人手確保に悩む農家と働き手のニーズをマッチング 日本を縦断する「アルバイトリレー」も

 
60歳以上のアルバイトが多くを占める西吉野選果場=奈良県五條市

 農業従事者の高齢化と後継者不足が深刻化する中、各地のJAが協力し、繁忙期のずれを生かしてアルバイトを融通する新たな取り組みが注目されている。農家では収穫期の数カ月間、普段よりも多くの人手を必要とするが、短期雇用は若者に人気がなく、アルバイトの年齢構成が60~70代に偏っている地域も珍しくない。そこで通年雇用を望む若者らに繁忙期を迎えた地域をリレー方式で回ってもらおうという試みで、農家にとっても若い働き手を安定して確保できると好評だ。(桑島浩任)

高齢化に悩む柿の生産現場

 和歌山県に次ぎ、国内2位の柿生産地として知られる奈良県。甘柿の「富有(ふゆう)柿」の生産量は全国最多だ。県内の柿の生産の大部分を担う五條市周辺は、20~40代の若い生産者が比較的多く、後継者不足とは無縁。一時期、減少していた県全体の収穫量も平成29年度には3万2800トンと10年前を超える水準に回復し、一見すると奈良の柿はしばらく安泰のように思える。

 ところが、実際の状況は厳しいという。JA西吉野選果場(同市)の岡善英(よしひで)副委員長は「アルバイトを集めるのが大変で、このままではいずれまわらなくなる」と危機感を募らせる。

 同選果場では、シーズンの9~12月上旬にかけ、約1万6千トンの柿を出荷している。当然、農家だけでは人手が足りず、期間中は150人前後のアルバイトを雇用し、選別・箱詰め作業を行っている。

 だが、ここ数年は思うように人が集まらず、大阪の人材派遣会社に依頼するほか、やむなく年齢制限を撤廃して高齢者を積極的に雇い、急場をしのいでいるのが実情だ。

 若者が長期の雇用など安定を求める傾向にあるためで、柿の出荷シーズンには和歌山県と人材の奪い合いとなり、あちらの時給が上がったと聞けば、こちらもアップ。そうこうするうちに、時給960円という好待遇になった。それでも、アルバイトのほとんどは60歳以上だ。岡副委員長は「若者が求める通年雇用をしようにも、シーズン以外は仕事がないのでどうしようもない」と話す。

 JA西吉野選果場でアルバイトの声を聞いた。この道40年という女性(79)は「毎年、選果場が終わったら、別のアルバイトをしている。昔からそうだった」。一方、この日が初出勤という男性(25)は「時給が高いし、すぐに働けるのでここに決めたが、年に3カ月だけでは厳しい。正社員になりたいのが本音」と語った。

主流は通年雇用

 農業・酪農の求人専門サイト「あぐりナビ」を運営する株式会社アグリメディア人材紹介事業部の石塚貴史部長は「年間を通した雇用にシフトしなければ、人材確保はこの先どんどん難しくなる」と指摘する。

 同サイトは登録者約1万8千人のうち、20~30代が64%を占める。短期雇用で人気があるのは、群馬県嬬恋(つまごい)村のキャベツ農家や、長野県川上村のレタス農家など、日当1万円以上でボーナスも支給される好待遇求人のみ。掲載されている約1400件の求人のうち約9割が通年雇用の募集で、最近は通年雇用のために作物を増やしたり、無料で入居できる寮を用意したりする農家も増えている。

 それでも需要に供給が追いつかず、最近はさらに「将来の独立サポート」や「夫婦・カップルで働ける」など、独自の特典をアピールする求人も。石塚部長は「将来を見据え、人材を育てたい農家も増えている。ここ2、3年で時給換算で平均60~100円ほど賃金も上がっていて、待遇は今後も良くなっていくのでは」とみるが、若者を引き寄せられるかは未知数だ。

全国アルバイトリレー

 そんな中、好待遇で迎え入れる余裕のない小規模農家にとっても救いの手となる取り組みが始まっている。繁忙期が異なる地域が連携し、アルバイトをリレーで雇う方式だ。

 28年からはJAふらの(北海道)とJAにしうわ(愛媛県)、JAおきなわ(沖縄県)が協力し、4~10月は北海道でメロンやスイカ、11~12月は愛媛でミカン、12~3月は沖縄でサトウキビの収穫に携わってもらおうという試みだ。いわば渡り鳥のように収穫期の土地に移動して働く仕組みだ。

 また九州では今月から、福岡と佐賀、大分のJAなどが連携し、収穫期の農家に作業員を紹介する事業がスタート。学生や主婦ら約200人が登録し、県をまたいで汗を流しているという。

 アルバイトが通年で働ける上、農家も労働力を安定確保できる点でメリットは大きい。JAにしうわ農業振興部の大杉充(みちる)次長は「単純に人手不足を解消するだけでなく、経験を積んだ質の高いアルバイトが確保できている」と強調する。即戦力ゆえ農家の評判も上々で、全国から多くの農業関係者が視察に訪れるなど注目を集めている。

 ただJAにしうわなどでは、3地域のうち1地域や2地域での応募も可能で連携もゆるやかなため、昨年リレー形式で列島を縦断したのはまだ30人程度にとどまるという。大杉次長は「通年雇用でアルバイトを確保する仕組みをさらに検討したい」と話す。