「40代は転職できない説」は本当? 企業が求めるのはどんな人? 人材のプロに聞きました

 
(画像提供:Getty Images)

 企業の人手不足などにより、現代の転職市場は応募者有利の売り手市場が続いている。だがその中でも、年齢が上がるごとに転職は厳しくなるとの説は根強く、特に40歳を超えた人は内定取得が難しいと考えられている。

 この説は本当なのか。また、40代に差し掛かっても転職に成功し、新しい職場で活躍できるのはどんな資質を持つビジネスパーソンなのか--。

 2018年は40代の転職が増加

 人材会社エン・ジャパンで30~40代向け転職サイト「ミドルの転職」の事業部長を務める天野博文氏によると、2018年1~9月に同サイトを活用して転職した40代は前年同期比2.6倍に拡大していたという。

 天野氏は「経営者としての経験や、AI(人工知能)など高度なデジタル技術を活用した経験がある40代は転職に成功しやすい」と説明する。

 また、日本人材紹介事業協会の調査では、18年4~9月期にジェイ エイ シー リクルートメント、パーソルキャリア、リクルートキャリアが転職先を紹介した人のうち、41歳以上は前年同期比1.3倍の計4391人に増えていたとの結果も出ている(26~30歳の転職者数は1.2倍の1万3517人)。

 これらの結果からは、若手より転職者数は少ないものの、「40代の転職は厳しい」と一概には言い切れないことがうかがえる。

 天野氏は「経営層の高齢化に伴い、企業が事業承継を検討する流れが活発化し、転職市場ではヘッドハンティングが増加しつつある。経営者の後継となるポジションでヘッドハンティングされた40代は年収が上がりやすい。40代であってもAIを使いこなせる人材は、さまざまな業種で世界的な需要が極めて高い」という。

 “ジョブホッパー”は苦戦する傾向に

 一方、こうした秀でたスキルを持つ層を除けば、転職に苦戦する40代は少なくない。

 天野氏は「本人の希望と、転職市場での市場価値にギャップがある人は転職が難しい。ITエンジニアなど、転職回数が多くても許容される職種を除いては、すでに3~4回の転職を経験している人も『厳しい』と判断されるケースが多い。募集の段階で転職回数に制限を設けている企業もある」と指摘する。

 他の世代にも共通して当てはまることだが、40代も現職企業での在籍期間が短い人、転職動機が「なんとなく」など不明確な人、転職理由が「人間関係の不満」などネガティブな人、会話が苦手な人、ブランク(無職期間)が長い人--などは転職が決まりにくいそうだ。

 年収アップに成功した40代は約4割

 また、18年に転職が決まった40代のうち、年収アップ(+5%以上)を実現できた人は38%。残る22%は年収ダウン(-5%以上)、40%は横ばいだった。

 天野氏によると、年収アップを実現できた人は「(経営者候補やAI人材の他には)専門性と語学力を併せ持つ、グローバルに通用する人材に多かった」という。「日系企業は外資系企業と比較して給与水準が低いため、日系から外資に転職できた人は年収が上がりやすい。また、グローバルでの競争に置かれる日系企業も、外資の水準を意識した賃金の上昇がみられる」と分析する。

 年収を上げられなかった40代は、希望と相場のギャップがある人や、大手企業から中小・ベンチャー企業に転職した人などに多かった。「転職経験の少ない40代が、現年収以上を希望して折り合わない例がみられた。大手企業から転職する場合、家賃補助など、失うものがあることを本人が理解していない場合も多い」という。

 「前の会社はこうだった」はNG

 ただ、こうして転職が無事に決まっても、40代が転職先で活躍できるか否かは、本人の性格や資質に左右されるとしている。

 天野氏は「転職先で活躍できる40代は、社内でのコミュニケーションを重視する人、分からないことを素直に認めて教えを乞うことができる人、転職先の企業文化を理解しようとする人など。プライドや過去の経験などをいったん脇に置き、なじもうとする姿勢が大切だ」と指摘。

 活躍できない40代は「前の勤め先と比較して新しい会社を悪く言ってしまう人、これまでの経験や実績をひけらかす人、前職の仕事のやり方を持ち込む人など。これらの行動を取ると転職先企業の人と距離ができてしまうほか、周囲のサポートを得ることが難しくなるため、活躍できない」と分析する。

 「40代で転職できた人は、即戦力としての期待がかかるので、早く成果を出さないといけないという焦りもあるだろう。だが、まずは今までの成功体験をリセットする気持ちで、転職先企業になじみ、その企業の文化を学び、その上で着実な成果を出していくという心掛けが重要だ。そうすれば、これまでの経験を生かし、転職先企業で大きな影響力を発揮できるようになるだろう」(天野氏)