パパ編集部員の育休エブリデイ

(3)ベビーカー使用者には鬼門の交通機関 “エレベーター事件”にも遭遇

 自分が子育てをしていると、育児を取り巻く社会の環境や制度にもおのずと目が向く。今回は半年間の育休中に公共交通機関を中心とするインフラ面で気になったことについて話を進めたいと思う。ベビーカーを携えた電車移動や某有名デパートで遭遇した“エレベーター事件”など、多大な苦労やストレスに辟易する日もあれば、便利な設備や人々の優しさに触れる機会もたくさんあった。また、育休の制度や実態、気になる待遇についても若干触れたい。(文・写真 大竹信生)

 子供が生まれてから行動の自由が減り、移動範囲も極端に狭くなった。乳幼児がいると遠出は疎か、自分が行きたい場所に気軽に赴くことも難しくなる。子供を抱っこしたり手を繋いで歩けば歩行速度は大幅に遅くなり、加えてベビーカーという大きな荷物もある。オムツや着替えも持ち歩くため、どこへ行くにも重たいスーツケースをゴロゴロ押して帰省するような煩わしさが付きまとう。毎日のちょっとしたお出掛けですら、まるで小旅行なのだから、電車やバスに乗るとなればかなりの体力と忍耐力、そして覚悟を要する。

 交通インフラで苦労

 駅の構内はベビーカー使用者にとってなかなかの鬼門だ。私の生活圏である首都圏の大きな駅にはA型と呼ばれる大きめのベビーカーが余裕で通れる広い改札ゲートがあるが、一般的な改札しかない場合は横幅が狭いため、後続の人たちに迷惑を掛けないよう流れに乗って通り抜けるのは困難。しかも、広い改札ゲートが便利だといっても、向かい側から入場してくる人の列が途切れない限り、通過するのは難しい。とくに電車の到着前後は改札口が混雑しやすいので、人通りが一段落するまで待つようにした。

 ホームが地上階にないときはエレベーターに頼ることになるが、お年寄りや体が不自由な人などエレベーターを必要とする人は子ども連れ以外にもたくさんおり、混雑時は5分~10分ほど並ぶこともよくあった。とくにエレベーターを必要としない人でも、目の前にあればついつい乗ってしまうこともあるだろう。私もかつてはそうだったが、子供ができてからは、一人で行動するときは控えるようになった。

 エレベーターがあればまだマシな方で、主要駅の一つであるJR池袋駅でさえ、「中央2改札」から入場するとエレベーターが1基もないのだ。私も知らずに入ったため、駅員に確認したのちに、いったん改札を出て「中央1改札」から入り直す羽目に陥った。マンモス駅のJR新宿駅でさえ、「〇番ホームに上がるエレベーターは南口側にしかありません」といった煩わしさがある。西口や東口改札から入ったらアウトだ。

 ホームドアの設置も進んではいるものの、ホームが狭く、転落防止柵がない駅では、ベビーカーを押すのにかなり気を使った。

 ここまで子連れ家族にとって不利な事ばかり並べたが、一昔前を思えば、広い改札ゲートやエレベーター、ホームドアの設置が進んでいるだけでもありがたいことだ。JR中央線などベビーカーを優先的に置けるスペースを設けた車両もある。電車とホームの段差を解消するスロープを取り付けている鉄道会社もある。エレベーターの設置がなくても、改札階まで上がれる長いスロープを設置している駅もあった。これならエレベーターを並んで待つ必要もないので、むしろこちらの方が便利だと感じた。現代ほどインフラが整備されていない時代に子育てをしていた方々には頭が下がる思いだ。

 周囲への配慮を意識

 ベビーカーを押しながら交通機関を利用する立場として私が心掛けたことは、周囲への配慮だ。なるべく人の流れは止めたくないし、嫌な顔もされたくない。変なトラブルも避けたかった。ベビーカーは収納カゴにたくさん荷物を載せていると折りたたみづらく、邪魔になりやすいため、なるべくピーク時の乗車を控えたり、可能なときはタクシーに乗ったりもした(※一応、国交省のサイトには下のイメージの通り「ベビーカーは折りたたまず乗車することができます」と明記してある)。

 子供が生まれる前はまったく知らなかったのだが、大抵の大型ベビーカーも折りたためばタクシーのトランクにすっぽりと収まる。車の場合は(たとえレンタカーであっても)6歳未満の子供を乗せるときにチャイルドシートの設置が義務付けられているが、バスやタクシーは取り付け義務が免除されているため気軽に利用できるのもメリットだ。最近よく見かける背の高いタイプのタクシー(トヨタの「ジャパンタクシー」や日産「NV200タクシー」)は車内が広々としていて、スライドドアも乗り降りがしやすかった。子供が狭い空間を嫌がるという家族には、ぜひお勧めしたい。

 外出すれば移動中だけでなく、子供と一緒に過ごす店舗や施設でも普段とは違った意識が働くものだ。

 男性の私がオムツ替えのときに重宝したのが、ベビーシートを高い確率で備えている多目的トイレだった。オムツを替えたくても女性トイレや授乳室の中にしかベビーシートの用意がないケースが多く、妻が一緒にいないときは、近場で男性がアクセスできるベビーシートを探すのにけっこう苦労した。最近は駅だけでなく、ちょっとした商業施設や観光施設などでも設置しているところが増えてきたのは嬉しい。

 乳幼児を持つ親は、とくに土地勘がない場所で授乳室を探すのも案外大変だったりする。私は「ママパパマップ」という授乳室検索アプリを使用しているのだが、かなり細かく検索できるのでお勧めしたい。オムツ替えスペースも検索できるので(中には「男性入室禁止」の施設もあるが)便利だ。

