仕事+休暇=「ワーケーション」 旅先・避暑地で仕事、急ぎもOK

 

 旅先で仕事をする「ワーケーション」の取り組みが広がっている。仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を合わせた造語で、旅行中にテレビ会議に参加したり、避暑地で仕事をしたりするなど形はさまざま。急な仕事が入っても旅行を取りやめずに済んだり、家族と過ごす時間が増えたりするメリットがあり、誘致に力を入れる自治体も出ている。

 ◆スマホとパソコン

 家族や友人と旅行を計画していたが、直前になって休暇中に大事な会議が入ってしまった-。こんな事態に対応できるよう、日本航空は昨年、ワーケーション制度を設けた。

 旅先や帰省先などでパソコンやスマートフォンを使って働くことを認めており、テレビ会議システムを使えば遠方にいても会議に参加できる。長期休暇の計画が練りやすくなり、また、休暇の時期が近づいてきても、仕事の入り具合を以前ほどには気にしなくて済む。長期休暇が取りやすくなったことで、仕事への活力アップが期待できるという。

 同社の東原祥匡(ひがしはら・よしまさ)さん(35)は今年、シンガポールに旅行中、この制度を使った。担当するイベントが旅行直後に実施されることになったため、カフェで半日、資料作りの業務をした。「急な仕事が入っても大丈夫だと思えるようになり、長めの休暇を計画しやすくなった」と話す。

 ◆通勤時間はゼロ

 避暑地で1カ月働く人もいる。IT関連企業に勤める伊野亘輝(いの・のりてる)さん(44)は毎年8月、家族とともに東京を離れ、地方で働く。子供と一緒の時間を増やすのが狙いだ。

 今年は山梨県北杜市で過ごした。借りた家や図書館が職場で、通勤時間がほぼゼロ。朝8時ごろから働き、午前中に社内のオンライン会議で情報を共有する。夕方早めに仕事を終え、その後は子供と虫捕りや花火をした。会社がこうした働き方を認め、同僚も地方で過ごす。

 避暑地での仕事は4年目。1カ月間借りられる物件を探し、通信環境を整える。伊野さんは「涼しくて快適。子供も自然の中で遊べて喜んでいた」と話すが、1人で働くと「エラーを見落とすことがあり、気を抜けない」という。

 こうした働き方に注目し、ワーケーション利用者を受け入れる側として積極的に取り組む自治体も出てきた。和歌山県は7月に同県白浜町で首都圏在住者向けの体験会を開き、環境の良さなどをアピールしている。

 ただ、「休暇中はしっかり休むべきで、働くのはおかしい」という意見も根強い。自宅などで働くテレワークも、仕事とプライベートの区別をつけるのが難しい場面があり、制度の利用者は試行錯誤を続けている。

 和歌山県の天野宏(あまの・ひろし)情報政策課長は「ワーケーション体験者からはメリハリをつけて働くと仕事の効率が上がるという報告がある。長期休暇が取りにくい人に、一つの選択肢として考えてもらえれば」と説明。日本航空も「ワーケーションは、どうしても外せない仕事が入った時のためのセーフティーネット(安全網)」と話している。