【マック&ユニクロ流人財育成】人財教育の最大の武器、人事評価制度 (2)パート・アルバイト評価の重要性

 
※画像はイメージです(Getty Images)

 教育・評価は正社員だけではなくパートやアルバイト(以下PA)等、非正規社員に対しても必要です。

 頑張って働いているにも関わらず時給があがらない、褒められない、というのはやりがいを失い、モチベーションの低下、そして離職に繋がっていきます。

 今回は、PA評価のポイントについてお伝えしていきます。

時給アップはモチベーションに大きく影響する

(1)項目の決め方

 評価項目については、会社・お店としてやってほしい事を書き出し、優先順位が高い順番に設定します。

 例えばスキル系であれば、レジができる、勤務態度等の接客系であれば、あいさつができる等です。

 ここでポイントとなるのが“項目は増やさない”ということです。項目が増えれば増えるほど評価に時間がかかります。多くて10項目程度が良いでしょう。

 また、時給のアップはモチベーションに大きく影響します。

 評価の度に時給を上げる必要はなく、各店舗の人件費予算の中での時給アップで問題ありません。時給に対しての制度があるということを示すことが重要です。

 マクドナルドでは、店の人件費に収まればPAの時給アップは店長の権限で行うことができました。

 そのことから、90年代半ばに時給の上げ幅を10円から5円にしたいという意見が店長たちから出てきたことがありました。上げ幅自体は小幅になりますが、時給アップはやりやすくなります。

 店舗が増え続けていた時代、人件費予算が限られている中で、頑張っているPAに対して時給のアップという手段も使用し、評価をしたいという意見です。それだけ、マクドナルドでは時給評価を大切にしてきたのです。

 何を達成したら評価や時給が上がるのか、この段階で明確にしておきましょう。

マックやユニクロでは3カ月に1回評価していた

(2)目標の面談

 設定した目標を、本人に伝えましょう。

 内容や目的をしっかり伝えることにより期間内での目標が明確になり、成長意欲を引き出すことができます。

 その際、本人が設定された目標に納得をしていない場合は強引に進めるのではなく、本人の能力に見合った内容になっているのかを確認する等、合意を取ることができるまで十分に話をしましょう。

(3)日常的にメモを取る

 評価をつける際、どうしても直近の状況に目がいきがちになりますが、期間内での行動や態度全てを考慮し、評価をつけなければなりません。

 そのため、日常的に本人の態度・行動等をメモに取ることが良いでしょう。

 特に褒めるべきポイントが重要です。注意すべきポイントというのは比較的覚えていますが、モチベーションを上げるために必要な、褒めるポイントはどうしても忘れがちです。

 このメモは後ほどお伝えする評価面談でも活用することができます。

(4)評価のタイミング

 社員の評価制度であれば半期に1回のペースで実施している企業が多くあると思いますが、PAの場合は3カ月に1回が理想です。

 数が多く、評価者にとって負担がかかるように思いますが、PAは社員よりも勤務期間が短い方もいるため、半年に1回では評価が無いまま終わってしまう可能性もあります。

 ちなみにマクドナルドやユニクロでも、評価は3カ月に1回実施していました。

ネガティブな点ばかり指摘しない

(5)面談の実施

 評価はただ評価表をつけるだけで終わりではなく、その評価表をもとに一対一の面談で相手に評価を伝えることが重要です。

 面談を行うことにより現状の認識と、次の目標達成に向けてモチベーションをアップさせることで、育成に繋がっていきます。

 面談の時間は1名につき15分~30分程度が良いでしょう。ただ、この時間を一人一人に実施すると、評価者である店長の負担が大きくなります。

 もしPAの人数が多い店舗であれば、チーム化して、そのリーダーに権限を委譲することも一つの手段です。

 また、評価面談ではコミュニケーションスキルが必要であり、発言や内容に注意しなければなりません。

 評価面談の際にありがちなのが、駄目な点を店長が一方的に指摘して終わってしまうことです。ネガティブなことばかり言われては、モチベーションも上がるはずがありません。

 褒めるポイントと注意するポイントの両方を伝え、相手に考えさせ、自分のことを話してもらうのが上手な面談です。そうすることでPAも納得し、モチベーションも高くなるでしょう。

 今回はPA評価についてお伝えしましたが、基本的なスタンスは社員評価と変わりはありません。

 ただ、社員評価は評価の期間や項目などが、PAよりも細かくなります。

 次回は社員評価について、お伝えします。

【プロフィール】有本均(ありもと・ひとし)

株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパン社長
1956年、愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部入学後、大学1年からマクドナルドでアルバイトを始め、1979年、日本マクドナルド株式会社に入社。店長、スーパーバイザー、統括マネージャーを歴任後、マクドナルドの教育責任者である「ハンバーガー大学」の学長に就任。2003年、株式会社ファーストリテイリングの柳井社長(当時)に招かれ、ユニクロの教育責任者である「ユニクロ大学」の部長に就任。その後、株式会社バーガーキング・ジャパンの代表取締役など、外食・サービス業の代表、役員を歴任する。2012年、ホスピタリティ&グローイング・ジャパンを設立。マクドナルド、ユニクロ等を経験して得た「人財育成のノウハウ」を活かし、世界中のサービス業の発展を目指す。著書に「どんな人でも一流に育つしくみ」。

【マック&ユニクロ流人財育成】は有本均さんが人を上手に育て会社を成長させる人材育成のノウハウを伝える連載コラムです。次回更新は2月12日の予定。アーカイブはこちら