「空振りでもいい、安全第一」 JR西、京阪、南海…広がる計画運休
関西国際空港などに大きな被害が出した台風21号の西日本上陸(9月4日)に際し、JR西日本をはじめ鉄道各社が行った大規模な「計画運休」。これが「帰宅難民」の発生を防ぐ策として注目されている。企業はまる1日、業務を停止するなど対応に追われたが、かえって働き方の多様化を考えさせる機会にもなった側面もあるという。賛否のあるなかでスタートした、鉄道の運休を前もって告知する計画運休は、ここにきておおむね好意的に受け止められたようだ。(織田淳嗣)
企業側は評価
「従業員の安全を考えれば、有効な対応、告知だった」
大和ハウス工業の幹部の1人は計画運休についてこう評価する。
JR西では3日、台風の上陸予想を受け、4日午前10時から順次、全線で運休すると発表。4日当日は台風の上陸が予想より遅かったため、正午過ぎから全線で運休。京阪電気鉄道、南海電気鉄道も初めて運用に踏み切った。
大和ハウス工業では3日、9月8日の土曜日を出勤日として、台風が上陸した4日を「振替休日」とする扱いを決定。記録によれば、本社を含めた大規模な休業は初めての措置となった。3日午前にJRの告知が出ると、すぐさま措置を決定し、全社に通達したのは午後1時。広報担当者は「交通機関の対外的な情報発信が早くなっている。会社としても早く対応ができるし、しなくてはならない」と明かす。
積水ハウスも3日午後3時前、従業員の4日の出社や早期帰宅の判断を、各職場の管理職が行うよう通達。大阪ガスでも3日昼、4日の勤務について各組織で「最低限の業務遂行に必要な要員」を確保し、「不要不急の場合は従業員を休ませるよう」通達が出された。いずれも「聞いたことのない措置」(広報担当者)だという。
必要に応じ従業員が出社せずに在宅勤務に切り替えた企業もあったが、一部企業では各個人に出勤の判断が任されるケースもあった。「自分で判断は難しいので、トップが決めてほしい」(大阪市内の40代女性会社員)との声もあった。
かつては苦情も
計画運休はJR西が平成26年10月13日に初めて、大規模に実施。全路線の運休を前日の12日に決定して、告知した。直前の同年8月に台風11号で鉄道網がまひしたことを受けたものだ。ただ、当時は他の私鉄は運行を続けており苦情もあった。
しかし27年7月の台風11号の発生時は、雨量が規制値に達するまで運行を続けた。結果、雨量が急激に増えたためJR京都線で電車が、約4時間にわたって立ち往生するトラブルを招いた。これらの教訓を踏まえ、JR西は計画運休の本格導入に舵を切った。
195万人に影響
今回の台風は9月4日に直撃し、翌日の5日も運休やダイヤ変更があり、JR西では近畿全域の影響人員は4日75万人、5日120万人に達した。
JR西の来島達夫社長は19日の定例会見で「台風によるものとはいえ、事業活動に影響を及ぼしたということは申し訳なく思う」と陳謝した上で、「大きな目で見れば、企業としての判断として安全を守れた。大型の台風という有事においては、一定程度必要な措置ではないか」と理解を求めた。
台風そのものが直撃せず、計画運休そのものが「空振り」となれば、27年の台風11号の当時同様に、他社が運行し苦情を受ける可能性もある。JR個社としても、業績に与える影響は少なくない。来島社長は「空振りになっても、『安全を守れたこと』を是としつつ、普通の状態に戻していく」と話す。有事の大規模運休、事前告知の定着に向けては、企業や官公庁側の理解と、経験の積み重ねが欠かせない。
関連記事