和歌山・勝浦温泉に“看板娘” 旅館組合、美少女キャラと連携

 
南紀勝浦温泉旅館組合が設置した南紀勝浦樹紀の等身大パネルとポスター=那智勝浦町

 台風によるキャンセル被害などが9月以降相次いだ那智勝浦町の南紀勝浦温泉旅館組合が、東京の企画制作会社の手掛ける美少女キャラクターと連携し、若者を中心とした利用客獲得に乗り出している。キャラクターは「温泉むすめ」の「南紀勝浦樹紀(きき)」。すでに会員制交流サイト(SNS)のツイッターなどで反響を呼んでおり、組合関係者は“看板娘”の効果に期待を寄せる。(尾崎豪一)

 異色のコラボ

 「行きます!」「一緒に写真撮りたい」「可愛い!」…。10の旅館・ホテルが加盟する南紀勝浦温泉旅館組合の公式ツイッター。組合事務所に9月中旬、南紀勝浦樹紀の等身大パネルが登場したと告知すると、たちまち350を超える「いいね」や返信が集まった。

 南紀勝浦樹紀を含む温泉むすめは、東京の企画制作会社「エンバウンド」が地方都市の活性化を目指し、平成28年11月から温泉地を中心に展開するキャラクター。今年8月にはスマートフォン向けゲームの配信も始めた。

 南紀勝浦樹紀は29年11月に登場。熊野古道を歩くのが趣味で、マグロの解体が特技という設定。声優は人気アニメ「ガールズ&パンツァー」などで活躍する吉岡麻耶さんが務める。

 この仮想世界のキャラクターと、実在する旅館組合という異色のコラボレーションが実現した格好だ。

 「これはいいぞ」

 勝浦温泉は、マグロ料理や南海道随一の景勝地ともされる島嶼(とうしょ)群「紀の松島」から勝浦港にかけての海岸線などが楽しめる。

 ただ県内には白浜温泉など有名な温泉地も多く、湯川温泉と合わせても那智勝浦町の温泉宿泊客は減少傾向が続き、19年の100万人近くから、29年には59万人まで落ち込んだ。

 特に若者への認知度不足に悩む中、旅館組合のスタッフ、中平理咲さん(25)が昨年末、ツイッターで偶然、温泉むすめのキャラクターを発見。それまで「いいね」が1桁台だった旅館組合の公式ツイッターで投稿したところ、たちまち250を超える反応が寄せられた。

 自身も「アニメオタク」という中平さんは「これはいいぞ」と勝浦温泉PRへの活用を上司に提案。エンバウンド側にも使用を打診し、了承を得た。

 今年夏から組合加盟のホテル・旅館でポスターを貼るなどPR。組合の事務所にも吉岡さんのサイン入り等身大パネルを設置したところ、首都圏からも若者たちが訪れた。写真を撮ったり、サインを眺めたりして楽しみ、「吉岡さんのファンなんです」「ツイッター見てきました」と話していた。

 V字回復の切り札に

 旅行後には、ツイッターで那智勝浦の風景写真とともに「また来たいです」とつぶやく人もいるという。

 勝浦温泉では、9月の台風21号で関西国際空港の欠航が続いた影響などで、地元の大型施設「ホテル浦島」では外国人観光客が500人以上キャンセルするなど大打撃を受けた。台風24号でも鉄道運休によるキャンセルに見舞われるなど暗い話題が続く中、旅館組合は看板娘に熱い期待を寄せている。

 今後はグッズ展開も計画するなどV字回復に向けた“切り札”としていく考えだ。

 中平さんは「若い人に勝浦の魅力を知ってもらうきっかけになれば」と話している。