誰でもタダで写真展を開けるバー 出展料もらわずとも儲かる好循環

 
カクテルを注ぐ「THEBARN」店主のアビ・ゼーリンゲールさん。ビール、ウィスキー、カクテルなどチャージなしで楽しめる

 スマートフォンのカメラの性能は登場以来どんどん良くなり、今やエントリーモデルのデジタルカメラとほとんど変わらない画質での撮影が可能になった。

 またInstagramやFacebookなどSNSを使い撮影した写真を人に見せることも簡単にできる時代となった。

 しかし、写真を出力して額に入れて個展などを開いて誰かに鑑賞してもらう嬉しさは、SNSとは違った格別なものではないだろうか?

 今回は誰でも写真展をできるバーを紹介したい。写真撮影を趣味としている方からプロのカメラマンまで、店内のスペースで写真展に作品を出して楽しんでいる。3年ほど前からこの「バー写真展」は始まり、これまで31回、毎月写真展が開かれている。

 鑑賞する方もグラスを傾けそっと写真を見つめながらナイトライフを楽しめる。

きっかけはお客が撮影した1枚の写真

 そのバーは東京都三鷹市にある「THE BARN」。店主のアビ・ゼーリンゲールさん(53)は1987年イスラエルから来日して長年美術品を取り扱う仕事をした後、2008年にこのバーを開業した。

 店内で写真展をやろうと思ったきっかけはお客が撮影した1枚の写真だったという。

 カウンターにはグラス1つ分を丸く繰り抜いて下からライトを当てる場所がある。そこでウィスキーを注いだり、カクテルを作ったりすると飲み物がライトアップされて非常に綺麗なのだ。

 「3年半くらい前のある日、お客様が、私がカウンターの下からライトを当ててウィスキーを注いでいるところを撮影したのですが、その写真を私が非常に気に入ってしまいまして。そのお客様と『よし! うちの店で写真展をやろう!』と意気投合したのが始まりです」(アビさん)

 どうせやるならこだわりたいという気持ちからアビさんは、写真を照らすスポットライトを店に設置したり、写真を入れる額などを購入したりして、店内の壁の一部を写真展仕様に作り上げた。

 写真展に展示できる数はA4なら8枚、A3なら4枚だ。もちろん組み合わせも自由だ。

誰でも無料で展示ができる

 写真展をできるバーは実はそんなに珍しくはないのだが、大抵のお店では料金がかかる。「THE BARN」の特長は、無料で写真を展示できるところだ。また、基本的に審査などはなく、誰でも写真を展示できる。

 なぜ無料で展示できるようにしたのだろうか?

 「誰でも気軽に当店で写真展を楽しんでほしい。それに展示しているあいだは写真家ご本人はもちろんのこと、その方のご友人やご家族の方なども来店します。うちはギャラリーとか美術館ではなく、バーなので写真だけ見て帰る方はいらっしゃいません。かならず一杯頼みます。なので、展示は無料でも売上は伸びるんです(笑)」(アビさん)

 また上手い下手に関わらず、どんな写真でも展示できる。ただし、いろいろな方が来店するため、「明らかに不快感を与えてしまう可能性がある写真」は展示できない。例えば、暴力的な題材をテーマにした写真や、猥褻な写真だ。ただし、ヌード写真でも、「アートとして成り立つ」とアビさんが判断した場合は展示可能だ。

展示作業はお店側が行う

 写真の展示は写真家の方ではなくアビさんが行う。それはアビさんの楽しみでもあるのだ。

 「前職で出会った美術館の学芸員の方に面白い方がいたのです。美術品を並べて、その場で一瞬のインスピレーションでどこに何を展示しようか決めるのです。その展示の決め方が確実かつ素晴らしいもので、私もやってみたいと思っていたのです」

 写真をどう配置するかは展示前日にアビさんがインスピレーションで決めている。

 また3週間展示して1週間展示しないのもアビさんのこだわりからだ。1週間の空白を入れることで、お客さんが「何も展示されていな期間を楽しむことができる」という。

 「ひっきりなしに展示をすると、お客様が『展示されている状態』に慣れてしまい感動が起きづらくなります。展示されていない期間を作ることにより、より新鮮な目で次の作品が楽しめるようになるのです」(アビさん)

 写真を撮ることが好きな方は、是非一度この「バー写真展」で自分の作品を表現してみてもよいのではないか。(ジャイアント佐藤/5時から作家塾(R))

 《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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