変わる相続 自筆の遺言書 負担軽減、一部PC作成も
遺産相続に関する改正民法などが昨年成立し、昭和55年以来約40年ぶりに相続をめぐるルールが大きく変更された。今回の改正によって、自分で書く「自筆証書遺言」は作成しやすくなった。相続は、誰にとっても身近な問題。専門家に遺言書作成のポイントを聞いた。(油原聡子)
◇
◆法務局での保管
遺言書とは、亡くなった後の財産処分などについて伝える文書のこと。よく利用されるのが、遺言を残す本人が自筆で書く「自筆証書遺言」と、法律の専門家である公証人が作成し、公証役場で保管される有料の「公正証書遺言」だ。
フジ相続税理士法人(東京都新宿区)の代表社員、高原誠さんは「今回の改正で、自筆証書遺言が作りやすくなった」と話す。
これまで自筆証書遺言は手軽に作れる一方、遺言を残す人が財産目録も含め全文を手書きしなければならず、負担が大きかった。偽造や変造を防止するため、「検認」と呼ばれる家庭裁判所での手続きが必要。自宅保管が多く、隠匿や改竄(かいざん)のおそれもあったという。
しかし、法改正によって財産目録はパソコンでの作成が可能に。銀行通帳のコピーなどの添付も認められた。
新たに、全国にある法務局での自筆証書遺言の保管制度も創設された。平成32年7月から施行される。高原さんは「法務局での保管の場合は検認が必要ない。また、法務局の担当者がチェックするので形式不備も防げるのでは」と話す。
◆もめない内容に
より作成しやすくなった自筆証書遺言。どんな人に向いているのだろうか。高原さんは「60代などで今後、財産の内容や意思が変わる可能性のある人には、自筆証書遺言がおすすめ」と話す。
公正証書遺言の作成には財産規模にもよるが20万円前後の費用がかかる。自筆証書遺言なら、書店でも専用キットが販売されているほか、書き換えも手軽だからだ。
ただし、作成時は内容に配慮が必要。相続サポートを行う「夢相続」(中央区)の曽根恵子代表は「相談者のうち少なくない人がすでにもめている。きょうだいでトラブルになることが多い」と話す。
「家父長制の時代は、『遠慮する』という選択肢もあったが、今は相続人に知識も権利意識もある」と曽根代表。財産の規模は関係ないという。「財産が多いと早くから専門家が入るが、少ない場合は相続人だけで話し合うため、いきなりもめてしまうケースが目立つ」と指摘する。感情面でしこりが残らないように、遺言書はこっそり作らないことが大切だ。
遺産分割で知っておきたいのが「遺留分」。一部の相続人には、法律上最低限の遺産が確保されている。これは、遺言があっても奪うことのできない取り分だ。「遺産分割では遺留分を侵害しないほうが無難だ」と曽根代表。
遺産分割を公平にできない場合は、遺言書に理由を明記しておく。曽根代表は「相続人全員に向けたメッセージは、最良の説得材料になる」。親からの説明があれば納得できる人も多いという。「『もめない』という財産を残すことも大切。元気なうちに遺言書を作ってほしい」
◇
■遺言書作成に「無関心」7割
60歳以上の人のうち、遺言書の作成に無関心な人が7割を超えることが、日本財団の調査で明らかになっている。
調査は平成29年3月にインターネットで実施。20歳から79歳までの男女3097人が回答した。
それによると、60歳以上の2064人に遺言書の準備状況を尋ねると、「作成済み」は4.9%。「作成検討中」は4.1%、「関心あり」は18.3%だった。一方、「無関心」は72.6%だった。
作成していない人に理由を尋ねたところ(複数回答)、最も多かったのが「書くほどの財産を持っていないから」で47.7%、次いで「法定相続分の割合で分けてもらえればいいと思っているから」で20.2%だった。また、「家族がうまく分配してくれると思うから」(19.4%)といった、遺族任せで問題がないと考える人も目立った。
関連記事