【道標】経団連「就活ルール廃止」意向 中小に厳しい環境…「目安」は維持か
経団連の中西宏明会長が就活ルール廃止の意向を明らかにした。新卒採用のスケジュールは事前に相応の調整をした上で決定事項として発表されることが多い。今回は「個人的な考え」を定例記者会見で表明、大学や文部科学省にとって「寝耳に水」であることも極めて異例だ。影響が大きいため「意向」として示し、関係各所の反応を見る狙いもあったのだろう。
中西氏の言い分にも理はある。ルールを設けて、ほぼ同じタイミングで一括採用するのは、グローバルスタンダードからみれば奇異に映る。国際派で知られる中西氏にとって、採用の自由化は長年の持論を述べたにすぎない。
とはいえ、新卒採用をするのはグローバル企業ばかりではない。就職する学生の割合からすれば、少数派だ。通年採用(厳密には通年選考)になれば、中堅・中小企業にとっては厳しい採用環境となる。時期を変えて何度も学生がトライできるため、人気の高い企業群の採用枠が完全に埋まらないうちは、通年で辞退される可能性があるからだ。
グローバル企業にとって、日本のローカルルールが足かせになるのは確かだが、それが全体として最適になるわけではない。学生にも同様のことがいえる。自らの就活時期を勝手に決められることに違和感を覚える学生がいる一方で、多くの学生は「いつでもどうぞ!」と言われたら途方に暮れてしまう。社会的成熟度が高く、将来計画が明確な一部の学生に適したスタイルであっても、全体の最適にはなり得ない。
より多くの企業と学生にとって、一定の時期に集中して採用・就職の活動をすることは合理性の高い行為といえる。それゆえ1997年に就職協定が廃止されたときも、倫理憲章という形で「目安」は継続された。今回、経団連がルールを廃止しても、それに代わる機関(文科省や大学など)によって、何らかの目安は維持されるのではないか。完全に自由に動ける企業や学生は多くない。
長期的に見れば、採用の多様化が進み、自由度は上がり、与えられた時間を有効に使える人とそうでない人との格差は広がるだろう。
大学2年生以下に向けたアドバイスとして、自分の仕事を含めた人生設計全般について「自分の頭で考える」ことを挙げておきたい。考えても分からないという学生が多いのは分かっている。でもそれは当然だ。外から取り入れるインプットがなければ、成果・実績としてのアウトプットはない。
「好き」でも「嫌い」でもいい。自分の価値観を羅針盤にして、アルバイトやボランティアなど、キャンパスの外の世界と接してほしい。
受け身で得られる情報だけでは、納得できる就職は難しくなる。外の世界のインプットが、すぐに就職に役立つわけでもない。しかし、その経験は自らの人生、仕事に対する考えを確実に成熟させる。学業のモチベーションにもなるだろう。
一見回り道のようだが、社会に出る上での確かな一歩となるはずだ。学生という限られた時間の中で、自らの人生を考える必要性が高まっている。
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【プロフィル】平野恵子
ひらの・けいこ 文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所主任研究員。1968年静岡県生まれ。北星学園大、札幌学院大でキャリア教育も担当する。
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