高齢者、集まって筋トレ 社会参加の場にも

 
フレイルの兆候を知るための質問票。シールを貼って改善点を把握する

 高齢者が要介護に至る前段階「フレイル(虚弱)」で食生活や運動習慣を見直して重症化を防ぐ活動が広がっている。公民館などに集まって筋力や健康状態のチェックをしながら、バランスのいい食事や簡単な筋トレ法を学ぶ内容で、講師も地域の高齢者。住み慣れた町で新たに高齢者が社会参加できる場を生み出す効果も期待されている。

 ◆楽しくチェック

 千葉県柏市で10月に開かれた市民講座。60~70代の男女約20人が講師の説明に耳を傾けた。講師は「フレイルサポーター」と呼ばれる地域の元気なシニア世代。養成研修を受け、ボランティアで運営にあたる。

 講座ではフレイルの兆候を知るため、専用の質問票を使って、栄養・運動・社会性の3要素に関する現状を自己採点。片足立ちや滑舌、握力などの筋力も測定した。ハンドブックに沿って栄養の取り方やスクワットの方法などの解説もあり、市民同士で明るく談笑する場面も。受講した男性(71)は「楽しくチェックできた。講座の情報を夫婦で共有して取り組みたい」と話した。

 ◆サポーター100人に

 これらのプログラムは、東京大高齢社会総合研究機構が柏市で行った大規模研究に基づき開発。考案した飯島勝矢教授は「フレイルは、対処次第で健康に戻れる状態。普段の地域の集いをチェックに活用し、継続することが大切。地域のシニアが主体となって、明るく前向きに取り組める活動になれば」としている。

 柏市は平成28年度から本格導入し、翌年度までに延べ約2300人が受講。サポーターは60~70代の約100人に上る。講座は市民の希望に応じて開催でき、市は養成したサポーターを派遣するほか、個人の状態に合わせて相談窓口や健康関連事業を紹介する。

 フレイルは、虚弱を意味する英語の訳語として日本老年医学会が提唱。身体的・心理的・社会的な面で問題を抱えやすく、健康障害を招きやすい状態を指す。厚生労働省は高齢者のフレイル対策に着目し、さまざまなモデル事業を実施。一定の効果が確認され、4月策定の保健事業ガイドラインにも盛り込んだ。

 柏市と同様の活動は、神奈川県茅ケ崎市や福岡県飯塚市などが導入。30年度末までに約40自治体に増える見込みという。

 市民の要望で導入したのが和歌山県紀の川市。サポーターの畠中美文(はたなか・よしふみ)さん(67)は「市民主体でやりがいがある」と話す。神戸市では10月、サポーター養成研修が開かれ、70代を中心に男女約30人が参加。市の担当者は「意欲ある市民サポーターの発信でフレイル予防が広まるのでは」と期待する。

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 ■メタボだと筋肉が減少? ホルモンが関与

 国立病院機構京都医療センターの浅原哲子研究部長、健康科学大の田中将志講師(同センター客員研究員)らは、高血糖で血糖値を抑えるホルモン「インスリン」が増えた人は、骨格筋でつくられて筋肉の増加を抑えるホルモン「ミオスタチン」も増加し、筋肉が減る可能性があることを発見したと発表した。

 研究では、京都医療センターの「肥満・メタボリックシンドローム外来」を受診した体格指数(BMI)25を超える外来患者74人で、身体測定と詳細な血液検査を実施し、関連を調べた。

 ミオスタチンは骨格筋量が多いほど増えるため男性の方が多かったが、その影響を除いて分析したところ、骨格筋量が多いか少ないかにかかわらず、インスリンが多いほどミオスタチンも多いことが明らかになった。

 筋肉は血液から糖を取り込み、それを消費する働きを持っており、筋肉量が減ると、血糖値が下がりにくくなる悪影響がある。今回見つかったインスリンとミオスタチンの関係は、高血糖になって血中のインスリンが増えるとミオスタチンも増加。それが骨格筋の減少を招き、ひいては運動量や糖の代謝の低下を経て、生活習慣病に進展する可能性を示している。