人気ユーチューバー、そわんわんさんが観光PR 和歌山
独自に制作した動画をインターネット上に公開して広告収入を得る「You Tuber(ユーチューバー)」。近年では芸能人並みのチャンネル登録者数を誇る人もいて、活躍の場を広げている。そうした中、和歌山県が観光PRのため人気ユーチューバーのそわんわんさん(19)に情報発信を依頼した。そわんわんさんが動画を投稿するや、視聴者からは「行ってみたい」と好意的な反響が続々。ユーチューバーが自治体の観光PRを担う時代がやってきた。(江森梓)
「今から温泉卵をつくります」
昨年12月、和歌山県田辺市の湯の峰温泉の温泉街で、そわんわんさんがカメラに向かって笑顔で話しかけた。網に入れた生卵を熱い源泉につけて、しばらくした後、ゆであがった卵を取り出す。公開されている動画の一場面だ。
地元育ちという縁から、県が観光PRをしてもらおうと観光地をめぐるツアーに無料で招待。県担当者は「10代の若者など、既存のメディアとは違う層にアピールできる」と期待する。
そわんわんさんが初めて動画投稿サイト・ユーチューブに投稿したのは、フリーターだった約2年前。思いついたことをカメラの前で話していたが、約半年後、かわいくなるメークテクニックを投稿したところ、登録者数が急増し、再生回数は200万回に。「ありのままの自分らしさがうけたんだと思う」。次第にユーチューブの広告収入がバイト代の数倍となり、ユーチューバーとなることを決めた。
登録者数が10万人を超えれば成功とされている中、そわんわんさんは約27万人。取り上げる題材はファッションやグルメ、恋愛話とさまざまで、日常のことを友達に聞いてもらう感覚で話す。
タレントになるという希望を持つが、その前に狙うは県観光大使。「和歌山は人が温かく、心を穏やかにしてくれる場所。もっと和歌山の魅力を発信していきたい」と意気込んでいる。
訪日客向け 外国人に依頼
観光PRにユーチューバーを起用する自治体は増えている。昨年10月、人気ユーチューバーのあやなんさんを観光大使に任命したのは北九州市。あやなんさんによる市のグルメや街並み紹介の動画2本を公開し、これまでに計約200万回再生された。市担当者は「自治体が作ったPR動画では、数万回あればいい方。かなり反響がある」と手応えを感じている。
福島県会津若松市ではインバウンド(訪日外国人客)を見すえ、平成28年度からカナダやタイなど外国人の人気ユーチューバーに動画制作を依頼。観光情報のほかに、温泉の入り方や鉄道の乗り方などを母国語で紹介している。「動画は訪日客が旅行の情報収集をするための有力コンテンツ。それぞれの国の人の目線の情報発信が必要となってくる」と担当者は語る。
両市とも仲介業者に動画制作委託料を支払っているが、費用を上回る効果があるという。
観光庁の訪日客向けの調査では、旅行前に役立った情報として動画サイトを選ぶ人は増加傾向で、29年は8・4%。インターネット関連の分野を専門とするシンクタンク「You Tube総研」は「動画は手軽で更新しやすく、鮮度の高い情報を得られるというメリットもある。今後は質の向上や多言語対応が求められる」としている。
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