【お金で損する人・得する人】iDeCoで損する人はあなたかもしれない 本当に「メリット」ありますか?
人生100年時代―。老後の生活資金が公的資金でまかない切れない状況が想定される中、「iDeCo(イデコ)」などの私的年金が注目を集めています。(ファイナンシャルプランナー・高橋成壽)
iDeCoってなに?
といっても、iDeCoと聞いてピンと来る人は、金融や税制に詳しい人や興味のある人だけかもしれません。
iDeCoは個人型確定拠出年金制度の愛称(※英語表記の略称)で、老後の生活資金準備として活用が期待される投資の仕組みです。
私的年金には、iDeCoのように個人が任意で加入する「個人型」と、企業の退職金制度である「企業型」があります。
また、「確定拠出年金」は決まった掛金を定期的に積み立て、受け取る年金額は運用成果で変動する年金制度です。これに対し「確定給付年金」は文字通り給付される金額が最初から確定しているのが特徴です。
iDeCoは、具体的には、投資信託や預金、保険などを中心に積立投資を続けていくことで、ドルコスト平均法を活用しながら資産形成を図ることになります。
積立可能額は、公務員が月額1.2万円(年額14.4万円)、自営業者は月額6.8万円(国民年金基金などと合計で年額81.6万円)となります。
会社員は少し複雑で勤務先の年金制度により異なります。たとえば勤務先に確定給付型年金がなく、企業型確定拠出年金に加入している人は月額2万円(年額24万円)が上限。勤務先に確定給付型年金も企業型確定拠出年金もない場合は月額2.3万円(年額27.6万円)です。
iDeCoの「メリット」
iDeCoの特徴は3点あります。(1)掛金の所得控除、(2)運用益の非課税、(3)受取時の税制優遇です。
(1)掛金を所得控除の対象にできる
一年間の投資額を所得控除の対象とすることができます。毎月2万円を12カ月積み立てた場合、年間の投資額が24万円になります。iDeCoを通じて24万円積み立てると、その年(1月1日~12月31日)の収入からiDeCoへの積立額(拠出額)分の収入を減らして所得税や住民税を計算する決まりになっています。
年収400万円の人が、iDeCoで年間24万円投資すると、その年の収入は376万円であったとして(所得控除)、所得税と住民税の金額を計算します。つまり、24万円分の収入がなかったものとして、税金を計算するのです。
所得税率が10%、住民税率が10%の場合は、所得控除額24万円×20%(所得税率10%+住民税率10%)=4.8万円が所得控除の結果として得られる節税効果となります。お気づきの人もいらっしゃると思いますが、所得税率が高いほうががメリットも大きいです。
(2)利益への課税がない
通常、株式や投資信託をはじめとして、預金の利息であっても、運用で利益が出た場合は20%の税金を納税することになります。(※復興特別所得税を考慮していません。)一方、iDeCoは、iDeCoを通じて購入した投資信託を売買し利益が出たとしても、iDeCoから資金を受け取るタイミングにならなければ課税されることはありません。
この結果、利益を納税という形で減らすことなく、出た利益をそのまま運用することができます。
(3)受け取るときに税制優遇がある
最終的にiDeCoから資金を受け取るときも、税制優遇があります。一括でまとめて資金を受け取るときには退職所得控除、年金として、分割して受け取るときは公的年金等控除として…と、受け取り方に応じて所得控除が用意されています。
実際に資金を受け取る際は、受け取る際の収入の多寡によって税率が変わりますので、受け取り方法は、慎重に検討する必要があります。
“おいしい話”ばかりではない iDeCoには費用も
税金が少なくなると、個人にとってはメリットがあるように感じられるでしょう。ただし注意点もあります。iDeCoを活用する期間中、所定の費用がかかります。
iDeCoに加入する時にかかる費用として2,777円の手数料がかかります。また積立期間中は毎月167円~数百万円(金融機関で異なる)、積み立てない場合も毎月64円の手数料がかかります。毎月積み立てる場合は、少なくとも年間2004円の手数料が必要です。
この金額が多いか少ないかは別として、無料ではないということを覚えておくと良いでしょう。年間2,000円が40年間必要な場合、8万円の手数料が発生します。
このほかに、投資信託を購入する場合は、保有期間を通じて信託報酬という運用手数料が自動的に投資信託の中で差し引かれます。
確定拠出年金の運用商品には大きく分けて▼元本確保型(預金、保険)と▼元本変動型(投資信託)があります。運用商品選びは自分がリスクがどれだけ許容できるかに左右されますし、元本変動型と元本確保型を組み合わせることもできるので、金融機関などで相談するといいでしょう。
節税目的の人は要注意
iDeCoの盲点として今回とくに強調したいのは、期待した節税効果の得られない人がいるということです。
節税効果のある仕組みは、iDeCo以外にも、住宅ローン控除、生命保険料控除、小規模企業共済、ふるさと納税、国民年金基金など複数あります。iDeCoに加入する前に、自分の税金額を確認しましょう。iDeCoの加入効果があるのか? 節税メリットはあるのか?
