【パパ編集部員の育休エブリデイ】(1)“ワンオペ育児”を避けるため決断 半年の育休生活がスタート
女性の社会進出が広がり、政府の掛け声で働き方改革も注目されるなか、仕事と育児の両立は働く女性だけではなくパートナーの男性にとっても大問題だ。今ご覧頂いている産経新聞グループの経済サイト「SankeiBiz」の編集部で勤務する私は2018年5月から半年間、第2子誕生をきっかけに育児休業を取得し、できる限りの時間を妻との二人三脚による子育てに注いだ。まだまだ男性の育休取得率が低い中、私なりに体験して感じたことや、育休をめぐり社会や仕組みがこう変わってほしいと思うことを、テーマごとに連載形式で紹介する。少しでも読者の参考になり、育休論議に一石を投じることになれば幸いだ。第1回は育休を取った経緯や勤務先の反応などをお伝えする。(文・写真 大竹信生/SankeiBiz編集部)
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5月某日未明、妻から届いた1通のLINEで目が覚めた。
「3600グラムの元気な男の子が生まれたよ!」
前日夕方に陣痛が始まった妻には高校時代からの親友が病院まで付き添い、私は自宅で2歳になる長女の面倒を見ながら連絡が来るのをずっと待っていた。
隣で寝ている娘を起こさないように添付のムービーを確認すると、喜びと安堵感もそこそこに、娘との長い一日に備えて再びベッドに横臥した。2児の父となったこの日から、6カ月にわたる育休生活が始まった。
手渡された1冊のノート
「時間があるときにこれを読んでおいて」
出産の数週間前に、妻から1冊のノートが手渡された。そこには、妻が出産から退院するまでの5日間、私と娘が二人だけで無事に過ごせるようにと、彼女なりにまとめたアドバイスがたくさん書き込んであった。
-「言うことを聞かないこともあるし、なかなか寝ないこともあると思うけど、優しい気持ちで接してあげてください」
-「寝ないときにこちらがイライラして怒ったりすると夜泣きするので、気を付けてあげてください」
-「最近、とつぜん道路に飛び出したりするので、事故には注意してください」
-「二人が仲良く、健康に5日間を過ごせることを願っています」
その文面からは、娘を心配する母親の優しさ(そして、私に対する一抹の不安)が染み入るように伝わってきた。さらに読み進めると、「1日のスケジュール」「寝かしつけ」「ごはん」「遊び方」など、項目ごとに具体的な助言がずらりと並んでいた。私はそれを手引書として、ことあるごとに通勤電車の中でじっくりと目を通した。
職場へ報告、そして反応は…
会社への妊娠報告と育休の申し出は、出産予定日の2カ月前に行った。
「上司や同僚はどんな反応を見せるのだろうか…」
そんな心配が頭をよぎったが、覚悟を決めてSankeiBiz編集長に話を切り出すと、彼の性格を知っていることもあって大方予想通りの言葉が返ってきた。
「編集部が一人減るのは正直痛いけど、決めたからには頑張ってほしい。6カ月間なら、こちらも何とか待てるから」
当時の部長からも、「男が積極的に育児に参加するのは大事なこと。中途半端に取るよりは、思い切って1年ぐらい休むのもアリだと思う」と大きな理解を示してくれた。女性社員たちからは、「その決断はすごい。応援してる」「頑張ってください」などと、たくさんのエールをもらった。上司や同僚が背中を押してくれたことで後ろめたさがなくなり、大きな安心感とともに育休期間に入ることができたのが何よりも嬉しかった。彼らの温かい対応にはいまだに感謝の気持ちでいっぱいだ。
不規則な業界
私はマスコミという少し特殊な業界で働いていることもあり、一般的なビジネスパーソンとは働き方や勤務体系が異なることは承知のうえで、それでもこの記事が少しでもお役に立てればとの気持ちで書いている。
