パパ編集部員の育休エブリデイ

(4)コミュニティーの育児支援サービスを活用 人々の温かさも実感

SankeiBiz編集部

 子供が小さいと遠出がおっくうになり、行動範囲がおのずと狭まる。だからこそ、自分や家族を取り巻く周辺環境を把握して、地元コミュニティーで提供される様々な支援サービスを上手に活用することが有意義な育児につながる。今回は私が実際に利用した幼児向け施設の紹介や、日々の体験談をお伝えする。(文・写真 大竹信生)

 当コラムの1回目でも記したが、私は第2子となる長男の誕生をきっかけに、昨年5月から10月末までの半年間にわたり長期育休を取得した。その間、私が住んでいる地域の自治体などが提供する様々なサービスを育児に活用した。とくに利用頻度が高かったのが、娘を遊ばせることのできる幼児向け施設だ。妻は産後3カ月間を生まれたばかりの息子と家で過ごしたため、私は育休の前半を娘と2人だけで過ごすことが多かった。朝から夕方まで2人で出歩き、娘が疲れて眠るまで思いっきり遊ばせるのが私の役割の一つであり、日課だったのだ。

 在園児でなくても利用可能

 私が頻繁に利用したのが、武蔵野市内の認定こども園の中にある子育て支援ルームだった。2歳になる私の長女は待機児童なのだが、この施設は市内在住の0歳~未就学児とその保護者が一緒に遊ぶことができ、専任職員が育児の相談にも乗ってくれる。実際に私も「子供が遊びながらご飯を食べる」「寝かしつけに苦労している」といった育児にありがちな悩みを職員やママさんに何度も聞いてもらい、的確なアドバイスをもらった。都内だと調布市や西東京市などにも同様の施設がある。その他の県でも自治体によっては整備されているので調べてみてほしい。

 ここに来れば大抵のものが揃っているのも便利だった。近所の公園に行けば「この後どこでご飯を食べさせよう…」「オムツを替える場所がない」といった不安がつきものだが、ここならそのような心配もいらない。知育玩具や絵本も豊富だ。また、市内のほとんどの保育園が園庭開放を行っており、うちの娘のように在園児でなくても、整った環境の中で安心して遊ばせることができるのもありがたかった。時間帯によって在園児と一緒に遊ぶこともできるので、待機児童で集団生活の経験がほとんどない娘が月齢の近い子供たちと触れ合い、社会性を育むことができたのも嬉しかった(とはいえ娘は非常にシャイなため、ほかの子供とコミュニケーションを図ることにはやや消極的だったが…)。

 意外とママさんたちと溶け込める

 子育て支援ルームを利用し始めたころは、特に平日は男性利用者が少ないこともあって珍しがられることが多かったのだが、頻繁に通うことで何人かのママさんたちと顔見知りになり、そのうち男女の違いを越えて自然と話ができるようになった。在園児の母親たちは仲のいい者同士でグループを作る傾向があるようだが、子育て支援ルームを利用するママさんたちは施設を不定期に訪問することもあってか、グループや“派閥”などあからさまには存在せず、男性の私でも慣れてしまえば意外と溶け込みやすい環境にあった。職員の方々はいつ遊びに行っても、私の娘を「○○ちゃん、どんどんお父さんに似てきたね!」などと笑顔で迎えてくれた。赤ちゃんが生後3カ月を迎えて外出するようになってからは、家族4人で遊びに行くようになるなど利用頻度がさらに増え、安心・安全な遊び場として重宝した。他にもプレイルームのある市民会館や、児童書が充実した近所の図書館など、とくに雨天時や真夏の猛暑日には積極的に利用した。

 もちろん、近所の公園でもたくさん遊ばせた。娘が「△△公園でブランコがしたい」と言えば、ベビーカーに乗りたがらない娘を抱っこして、片道1時間を歩いてでも連れて行った。公園は出会いの場でもある。たくさんの蚊に襲われ神経質になる私に虫よけスプレーを貸してくれたアメリカ人夫婦とはLINEを交換してその後も遊ぶようになり、文化を超えた育児トークに花を咲かせたりした。平日に男友達と会うことなど滅多にないので、英語トークも含めていい気分転換になったのだ。

 突然、私の娘のことを知っているママさんから「○○ちゃんのお父さんですか?」と話しかけられることも何度かあった。妻のLINEに「きょう、○○ちゃんと遊ぶ旦那さんを見かけたよ!」とママ友からメッセージが来ることもあった。どこで誰が見ているか分からないから、「こりゃ悪いことはできないな!」と本気で思ったものだ。

