【ローカリゼーションマップ】「日本にはまだ女子大があるのか!」…驚く欧州人 ルーツや存在意義を考える

 
ミラノ工科大学の校舎内(C)松下慶太

 【安西洋之のローカリゼーションマップ】実践女子大学でメディア論を教える松下慶太さんをミラノ工科大学に案内した。松下さんは、1年間のサバティカル(長期休暇)でベルリンを拠点に、欧州各地でソーシャルデザインのリサーチをしている。

 彼が東京の女子大に勤めていると自己紹介すると、相手の先生は怪訝な表情をする。

 「女子大という存在が、日本にはまだあるのか?!」との驚きが見てとれる。そして「男性の教員もいるのか?」とかいくつかの質問を矢継ぎ早に聞かれた。

 日本以外にも、韓国・中国・インド・中東・米国・英国という国々では女子大がそれなりの存在感を放っているようだが、欧州の大陸の国では「忘れられた」存在になっている。

 ぼくは女子大についてほとんど知らないので、少々好奇心が芽生え、松下さんにこのあたりの事情を聞いてみた。そもそも女子大とは何か?というところから。

 「大きな流れとしては、キリスト教宣教師などによって開かれた語学や、アメリカなどで見られるようなリベラルアーツを展開するもの。もうひとつは生活科学や医学・看護など実学・専門領域の教育を展開するものがあると思います」

 日本であれば、東京女子、聖心女子、東洋英和、フェリス、白百合などはリベラルアーツを中心とした前者にあたる。東京女子医大や日本女子は後者となる。アジアの他国をみても、どちらの流れの大学もある。

 そして、彼はこう指摘する。

 「学祖の留学先などにも、結構影響されているかもしれないですね。津田梅子が津田塾大をつくり成瀬仁蔵が日本女子大を開校しましたが、彼らはアメリカから戻った後に学校をつくっていますね」

 これをみると、大陸ヨーロッパへの留学組の学校設立はあまり目立たない。

 松下さんのこれまでの経験からすると、北欧はジェンダーギャップが少ないのと大学制度が比較的新しいので 、特に日本の女子大への質問が多いそうだ。他方、カナダやアメリカなどでは、女子カレッジの存在を知っているので、松下さんが女子大で教えていると説明しても、「ふーん」という反応だという。

 以上から、ミラノ工科大学の先生の女子大への「あからさまともみえる好奇の目」は、欧州大陸における典型的なものだったといえる。どうもジェンダー差別撤廃への意識が高いほど、女子大という存在に戸惑うようだ。

 しかし、こうした現象は日本においてもないわけではない。

 実践女子大のオープンキャンパスの際、保護者などから「男子がいないということは、多様性や現実社会への対応としてどうなのか?」との質問を受けたこともあるようだ(「うちの娘はおっとりしているから女子大が安心」という親も多いが)。

 松下さんは、次のように考えている。

 「日本の社会や企業における男女格差などを考えると、女子大で育むリーダーシップや女子向け教育のメリットもあると思います」

 共学で男子がいたとして、女子のリーダーシップの力がより伸びるとは、さほど期待できるものでもない。

 「これが現実の社会だから、と(男子のリーダーシップを優先する状況を)納得させるのもなにか違いますよね」と松下さんは首をかしげる。

 そもそもの前提として、女子大というカテゴリーを俎上にのせて論じる時代でもなくなったとの意識が松下さんにはある。それぞれの立ち位置や地域・学部の特色などを踏まえて考えるべきことが多い、と彼は認識している。

 まず松下さん個人としては、非常勤で行っている立教大や中央大の学生と実践女子の学生を交えていろいろ活動しており、実践女子大の学生を孤立した存在として見ていない。

 二番目に彼が考えるのは、東京の都心部における大学の密度からすると、「渋谷大学」のなかにカレッジがいろいろあるとのイメージである。物理的な距離で言うなら、実践女子大学は渋谷にあり、青山学院大学や國學院大學と隣接しているのだ。

 三番目としては、渋谷という地域や企業と連携しながら問題解決型学習を展開するにあたり、「渋谷の女子大生」とのエクストリーム・ユーザーとしての強みがあると考えている。大規模大学の多様な人達という集団とは逆の強みを活かした、デザインや企画・提案を探っていくという方向性だ。

 「例えば、鹿児島の鰹節業者×渋谷の女子大生というように、コラボ・掛け算の要素としての個性という意味では、『渋谷』『女子大』というのは面白さがあるかなと思っています」

 冒頭のエピソードに戻す。松下さんが説明してくれた、これらの個別の事情を欧州の先生に話さないと、彼らはさっぱりとした顔をしないのだろうか。もし他のストーリーがあるとしたら、それはどういうものなのだろう。

 女子大、欧州大陸でなかなか手ごわいテーマである。

【プロフィール】安西洋之(あんざい・ひろゆき)

モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

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