【高論卓説】小中学校スマホ持ち込み禁止の見直し 教育環境変化、認識する機会に
先日、柴山昌彦文部科学大臣が、小中学校へのスマートフォンの持ち込みを禁止する現行の通達を見直す方向と表明した。現在の社会状況では妥当な判断であったと評価する。中学生以下の子供のスマホ所持や使用には賛否がある。私自身も、小学生は、位置情報と限定された通信が可能であれば十分だと思うが、キッズ用端末の種類に限りがあり、スマホにせざるを得ないという実態もある。(ジャーナリスト・細川珠生)
年齢層によっても、スマホに対する認識は違うが、「たかだかスマホ」と考えず、技術の進歩による子供を取り巻く環境の変化の一つの象徴として、この問題を考えた方がよい。親が、大人が、何を子供に教えていくのか、技術の進歩にかかわらず、人間社会で何が大事かを改めて考える機会にすべきである。
今の私たちの生活は、もはやスマホなくしてあり得ない。少なくともインターネット環境は不可欠のものとなっている。一方、懸念材料は山ほどあり、特に、子供の場合は、いじめの温床となっている事実もある。しかし、私などスマホを決して使いこなせているわけではない「オールド」世代であっても、必需品のようになってしまっている。それはかつて、主婦の生活を大きく変えたと言われている「家電三種の神器」が普及したことと同じではないかと想像するのだ。
もちろん、家電でも同じだが、なければないで同じ目的を果たすために知恵を絞る。スマホがなかったころも、それはそれで生活は成り立っていた。しかし、今はもう現実として存在し、これから、よりスマホを活用する社会を作ろうとしている。その中で、子供からは避けようとするだけでは、むしろ所持にも使用にも縛りがなくなったときに、かえって危険だ。泳ぎ方を教えずに、海に投げ込むのと同じではないかと思う。
わが家でも2年前、長男が中学に進学するのを機に、スマホを買い与えた。同時に、わが家でのルールを子供自身に考えさせた。それは(1)自室への持ち込み禁止(2)自宅での使用は1日30分まで(3)課金禁止(4)パスワードは親に知らせる(5)以上のことが守れなかったときは没収-などである。
既に部活の連絡用として無料通信アプリのLINE(ライン)が普及しており、この使用を認めるかどうかは、私もすぐに判断できなかった。ラインの中で繰り広げられる、12歳の子供たちの世界に立ち入れなくなるのは、正直不安であった。そこで、ひとまずは1学期の間、スマホをきちんとルールを守って使えるかどうかをみた。最終的に夏休みの後半にラインの使用を許可した。
夏休みの間に使用を開始したのは、親が一緒にいられる期間に、きちんと監視しようと思ったからである。学校が既に「ライン前提」となっていることにも戸惑ったが、これが子供の置かれている社会の現実であるのだ。
スマホも携帯電話も、ゲーム端末もない時代に育った世代にとって、小中学生のスマホ所持に抵抗があるのは当然のことである。友人関係だけでなく、学力においてもスマホの弊害は確実にある。だからこそ、その長短をきちんと教え、どう使うのかということを、子供任せにせず、親が主導権を持って子供に理解させることが重要であるのだ。
今回の通達の見直しは、特に災害時を想定してのようだが、変わらざるを得ない子供の教育環境が、現実のあらゆるところにあることを認識する機会となってもらいたい。
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【プロフィル】細川珠生
ほそかわ・たまお ジャーナリスト。元東京都品川区教育委員会教育委員長。テレビ・ラジオ・雑誌でも活躍。千葉工業大理事。1児の母。父親は政治評論家の故細川隆一郎氏。
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