 有意義な情報交換

 そういえば、娘と2人で街中を歩いているときに、おばあさんから声を掛けられたこともあった。「昔の男性は育児なんてしなかったのよ。子育ては全部、私たち女性がやるものだったの。時代は変わったのね。危ないから子供から目を離さないでね」-。まあ、これは極端な意見だと思うし、いつの時代も育児に積極的な男性はいるだろうが、おそらくこの老女が育児をしていた時代に父と娘が散歩する姿は、稀な光景だったのかもしれない。この女性とはしばらく立ち話をしたのだが、世代の違う方から子育てについて意見をもらえるのは大変貴重な経験だった。

 こんな出来事もあった。近所のとある公園で、近くの住人が「子供の声がうるさい! 通報するぞ」とスマートフォンで動画を撮影しながら保護者を威嚇するケースが何度か発生した。私も知り合いから、「付近をパトロール中の警察官が『あそこのアパートに住んでいる男性には十分気を付けるように』と保護者らに注意喚起していた」との話を聞いた。もちろん私や妻も、その公園をよく利用する友人たちにそのことを伝えた。コミュニティーでのつながりは保安・護身のため、とくに子供や女性など弱者を守るためにも、こういった情報交換は非常に有効だと感じた。

 情報収集のために、市報の「子育て」「教育」「コミュニティー」面などにもよく目を通した。誰でも参加できる子供向けのイベントなど、けっこう楽しそうな行事を市内各地でやっているからだ。私も妻に薦められて、近所のコミュニティーセンターで現役ママさんたちがボランティアで開催していた親子で遊べるイベントに参加した。100人ほどの集会で、男性はなんと私1人。会場の部屋に入った瞬間に少し空気が変わったのを、今でも鮮明に覚えている。

 お遊戯の時間が始まり、司会進行役のママさんたちが振り付けをしながら「♪ら・ら・ら、ぞうきん~」と歌い始めた。「なんだこの歌? 練習もしないでいきなり歌われても誰も分からないんじゃないの?」などと油断していたら、私と娘以外のほぼ全員が、寸分たがわない完璧な振り付けで歌い始めたのには正直びっくりした。

 医療機関やシルバー人材センターも活用

 近所の医療機関にもお世話になった。子供が小さいと、ちょっとしたことで不安になるものだ。妻が通っていたレディースクリニックの助産師さんは、プライベートでわざわざ家まで妻の様子を見に来てくれた。掛かりつけの歯医者では幼児の口内環境の整え方や、子供が嫌がらない正しいブラッシングのやり方、定期的な口内チェックをしてもらうなど、常に気にかけてもらった。いつも大人が診てもらうついでに、娘の診察もしてくれたのだ。こうした親切がとてもありがたかった。また、子供が休日や夜間に急な病気になったときは、迷わず小児救急相談を利用した。ダイヤル「#8000」に架けると、看護師からアドバイスをもらえるのだ。

 もし、日々の育児や家事が忙しすぎてパンクしそうなときは、地域のシルバー人材センターを活用することをお勧めしたい。うちは週2日で「家事援助サービス」を利用し、主に料理や部屋の掃除をお願いした。人手不足が解消されるだけでなく、娘が我が家を担当してくれた方になついたこともあって一緒に遊んでもらうなど、家族全員にとってたくさんのメリットがあった。経験豊富で労働意欲の高いシニアが来てくれるので、料理は手際がよくて美味しく、子供と遊ぶことにも慣れているのだ。価格設定も良心的で、うちの場合は月1万円ちょっとで済んだ。この人には現在も週1回でお願いしており、管理栄養士のスキルを活かしてヘルシーなご飯を作ってくれるので非常に助かっている。シルバー人材センターは全国で事業展開しているので、もし興味があれば「全国シルバー人材センター事業協会」に問い合わせてみてほしい。

 私の家族にとって最も身近なコミュニティーは、同じマンションに住む妻の友人たちだった。医療関係に従事する家族は存在自体が非常に心強いのだが、産前には妻を積極的に遊びに誘ってくれたり、産後も様子を見に来てくれた。同じ階に住む別の家族も、産後の妻と家族のためにご飯を作って持ってきてくれたりした。私のことも気にかけてもらい、外で見かけたときは声をかけてもらうなど、その気持ちがありがたかった。その後もマンション内の知り合いたちで子供向けにハロウィーンのイベントを開くなど、気の合う住人たちと作るコミュニティーは、育児や家事に追われる家族にとってオアシスのように癒しをくれる存在だった。

 育休を経験するまでそれほど地域社会を意識したことはなかったが、そこには社会の縮図のように、私の生活圏にもしっかりと整備されたコミュニティーが存在しており、各々のニーズに合った制度や施設がちゃんとあるのだ。そして、人々は支え合いながら生活しているという事実を、これら経験を通して強く実感したのだった。

 次回は、育休を通して感じた「自分自身と家族の変化と成長」をテーマに書く予定なので、お楽しみに。

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