WEBメディアの当社は所属部署によって日勤や夜勤もあれば、自宅でパソコンを使って仕事をすることもある。私の仕事内容について少し紹介すると、現在の担当はSankeiBizの編集業務で、主な仕事内容は取材・執筆、外部ライターとのやり取り、さらに新規事業やコンテンツの企画と多岐にわたる。勤務時間は10時-19時が中心だが、働き方は本人の裁量に任されており、自由に動くことができる。ときに自宅での作業もあれば、土日勤務もたまにある。国内や海外に出張に行くこともあるため、家を不在にするときもある。今後も配属先によって深夜勤務に就く可能性も十分にあり、過去にも実際にSanspo.com(サンスポコム)担当時代に経験するなど、不規則な業務に就くこともままある職場環境だ。
家族構成は私(41歳)、妻(34歳)、長女、長男のいわゆる核家族で、23区外で生活している。私の両親は神奈川県在住で60代後半、妻の母は50代で関西方面に住んでいる。私は一人っ子で、妻の妹弟も遠方におり、手伝いに来てもらうことはできない。基本的には親族の手を借りることなく、家族4人だけで過ごす毎日だ。
6カ月の育休を取った理由
私が半年間の育休を取得した理由はたくさんある。まず、一人の子供を育てるだけでも相当大変だが、二人同時に育てる“ダブル育児”はそれに輪をかけて忙しく、精神的にも肉体的にも過酷だと言われている。おそらく経験者の方は大きくうなずかれている事だろう。うちは第2子が生まれた時点で、上の娘はちょうど2歳になったばかり。「おいしい」「あつい」といった単語は発するものの、まだまだ会話はままならず、食事や入浴、着替えやトイレなどまだ自分一人では上手にできない。しかも世間でよく“魔の2歳児”と揶揄されるイヤイヤ期の真っただ中で、おまけに保育園に入れなかった待機児童だ。もちろん、昼夜を問わない2時間おきの授乳や夜泣きへの対応など、乳幼児の世話は常に24時間体制。まともに寝ることすらできず、産後の疲労や、体の変化に起因する痛みに耐える妻を最大限サポートするのはもちろん、上の娘が生まれたときから育休を取得中の妻が、一人で幼子二人の面倒を見ながら家事もこなす“ワンオペ育児”をなるべく避けたいとの長期的な意向もあった。
加えて、妻は帰省が難しいこと、私の両親も高齢者の仲間入りをするなど、核家族化や晩婚化(私が結婚したのは30代に入ってから)の影響で、「子供が生まれるころには自分の親も高齢」という今どきの社会背景も、育休取得を決断した要因だった。とても「孫の面倒を見に来てほしい」などと頼める状況にはなかったし、そもそも「自分が育休を取ればいろんなことが自己完結する。地域の子育て支援サービスもある。それでもしんどいのなら、その時は正直に話して、自分の親に少し甘えよう」と割り切っている部分があった。
実際に育休の申請を心に決めたのは、妻が安定期に入り、相談がしやすくなった昨年11月頃だった。最初は育休取得の意思があることに驚いた様子だったが、中でも一番びっくりしたのは「1年くらいの期間で考えている」と伝えた時だった。妻としてはその気持ちがありがたい一方、私の職場に迷惑がかかるとの懸念もあり、最終的には「6カ月」という結論で落ち着いたのだった。
いよいよ始まった育休生活
新しい家族を迎え、ついに6カ月の育休生活が始まった。朝起きて、毎日のように家族と24時間一緒に過ごす不思議な日々。家族のために活躍したいと、大きなヤル気に満ちていた。産後の妻を全力でサポートするために、私なりにできることを考え、自分でもびっくりするほど洗濯物や皿洗いに全力で取り組んだ。だが、妻が退院した3日目に“事件”は起きた。
夕食後、いつものように山積みの食器を洗っていると、寝室から怒り狂った妻の怒声が響いてきた。
「あなたは何のために育休を取ったの!!」
怒っている理由を聞くと、こちらも一瞬にして怒りが爆発した。
「こっちもいろいろ考えながら家事やってんだよ!」
大ゲンカの理由はおそらく、「育児に対する男女の考え方の違い」だ。詳しくは次回お伝えしよう。
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