まさかの失注、企画潰れ… まだ「驚異のプレゼン」で消耗しているの?

 
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 【働き方ラボ】12月だ。街もすっかりクリスマスムードだ。私は週末になると、1歳5カ月の娘を連れて都内のクリスマスツリーやイルミネーションを見に出かける。先週末は、六本木と日比谷の東京ミッドタウン、恵比寿ガーデンプレイスなどに行ってきた。娘は喜び、はしゃいでいた。(常見陽平)

 クリスマス前に破局する二人と、営業の失注、内定辞退は似ている

 「草食化」「若者の恋愛離れ」などと言われ、関連するデータもメディアで紹介されるが、このようなスポットには男女のペアがそれなりの人数いる。カップルか、それ未満か、普通に友人同士なのか。初々しさとぎこちなさがあいまった姿を見ているとドキドキする。

 一方で、余計なお世話だが、不安になることもある。それは、「この二人は、ちゃんとクリスマスまで続くのか?」という懸念である。特に恋人未満の関係の人が心配だ。クリスマスにデートをしよう、あわよくばお泊りまでしようと誘おうとすると、「やっぱりお付き合いできない」「そんな気じゃなかった」という話になり、山下達郎の「クリスマスイブ」やB'zの「いつかのメリークリスマス」を聴いて、途方に暮れる…。

 恋愛の話はともかく、この「いい感じだと思っていたのに、突然ふられる」という件、皆さんも日常的に、ビジネスの現場で直面していないだろうか?「絶対に、受注する」と思っていた案件がポシャったり、必ず通ると思っていた企画が会議で潰されたり…。

 元採用担当者の視点から言うならば、内定辞退というのもそうだ。「御社が第一志望です!」「絶対に、御社に行きます」などと言っていた学生から「お祈りメール」ならぬ「逆お祈り電話」がかかってくる…。

 この手の話をすると「最後の押しが弱かった…」など、これまた雑な反省が行われたりする。違う。原因は一つではない。予想外の変化というものもある。ただ、ビジネスパーソンとして意識したいのは「コミュニケーションのズレ」である。特に、最後の方になって破局に至るのは、実はコミュニケーションが最初からズレているからではないだろうか。

 ジョブズのプレゼンも、TEDも目の前でやられたら、ウザい

 見直すべきものの一つは「プレゼン」だ。恋愛においては自己紹介が、営業においては初回訪問での商品・サービスの説明や、その後の企画提案が、採用においては求人広告や会社説明会などの最初の接点がズレていた可能性がある。そう、最初からズレているのだ。

 「いや、最初から気合いを入れて説明したつもりなんだけど…」

 というアナタ。その過信は大間違いだ。「伝える」と「伝わる」は違うのである。「ちゃんと伝わったのか?」と反省したことはあるだろうか?

 私は、AppleのCEOだった故スティーブ・ジョブズの「驚異のプレゼン」や、TEDの「悪影響」が気になっている。もちろん、これら自体を否定するつもりはない。聴衆をとりこにし、巻き込む、あそこまでのプレゼンは、私には無理だ。YouTubeなどを通じて、世界中の人の間で共感を呼んだものを全否定するつもりはない。

 ただ、著名人が、大会場の聴衆に、さらにはネット中継を通じて世界中の人に語りかけるプレゼンと、一会社員の私達が、小さな会議室でするプレゼンは根本的に違うのだ。一方通行で語りかけても意味がないし、ましてや、劇的な演出をされても困るのだ。

 これは、恋愛においても同じだ。ドラマや映画を参考にした、ドラマチックなプロポーズなどされても、ウザいだけである。「僕は死にましぇーん」と言われても、いまやストーカーなのである。もはや、元ネタもわからない時代だが。

 これは仕事術について考えるときの基本なのだが、それを提唱している人がどんな人なのか、自分の立場を考え、どの部分だったら真似できるのかを考えた方が良い。この手のものをそのまま真似しても迷惑なのだ。

 コミュニケーションの溝をどう埋めるか

 このような「劇的なプレゼン」は、コミュニケーションのズレを誘発する。しかも、営業にしろ、新卒採用にしろ、恋愛にしろ、劇的すぎて、どう断っていいのかわからず、ズルズル進んだ上でお断りになるのである。

 プレゼンは別に劇的である必要はない。言いたいことが伝わり(伝えるではない)、理解して頂き、納得して頂き、疑問を解消した上で目的とするアクションにつながればいい。だから、世の中には口下手なトップ営業パーソンという人も存在するのである。

 別に完璧なプレゼンを目指さなくても良い。もちろん、準備は気合いを入れるべきだが、相手の反応をみつつ、より深い課題を聞き出す場にするべきだ。何より、その過程で信頼してもらえるかどうかが肝だ。

 すでに季節は冬である。私のような中年をターゲットにサッポロビールの「冬物語」も期間限定発売され、季節を感じる。ただ、初滑りはスキーだけにして頂きたい。仕事も恋愛もウザいプレゼンで滑ってはいけない。

【プロフィル】常見陽平(つねみ・ようへい)

千葉商科大学国際教養学部専任講師
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。