 施設の「使い方」やマナーを考える

 大型商業施設ではベビーカー・車イス優先エレベーターの存在も嬉しかった。ただ、どんな役に立つインフラも、肝心になってくるのは「使い方」であり、使う人間そのものではないか。

 多目的トイレは便利だった一方、様々な人が利用するためトラブルも多かった。ようやくドアが開いたと思ったら、中からお爺ちゃんがタバコの煙をモクモクさせながら出てきたり(このときは妻が駅員にすぐさま通報)、ドアを開けたら施錠を忘れた人が用を足していたりと、マナーの悪さが目についたり対応に困ることが多々あった。ときには使用済みのオムツが放置されていることもあった。

 ベビーカーや車イス優先エレベーターでは、優先者の存在など歯牙にもかけず、並びもせずに我先にと割り込む人がたまにいたのには呆れた。

 某有名百貨店の混雑する優先エレベーターの中ではちょっとした“事件”にも遭遇した。孫をおんぶした金髪の派手なおばちゃんと、このおばちゃんの息子と思われる“やんちゃな風貌”の男性が二人そろって、「ちょっと、孫がつぶれるでしょ! 関係ない人は降りなさいよ!」「もう乗れねーだろ、降りろよ!」と大きな声で文句を連発していたのだ。確かに“優先度の低い人たち”も乗ってはいたが、周りがドン引きするほど攻撃的な態度を取るのはいかがなものか-。

 それぞれ立場が異なる人たちが気持ちよく共存するためには、私も含め、子育て中の親もマナーについて高い意識を持つ必要があるだろう。インフラ整備はもちろんのこと、公共施設を利用する私たちも譲り合ったり、優しくしたり、配慮してもらったときに謝意を伝えるだけで、もっと育児がしやすい社会を作れるのではないだろうか。私も自転車に子供を乗せたママさんに道を譲ったときに、「ありがとうございます」の一言もなく、無表情で通り過ぎる人を見ると、とても残念な気持ちになった。ベビーカーを押しながらエスカレーターを使用する人もときどき見かけたが、周囲の冷たい視線が気になってしまった。

 もちろん、気づいた時に一緒にベビーカーを運んであげる人や、積極的に席を譲る優しい心を持った人もたくさん見かけた。我々も周囲の好意や優先エレベーターを利用することを「私たちの特権だ」と当たり前だと思わず、しっかりと感謝の気持ちを示すことが大切だと思う。社会環境の一部はインフラ施設に頼る前に、人間同士がしっかりと関係を作ることで改善を図れるはずだ。

 育休をめぐるそもそもの制度面についても少し触れておこう。育児休業は育児・介護休業法で「労働者が原則として1歳に満たない子を養育するためにする休業」と定義されており、「同一の事業主に1年以上継続して雇用されている」など一定の条件を満たした労働者が取得できる制度だ。性別や雇用形態に関係なく「誰でも育休を取得できる権利」を企業側に義務付けており、たとえ勤務先に規程がなくても、同法律に基づいて請求する権利があるのだ。

 男性が育休を取得しづらい理由

 とはいえ、男性の育休取得率は2017年時点で5.14%といまだに低い(女性は同83.2%、※1)。しかも、男性の育休取得期間は83%以上が「1カ月未満」だ。内閣府の調査によると、男性が育休を取りづらい理由に多く挙げるのが、「職場が育休制度を取得しづらい雰囲気だったから」(26.6%)、「会社で育休制度が整備されていなかったから」(26.0%)、「業務が繁忙であったため」(21.2%)、「育休取得による、所得減などの心配があったから」(18.5%)だそうだ(※2)。

 「おそらく、旧弊に縛られた企業が依然として多いのでは…」との予想ができるが、会社側の立場で考えると現場は貴重な戦力を失うことになり、ルーチンワークを抱えるほかの社員には“兼務”という形でしわ寄せがくる。私の場合は幸い、会社のサポートや理解があったが、社員が育休に入っても業務に支障をきたさない体制の構築は、人手不足に悩む多くの企業が抱えている喫緊の課題だろう。

 勤務先や同僚の理解が必要

 男性の育児参加を促すには、勤務先の協力や社員同士が「お互いの生活を尊重する」という理解に努めることが不可欠。私も育休取得者として、自分が経験したことをレポートにまとめて会社にフィードバックした。また、社員に育休への理解を深めてもらうために、いつでも自身の体験を社内でシェアする意思があることを会社に直接伝えた。もっと育休を取りやすい社会環境を作るために、私のような経験者ができることはたくさんあるはずだ。

 仮に育休を取得しても、「所得減の心配」はあるだろう。だが、育休中は会社から給料が支払われない代わりに、雇用保険からハローワークを通じて「育児休業給付金」が2カ月おきに支給される(最初の6カ月間は育休開始前賃金の67%、それ以降は50%)。しかも非課税対象であるため、普段の手取り額とそれほど大差はないとの印象を受けた。この制度があるおかげで懐事情だけでなく、気持ちの面でも非常に楽になったのは確かだ。

 次回は近所のコミュニティや職場など、私の周囲の話を記したいと思う。子供を通じてアメリカ人の友達を作ったり、公園で知らないママさんから突然、「〇〇ちゃんのお父さんですか?」と話しかけられるなど、育休を取ったからこそ経験できたことがたくさんあった。

 この連載は原則として、隔週の更新を予定しています。【パパ編集部員の育休エブリデイ】のアーカイブはこちらから。

※1(厚生労働省 平成29年度雇用均等基本調査 P6)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-29r/03.pdf

※2(内閣府「共同参画」2017年6月号より P3)

http://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2017/201706/pdf/201706.pdf