人財教育の最大の武器、人事評価制度 (1)「5つのポイントを押さえて」
【マック&ユニクロ流人財育成】評価制度を構築する目的は、成長してもらうこと、やりがいを持ってもらうこと、そして長く働きたいと思ってもらうことです。
今思い返すと、成長する企業には優れた評価制度が存在していたと思います。
優れた評価制度とは、端的に言うと評価が終わったあと、すべてのスタッフがその評価に納得し、次の目標に向けて自分のモチベーションをアップさせることができるような制度のことです。マクドナルドでは、アルバイトや社員、管理職まで全ての階層に評価と教育の仕組みがあり、徹底して実施していました。
評価が上がれば、放っておいてもスタッフのモチベーションは自動的に上がります。大切なのは、評価が上がると思っていたのに現状維持だった場合や評価が下がってしまった場合です。
この時いかにスタッフのモチベーションを保ち、成長を促すことができるかが、優れた評価制度であり、評価者のスキルでもあります。
◆会社がしてほしいことを評価項目に落とし込む
前回お伝えしたグローイング・サイクルでは、“評価”は4つ目の項目として挙げられていました。
この評価がうまくいかなければグローイング・サイクルは止まってしまい、人財育成の仕組みが成り立たなくなります。
それでは具体的に優れた評価制度とはどのようなものでしょうか。今回は、特に大事な5つのポイントを解説したいと思います。
(1)会社がしてほしいことが評価項目に反映されている
グローイング・サイクルの「基準を示す」では、会社としてその人にやってほしいことを洗い出していました。
そこで出てきた項目を、優先順位が高いものから評価項目に設定していきましょう。
ただし多くても10項目。評価の段階としては5段階評価、もしくは○△×といった3段階評価にすると良いでしょう。
項目が増えると評価に対しての時間がかかるだけではなく、評価者にも、被評価者にとっても負担が大きくなります。
(2)「キャリアアップ/将来像」がイメージできる
前々回の記事で人が辞めない理由として挙げられていた項目です。
これらを明確にするには会社が期待していること、やってほしいこと、目指してほしい姿を伝えることが必要であり、それを評価制度で表現するのです。
例えば給与の仕組みや昇格条件を明示することも必要です。
◆評価者も成長させよう
(3)評価者の教育を行う
「評価者研修」と「評価会議」を実施し、評価者の育成を行いましょう。
まず評価者研修では、評価者としての心構えや評価票を作成する際の注意点を伝え、フィードバック面談のロールプレイなどを実施すると良いでしょう。
サービス業の現場で例えてみます。店長を被評価者、店長の直属の上司となるスーパーバイザーやエリアマネージャーを1次評価者、その上司となる営業部長が2次評価者とします。
評価会議では1次評価者と2次評価者が集い、評価に対しての目線合わせを行います。
1次評価者は評価となる材料を集め、評価会議の場でプレゼンテーションや質疑応答を行い、2次評価者を納得させなければなりません。
また、2次評価者は1次評価者に対し、どのような目線から評価を行うのかをコメントしていきます。評価会議を重ねて行うことにより、1次評価者は会社としての方向性や考え方を身につけ、評価者として成長していけるのです。
(4)評価制度運営の責任者、担当者を立てる
前述のように、評価は重要な項目です。
だからこそ時間をかけて慎重に実施していかなければならず、片手間でできる業務ではありません。
評価制度に対しての運営責任者や担当者を立て、評価制度に注力させることが重要です。
(5)シンプルにする
例えば評価表の項目や評価する箇所が多く、複雑になっている評価制度を見かけることがありますが、これは評価者にも被評価者にも誰にもメリットはありません。何十項目もある評価表をスタッフごとにチェックしていくのは大変な作業です。つい手を抜いて、いい加減な評価をするようでは、人財育成どころではなくなってしまいます。
評価制度で大切なのは、継続して実施するということです。そのためにも限りなくシンプルで、ただし手間を惜しまないように構築していきましょう。
◆フォローアップが大事だ
評価は、評価したら終わりではありません。
評価した項目を、被評価者に伝える評価面談もしくはフォローアップ面談を行うことが必要です。
面談の時間としては一人15分~30分といった時間を確保し、現状のレベルの認識と、次の成長に向けたモチベーションの向上を行う必要があります。
評価面談では評価者のコミュニケーションスキルも求められます。
伝えるべき内容をメモにし、言葉を選び、客観的に伝えることができるように事前準備をしていきましょう。
また、一方的に話すのではなく、被評価者の意見もできるだけ引き出すことができるように話を進めていきましょう。
人財育成の50%は教育で、残りの50%は評価です。
そして人財育成の基本は、「良いところを伸ばす」そして「悪いところを直す」であり、評価はこの2つを直接伝えることができる絶好の機会なのです。
なので私は、「評価制度こそが人財教育の最大の武器である」と考えています。
あなたの企業がまだ評価制度の構築をしていないなら、早急に構築を行ってください。既に評価制度はあるがうまく活用ができていない、という場合は先ほど述べたポイントを見直してみてください。
次回も引き続き、評価制度についてお伝えしたいと思います。
【プロフィール】有本均(ありもと・ひとし)
1956年、愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部入学後、大学1年からマクドナルドでアルバイトを始め、1979年、日本マクドナルド株式会社に入社。店長、スーパーバイザー、統括マネージャーを歴任後、マクドナルドの教育責任者である「ハンバーガー大学」の学長に就任。2003年、株式会社ファーストリテイリングの柳井社長(当時)に招かれ、ユニクロの教育責任者である「ユニクロ大学」の部長に就任。その後、株式会社バーガーキング・ジャパンの代表取締役など、外食・サービス業の代表、役員を歴任する。2012年、ホスピタリティ&グローイング・ジャパンを設立。マクドナルド、ユニクロ等を経験して得た「人財育成のノウハウ」を活かし、世界中のサービス業の発展を目指す。著書に「どんな人でも一流に育つしくみ」。
【マック&ユニクロ流人財育成】は有本均さんが人を上手に育て会社を成長させる人材育成のノウハウを伝える連載コラムです。次回更新は1月29日の予定。アーカイブはこちら。
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