営業成績最悪の元リクルート営業マンから転身した男が説く「職務経歴書」のススメ
【働き方ラボ】2018年も残すところわずか。何にしても「平成最後の」というフレーズを使ってしまう。私のように、40代半ばにもなると歳をとることや、新年を迎えることに対して新鮮味もなくなってしまうのだが。とはいえ、クリスマスのイルミネーションや、お店でクリスマスケーキやおせち料理の予約をとっている様子をみると、「そうか年末か」という気分になる。(常見陽平)
意識高い系ウォッチャーとしては、この時期は楽しみでしょうがない。SNS上で今年の振り返り、新年の抱負などの決意表明をする輩が続出するからだ。忘年会、新年会の様子も投稿される。読者(あなた)がそうでないことを願うが、タグ付けされまくっており、「仲間に囲まれている俺」アピールがちょっと痛々しい。なお、意識高い系の中には忘年会、新年会を「望念会」「信念会」と呼ぶ輩もいる。ここまで痛々しいと観察対象としてはなかなか面白い。
このタイミングで異動や転職をする者もいる。それに合わせたSNS投稿「転身ポエム」も味わい深い。中田英寿氏の引退エントリーなみの、長く、熱い心情の吐露、関係者への感謝、決意表明が投稿される。中田氏ほど有名じゃないのに。
年末年始の帰省や旅行に関連する「エアポートおじさん」投稿も見ものである。これも行き先や、ラウンジの使用などによりマウンティング合戦が行われる。
はぁ、はぁ。意識高い系ウォッチャーとして、普段からの複雑な想いを吐露してしまった。これらの行為は観察対象としては面白い。ただ、冷静に考えるとどうでもいい。意識の高い決意表明の前にやるべきことがある。今年1年を冷静に振り返ってみよう。ビジネスパーソンとして、どのような仕事をしただろうか。どんな成長・進化があっただろうか?
職務経歴書を書こう
振り返りをする際にオススメしたいのが、職務経歴書を書くことである。これは文字通り、どのような仕事をしてきたのかをまとめたものである。履歴書はこれまでの学歴や職歴(実際には在籍した企業名)、保有資格などを書くのに対し、こちらは担当した仕事を具体的に記述する。
今までに一度も転職活動をしたことがない人は、書いたことがないだろう。そう、これは転職する際や、人材紹介会社に登録する際に必要になるものなのだ。転職経験者でも、企業によっては提出する必要がないので、書いたことがない人もいることだろう。
転職を考えていなくても、職務経歴書を書いてみよう。これまでの経験を棚卸しすることができるからだ。
汎用的なフォーマットを人材紹介会社や、転職情報サイトで探し、記入してみよう。まずは、これまでどの部署で、どのような業務を担当したのかをざっと書き出していく。
おそらく、初めて職務経歴書を書く場合、単なる事実の羅列になってしまうだろう。ただ、単に担当業務を並べるだけではなく、そこで学んだこと、それが今にどう活きているかを意味づけしていくことが重要だ。
職務経歴書は毎年、変化する。もちろん、毎年、新しい仕事を経験するので、経験値がたまっていく。ただ、それだけではない。過去の経験の解釈も変わるからだ。その時には、自分では何も誇るべきことがないと思っていた経験でも、あとで解釈が変わることがあるからだ。いかにも会社の都合でやらされた経験、しかも大した成果を出せなかった経験が光輝くことがある。
私の場合で言うならば、希望外の営業配属などがそうだ。「トップレス営業マン」と呼ばれるほど、成績は悪く、宴会芸くらいしかウリがなかったが、それでも営業の虎の穴と言われた当時のリクルートで、法人営業を2年経験したことは、世の中から見ると価値のある経験である。実際、当時学んだことは、交渉事にあたる際の武器になっているし、初対面の人に分かりやすく話すという技術の基礎となり、現在の評論家としての活動に役立っている。何度か、求人サイト、宿泊予約サイトの企画担当をしたこともある。これも、大した成績は残すことはできなかったが、それでも知名度の高いメディアに関わった経験は貴重だし、現在の仕事にも役立っている。
このように、毎年、この時期に職務経歴書を読み直し、書き直すことはキャリアの棚卸しという点で意味がある。ぜひ、取り組んでもらいたい。
職務経歴書を人に見せてみよう
職務経歴書を書いたのなら、せっかくだから人に見せてみよう。一人では気づかない、自分の強みを発見できるからだ。
私が推奨するのは「エア転職」だ。すぐに転職する気がなくても、人材紹介会社や転職サイトに登録してみよう。現在では、積極的に転職する気がない、転職潜在層向けのサービスも存在する。登録しておくと、スカウトがくる可能性もある。転職すると年収が上がるのか下がるのか、どのような業界に転職できるのか、より規模が大きい企業に転職できるのかなど、自分の可能性を確認することも可能だ。
また、友人・知人に人事担当者や、人材ビジネス関係者がいたら、彼らに見てもらうのも手だ。何が評価されるのか(されないのか)がわかる。
意識高い系アピールよりも、振り返りこそ大切だ。職務経歴書を書くこと、エア転職してみることで、今年を振り返ってみよう。
【プロフィル】常見陽平(つねみ・ようへい)
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。
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【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。
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