「N高」作った角川ドワンゴ学園がN中等部を設立 創造性や自主性伸ばせるカリキュラム提供
ネットを使った通信制高校「N高等学校(N高)」を運営する角川ドワンゴ学園(沖縄県うるま市)は、中学生を対象にした「N中等部」を2019年4月に開校する。一種のフリースクールで、既存の中学校に在籍しながら通学できていない生徒に来てもらい、創造力を身につけるための実践型授業を行う。eスポーツのアジア競技大会金メダリストや囲碁の女流タイトルホルダー、プログラミング大会の成績優秀者を輩出し、進学でも成果を出しているN高の教育ノウハウも活かし、将来イノベーションを起こせるような若い人材を育成し、送り出していく。
「もう少し早く」、学園理事の心情
「もう少し早く、中学から引き受けていたら素晴らしい成果を出せたのでは」。9月13日に東京・六本木のニコファーレで開かれたN中等部の設立発表会で、角川ドワンゴ学園理事で、カドカワ(東京都中央区)社長の川上量生氏は、中等部設立の背景にこうした心情があったことを明らかにした。
2016年4月に開校したN高では、ネットで通信教育を行いつつ、プログラミングの専門教育や、難関校進学に向けた通学制の教育などを実施。卒業年次をいち早く迎えた転入生から、東工大をはじめとした国公立大学や、早大、慶大といった難関私立大学への進学者を輩出している。在校生では、先だってインドネシアで開かれた第18回アジア競技大会で行われたサッカーゲーム「ウイニングイレブン2018」の競技で日本代表として戦い、金メダルを獲得した相原翼選手がN高の3年生。9月13日の発表会にゲストとして登場し、「自分の好きな時間で授業を受けることができて、ストレスがないのが良いと思う」と、N高の良さをアピールしていた。
囲碁の女流棋聖戦で今年、5連覇中だった謝依旻女流本因坊を破ってタイトルを獲得した上野愛咲美女流棋聖もN高生。コンピューターのプログラミングでも、国内外で活躍する生徒が出て来ている。こうした在校生の活躍や、子供を通わせている親の高い評価から、運営側ではN高の存在意義を確信。その上で、中学生向けにも同じようなカリキュラムで学べる場があれば良いといった学生や親の意見もあって、中等部の設立が決まった。
違和感を持つ生徒のために
N中等部は学校教育法第一条に定められた中学校ではなく、生徒は既存の中学に在籍しながら、スクールに通って学ぶことになる。角川ドワンゴ学園によれば、中学生の中には学校が合わないといった違和感を持っている生徒が20万人近くいるとのこと。生徒は中学に所属しつつ通学はしないまま、家で学習を続けるか、フリースクールのような場で学びつつ中学卒業までの時間を過ごすしかない。角川ドワンゴ学園では、こうした生徒のためにN高のような“ネットの中学校”を作りたかったが、現行の制度では通信制の中学校は認められていないため、通学制での開校となった。
N中等部の特徴は5つ。創造力が身につく実践型授業、自主的に考え行動するコーチング、自分のペースで先取り学習もできる個別学習、創造力を育む多様な学び、ITを活用した学び。このうち創造力が身につく実践型授業では、ライフスキル学習やプロジェクト学習を行って、自分で道筋や解決方法を考えられるようにする。主体的に考え行動するためのコーチングでは、「ジブンを知る」「夢や目標の発見」「実現に向けた行動」のステップで生徒たちを導く。
自分のペースで先取りもできる個別学習では、教育のために開発したオリジナルアプリで国語、数学、英語の授業を行い、個々の生徒が自分に合った速度で学習できるようサポートする。創造力を育む多様な学びでは、英会話、プログラミング、職業体験、楽曲制作、小説執筆、料理などN高でも提供して好評な課外学習を、中学生向けにも行い知識や経験を身につけてもらう。生徒にはITスキルの上達も兼ね、アップルのMac Bookを用意してもらい、グループウエアを活用してデータやメッセージの共有、やりとりなどを行わせる。
入学テストを週1回のペースで実施
N中等部のキャンパスは、当初は東京都内の新宿・代々木付近に置く予定。コースと学費は週5通学のWeekday Courseが1期6万4800円、週3通学の3days Courseが1期4万8600円、週1通学の1day Courseが1期3万2400円で、ほかに設備管理費として1期1万800円が必要。N中等部では12の期制をとり、学校休校日を除く年間の登校日を12分割したものを1期としている。
2019年4月の開校に向け、9月13日にWebサイトを開設し、資料請求と出願の受付をスタート。9月29日から個別相談を開始し、2019年1月から4月にかけて入学テストを月1回のペースで実施する。初年度は40人ほどの生徒数になる見込みだ。
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