、中四国、九州)はプラス1.1度で史上2位だった。(産経新聞論説委員・鹿間孝一)

 大阪では最高気温が35度を超える猛暑日が7月に14日(平年2.9日)、8月には13日(同7.9日)。最低気温が25度以上の熱帯夜は7月に24日(同12.9日)、8月には26日(同19.8日)もあった。

 この暑さはもはや東南アジア並みである。大阪は相変わらずインバウンド(訪日外国人客)でにぎわっているが、インドネシアから来ていた家族連れは自分の国より暑いと言っていた。

 埼玉県熊谷市で観測史上最高気温を更新する41.1度を記録するなど、40度越えはもう珍しくない。気象庁は「命が危険」な暑さと表現したが、来年以降も猛暑は避けられないとみられ、何か対策が必要だ。

 日照時間が長い夏季に時計の針を進める「サマータイム」が浮上している。7月末から8月にかけて開催される2020年の東京五輪・パラリンピックの猛暑対策として、組織委員会の森喜朗会長が要請し、安倍晋三首相も自民党に検討を指示した。エアコンのフル稼働などで電力需給が逼迫する真夏の、省エネ効果も期待できる。

 仮に2時間のサマータイムを導入すれば、午前7時にスタートするマラソンは現状の午前5時からになり、幾分かは選手への負担が軽減するだろう。

 だが、サマータイムはどうも評判が良くない。マラソンなどはメリットがあるが、繰り上がりで猛暑の中で行う競技が増えるというのだ。

 国民生活への影響も大きい。とくにIT業界は、コンピューターシステムの変更が難しく、わずか2年足らずで準備はできないと猛反対している。始業時間を早めると、まだ明るいうちに「アフター5」になって余暇時間が増えるが、実際には残業が増えて労働時間が長くなると懸念する声が少なくない。

 また、サマータイムへの切り替え時期に睡眠時間が減少するなど、健康への悪影響を指摘する専門家もいる。

 サマータイムは欧米など約70カ国で実施されているが、EU(欧州連合)諸国では見直しの動きがある。日本でも戦後の占領期にエネルギー消費の抑制を狙って導入したが、国民の理解が得られず、わずか3年で廃止された。

 少数意見になりそうだが、あえてサマータイム導入を支持したい。

 2004年のアテネ五輪を現地で取材した。やはり猛暑が懸念されたが、それほど暑さは感じなかった。それよりギリシャの人々の夏の過ごし方が印象に残った。

 日中に街に出ると、五輪の観光客以外はあまり見かけなかった。地元の人たちは2~3時間かけてゆったりと昼食をとり、家族や友人たちとおしゃべりを楽しんでいる。それからシエスタ(午睡)の時間。家に帰って昼寝をし、涼しくなってから仕事に戻る。一体いつ働くのか不思議だが、それがライフスタイルなのだろう。

 ギリシャは度々、経済危機が伝えられるなどはEUの問題児だが、それはさておく。日本人からみると、毎日の生活を楽しむことを第一にしているギリシャの人たちがうらやましく思えた。

 サマータイムも働き方改革の一環として考えたらどうだろう。早朝のまだ涼しいうちに出勤して仕事を始める。その代わり、たっぷり3時間程度の昼休みにする。ランチとシエスタ、あるいは映画を見るくらいの時間にはなる。終業時間は現状と同じだが、一番暑い時間帯に無理して働くことはない。

 20~30分の昼寝はリフレッシュになり、頭をスッキリさせて仕事の効率化につながるという研究もある。シエスタの習慣が定着すれば、新しい余暇産業が生まれるかもしれない。五輪をきっかけに日本人の意識やライフスタイルが変わるなら、それこそがレガシー(遺産)ではないか。