iDeCoに加入すべきでないのはどんな人?
iDeCo加入で得られるメリットを想定して、どんな人が加入すべきか、あるいは加入すべきでないかを例に挙げてみます。
【1】いま加入する必要のない人
収入がない人や、年収が100万円未満など所得税も住民税も課税されていない人には、節税効果がありません。パート収入でiDeCoに加入を検討されている人がいますが、効果がないばかりか、手数料がかかりますので、積立NISAなど他の投資の枠組みを検討されるとよいでしょう。
マイホームをお持ちの人で、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受けている人は、ご自身の納税額を確認してください。源泉徴収票の右上の納税額が0円の場合は、iDeCoに加入しても所得税の減税効果はありません。減税効果は住民税分だけでしょう。
【2】これから加入効果が減少する人
iDeCoに加入中の人もいらっしゃるでしょうから、気を付けていただきたいのはこれから収入がなくなる人、少なくなる人、家を買う人です。
例えば、出産に伴い、産休、育休を取得する場合、休業期間中に収入が減って、年収自体が低くなります。すると一時的にiDeCoの節税メリットがなくなったり、大きく減ったりするでしょう。効果の半減している間にも、iDeCoの手数料は発生します。
転職で収入が下がる人、介護などで離職される人も要注意です。収入が下がって、iDeCoへの投資どころではなくなった場合でも、口座は生きていますので手数料は発生します。介護で仕事をやめるかどうかは事前に予想できませんが、離職するとiDeCoの節税効果はないか、わずかとなるでしょう。
マイホームを購入予定の人で、ご自分で住宅ローンを借り、かつ住宅ローン控除の適用対象物件に住む人は、住宅ローン控除で所得税が全額ないし一定額免除されますので、iDeCoの効果は限定的になります。
【3】加入したほうがいい人
ではiDeCoを始めたほうがいい人はいるのでしょうか。上記【1】【2】の可能性のない人がiDeCoを始めるべき人です。
つまり、以下の条件が当てはまる人です。
・産休、育休を取得しない ・転職の可能性はなく、収入が下がる懸念がない ・マイホームの購入予定がない ・マイホームの購入予定はあるが住宅ローン控除の適用物件ではない ・住宅ローン控除の適用期間が終了している ・住宅ローン支払いを終えている ・介護離職の懸念がない人
【4】収入減が見込まれてもiDeCoに加入したほうがいい人
年収の高い人で、貯蓄がどんどん増えている人は、iDeCoに加入するといいでしょう。貯蓄が増えているということは、収入の減少に対してもiDeCoへの投資余力があるということです。
所得税率は0%(非課税)、5%、10%、20%、23%、33%、40%、45%の8段階です。適用税率の高い人は、同じ投資額でも税率の低い人より節税効果が高くなります。
【5】節税以外で加入に気を付けたほうがいい人
子育てに関する資金が必要になりそうな人、定年までに住宅ローンの繰り上げ返済に精を出したい人など、将来的にiDeCoの資金を引き出さないとお金が回らない可能性のある人は、中途解約ができないというiDeCoの特徴をしっかりと理解する必要があります。
将来お金が必要になりそうかわからないと考える人もいらっしゃるでしょう。将来の家計がどうなりそうかは、私のようなファイナンシャルプランナー資格をもって、家計相談を生業にしている専門家に相談すれば、スムーズに将来の資金不足がわかります。
◇◇◇
いいことばかりに見えるiDeCoですが、色々な留意点があります。時代の流れに逆らうようですが、じっくり検討してから加入してください。
【プロフィール】高橋成壽(たかはし・なるひさ)
寿FPコンサルティング株式会社代表取締役
1978年生まれ。神奈川県出身。福沢諭吉にあこがれ中学より慶応義塾に入学。同大学総合政策学部卒。金融業界での実務経験を経て2007年にFP会社を設立。顧客は上場企業の経営者からシングルマザーまで幅広い。保険、ヘッジファンド、住宅ローン、専門家ネットワークを活用して、お金に困らない仕組みづくりとお客様にとって豊かな人生設計の提供に励んでいる。著書「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)。無料のFP相談を提供する「ライフプランの窓口」では事務局を務め、全国から、ライフイベントに伴うマネー相談を依頼されている。業界では「FP王子」と呼ばれ、FPの力で日本の抱える社会課題を解決すべく情報発信を続けている。キッズマネースクール横浜を主催し講師活動を行っている。
【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。
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