【痛み学入門講座】血圧が高いと「頭痛」になる?

 

 古い川柳に「ぢれて出る 座敷もはれぬ 頭痛紙」とある。この頭痛紙とは、梅干しを紙に塗り、頭痛の治療薬として売っていたものである。このように、日本人と頭痛との付き合いは極めて長い。頭痛には片頭痛や緊張型頭痛をはじめとして、実にさまざまなものがあり、多くの人々を悩ませ続けてきた。

 さて、今回のテーマは「高血圧」と頭痛である。私の外来を訪れる患者さんで高血圧症の治療を併せて行っている場合、「血圧が高くなると頭が痛くなるんです」、逆に「今日は頭が痛いから血圧が上がってませんか?」と訴える人がいる。この血圧との関係が疑われる頭痛には、痛む部位は両側の後頭部▽朝方に多い▽起床後しばらくすると自然に軽快する-の共通点がある。だが、本当に血圧が高いと頭が痛くなるのだろうか。答えはNO(中等度までの高血圧であれば)である。

 以前は、高血圧が原因で頭痛が起こっているとの論文が発表されていたが、近年はその報告数が著しく減った。因果関係が立証されず、否定的な考え方が大勢を占めるようになっているのだ。現在、(中等度までの)高血圧の患者さんが訴える頭痛は、不安、さらには不安によって誘発される過換気(呼吸が早くなること)の結果として生じると考えられている。不安によるストレス症状=めまい、動悸(どうき)、しびれ感なども=のひとつなのである。逆に、激しい頭痛は交感神経系を興奮させて、血圧を上昇させることも事実だ。

 しかし、である、物事には例外がつきものである。中等度以上の高血圧では事情が異なる。『ハリソン内科学書』(15版)には「褐色細胞腫=副腎髄質(ふくじんずいしつ)などに生じる腫瘍、血圧を上昇させるカテコールアミンを過剰に分泌する。発作時の激しい頭痛が特徴=と、悪性高血圧=褐色細胞腫や子癇(しかん)、腎疾患など、さらには特定される原因がない本態性高血圧によっても引き起こされる重症の高血圧。拡張期圧=下の血圧が130mmHg以上=は、高血圧のみで頭痛を生じる非常に稀(まれ)な例」とある。したがって、血圧が高くて頭痛がある人では「褐色細胞腫」や「悪性高血圧」には気をつける必要があるのだ。さらに、これらは「高血圧性脳症」=比較的急速に起こった高度の高血圧によって脳血管が拡張し、脳浮腫(ふしゅ)を生じて、意識障害や痙攣(けいれん)を引き起こす救急疾患。主要症状に頭痛がある=をきたすので厄介だ。

 高血圧は“サイレントキラー”と呼ばれ、明らかな自覚症状がないままに、さまざまな臓器(脳、心臓、腎臓、眼底など)の障害を進行させる病態である。このことからは、まずは塩分制限の徹底が重要であることは言うまでもない。(近畿大学医学部麻酔科教授 森本昌宏)