社長になる人は何が違うのか? 今回の社長を目指す法則・方程式…「カラーバス効果」

 
社長になる人は何が違うのか?(Getty Images)

 【社長を目指す方程式】こんにちは、経営者JPの井上と申します。この連載では、いま課長や部長としてご活躍中のミドルシニア世代の皆さまが「ここから幹部として更に活躍していくには」「社長、経営幹部に至るキャリア展開の在り方は」などについてご紹介してまいります。

 私が日々、人材コンサルティングやエグゼクティブサーチ(幹部人材採用支援)で遭遇している実際のケースや企業各社の動き、社会の動静などを常時追いながら、その時々のリアルなお話をお伝えすると共に、毎回のトピックスに関連する法則・公式・原理なども合わせてご紹介してまいりますので、ぜひお役立てください。

 SankeiBiz読者の皆さんとご一緒に、これからの“オトナのキャリア”について考えてまいります。なにとぞよろしくお願いします。

◆課長、部長、役員、社長…「ものの見方の違い」はなぜ起こる?

 さて、「社長を目指す方程式」を探ろうという本連載。スタートに当たってまず考えてみたいのは、課長、部長、役員、社長は、「人として、いったい何が異なるのか?」というところ。

 そもそも、課長、部長、役員、社長と組織階層の階段を登る上で、職責・役割の重みが異なることは当然言うまでもないと思いますが、それに応じて人としておおもとのところで異なるものは何かと言えば、「ものの見方」ですね。

 読者の皆さんも、自分が課長として考えた企画について部長に根回し相談したところ、「そうだな、しかし、××の観点も加味してここは考えた方が良さそうだな」などと指摘されて(「あ、なるほど…」)などと思わされたご経験、おありではないでしょうか?

今回の社長を目指す法則・方程式

「カラーバス効果」

 あるいは社長や担当役員に事業戦略の相談をした際に、自分が考えていた前提や枠組みを取り払っての「市場がそうならば、こっちから攻めてみた方がよくないか?」などの示唆に、目から鱗が落ちた経験などあるのではないかと思います。

 もちろん課長や部長のあなたが部下に対して行ったアドバイスが、部下にしてみれば鋭い点をついていて、尊敬の眼差しを得たというようなご経験もあるでしょう(SankeiBiz読者の皆さんであれば必ずおありと信じます!)。

 いずれにしても、これらのこと…下の階層が見落としていたポイントを上の立場の人間が発見・指摘する…はなぜ、業種・業界や企業規模を越えて、そこここでよく起こるのでしょう?

◆ものの見方には「視点」「視野」「視座」がある

 こうしたことは一般的には、「だから上役は、なんだかんだ言ってもやっぱりエライんだよなぁ」というような“感覚”で捉えられていることが多いように見えます。経験の成せる技、年の功を感じさせる一方で、世の中には、部長なのに部長らしい判断ができない人、役員なのに役員としてのものの見方・考え方ができない(と部下たちから見える)人、も残念ながらいらっしゃいます(その出現率はあいにくと決して低いとは言い難いようです)。

 それは、なぜでしょう?

 ものの見方には、「視点」「視野」「視座」の3つがあります。

 「視点」とは、「どのようなところを見ているか」。目の行くポイントですね。

 「視野」とは、「どのくらいの範囲で見ているか」。スコープの広さ・狭さを指しています。

 そして「視座」とは、「どのくらいの目線(の高さ)で見ているか」。イメージとしては地上からどんどん上空、成層圏(離脱し宇宙空間まで?)へと上がっていく際に見える地上の風景、という感じでしょうか。

 課長、部長、役員、社長がそれぞれ「人として、何が異なるのか」は、この「視点」「視野」「視座」が異なるのです。

今回の社長を目指す法則・方程式

「カラーバス効果」

 課長は課の「視点」「視野」「視座」にロックインされ、部長は部の「視点」「視野」「視座」にロックインされ、役員は部門あるいは経営における自身が責任範囲とされているテーマの「視点」「視野」「視座」にロックインされる。当然、社長は自社の経営、全社の「視点」「視野」「視座」にロックインされます。

◆出世するミドルとして、今日から意識したい「視点」「視野」「視座」

 言われれば当たり前のことなのですが、案外日頃意識していないのが、この、皆さんそれぞれが会社や組織内で位置づけられたレイヤー(階層)の「視点」「視野」「視座」にロックインされているということ。

 組織の役割とはそれぞれが配置された「視点」「視野」「視座」で物事を捉え考え行動することですから、決してそれが間違ったこと、悪いことではありません。逆に課長が課長の見方、部長が部長の見方をしている(留まっている)ことは、組織や役割が機能している証拠だとも言えるでしょう。

 しかし、時にそれが仇となったり問題となったりする。それは、戦後高度経済成長期における「先人と同じやり方をやれば良い」「アメリカなどで成功した事例を日本に持ってきて同じようにやれば良い」というような「昭和の企業組織の論理」が破綻して久しいからです。

 平成もいよいよ来年4月で終わりますが、この三十年の〈平成の企業組織の論理〉とはなんだったかと言えば、「正解のないところに、自分で仮説をぶつけ、正解を見つけていかなければならない」時代だったということに尽きます。これはポスト平成にも継承されるテーマに違いありません。

今回の社長を目指す法則・方程式

「カラーバス効果」

 よって、極論すれば課長も部長も(もちろん役員も)「社長レベルの視点・視野・視座」でものを見て行動し、現場のマネジメント個々が社長の分身として自律的にトライ&エラー、PDCA…Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)…を回し、その中から次の成功を見つけて欲しい。これが世の多くの企業経営者がミドルやシニアに望んでいることです。

◆社長レベルの「カラーバス・スイッチ」を入れよ!

 「カラーバス効果」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?

 これは、例えば「赤いポストを探してください」と言われるとポストのみならず視界に入る「赤いもの」が目に飛び込んでくるというような心理学用語(「color(色)」を「bath(浴びる)」)です。

 人は同じ情報空間にいても、その人それぞれがどのような意識(興味関心やテーマ)を持っているかで、自分の目や耳に入ってくるものは全く異なります。

 人間の脳は、特定の事象を意識することで、その特定事象のみを積極的に認識するという性質を持っています。

 社長、特にオーナー社長などがいつも、自社にとっての面白いネタを拾ってくるのは、社長にはこの社長レベルの視点・視野・視座での「カラーバス・スイッチ」が常に入っているからです。

 立場や役割が、それに応じた「カラーバス・スイッチ」を入れるのは事実ですが、いくら部長だ、役員だ、あるいはサラリーマン型の場合だと社長だとすらいっても、その立場へのコミットがなければその人には適切なカラーバスは働きません。

 逆に課長であっても、一般社員であったとしても、事業レベル、経営レベルの課題意識やテーマを持っていればその人たちには社長レベルの視点・視野・視座での「カラーバス・スイッチ」が入ります。タレント的に活躍する若手リーダーたちや社長昇進レースに乗っていく人には等しく「社長レベルのカラーバス・スイッチ」が入っているのです。

 この連載でこれから、様々な角度から、課長や部長としてご活躍されている皆さんが、どうすれば「社長レベルのカラーバス・スイッチ」を入れることができるかについて、ご紹介していきますので、お楽しみにしてください。

【プロフィール】井上和幸(いのうえ・かずゆき)

株式会社経営者JP代表取締役社長・CEO
1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。
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【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。

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