引っ越し難民、今年も発生? 手間省く新サービスも続々登場

 
3~4月の平均引っ越し額

 転勤や進学のために転居したくても、希望通りにできない「引っ越し難民」。業者の人手不足は深刻で、昨年に続き、引っ越し難民の発生が懸念されている。一方で、ウェブ上で予約が完結できたり、トラックをシェアしたりといった新たなサービスも生まれている。(油原聡子)

 引っ越し業界の繁忙期となる3~4月。近年は、運転手、作業員の不足に加え、事業者が働き方改革に取り組み、受け入れ件数を抑制する傾向にあった。引っ越し大手の担当者は「作業員や車両の集まりにくさが年々加速している印象。スタッフの時給も上昇している」と明かす。さらに今年は、大手のヤマトホールディングス子会社が、不祥事を受けて現在事業を停止していることも懸念材料となっている。

 国土交通省や全日本トラック協会は、引っ越し時期の分散を呼びかけ、混雑日の予想を発表。石井啓一国交相は2月26日の記者会見で、国交省の今春の人事異動では繁忙期を避け、4月の2週目以降の転居を検討するよう職員に周知することを明らかにした。

 料金は上昇見込み

 引っ越し各社も対応を進めている。

 大手の「アートコーポレーション」(大阪市)は、駅近くに作業員採用の拠点を設けるなど人員確保に取り組み、3~4月の取扱件数は前年同期に比べ5%ほど増やす予定だ。ただ、今年は1月中に春の引っ越し予約が増えるなど、動きが早期化しているという。

 引っ越し料金も上昇しそうだ。見積もりサイトを運営する「エイチーム引越し侍」(名古屋市)が、昨年12月~今年1月に提携会社135社を対象にしたアンケートでは、今春の引っ越し単価について「上昇する」との回答が半数以上を占めた。このうち、10~20%の単価上昇見込みとの回答が7割を超えている。同社の試算では今年の繁忙期、前年比110%の場合は単身で9万5917円、家族で17万905円に、同120%だと単身で10万4636円、家族で18万6442円になるという。

 訪問見積もりなし

 ほとんどの引っ越しで必要となる訪問見積もりや、電話でのやりとり…。その手間を省く新たなサービスも始まった。

 見積もりサイトを運営する「グライド」(東京都新宿区)は1月から単身者向けに、現在の住居などの基本情報と、運んでほしい荷物の写真を送信するだけで見積もりができるサービス「Hi!MOVE(ハイムーブ)」をスタートした。東京近辺や大阪市など一部地域が対象。中小の引っ越し業者11社と提携し、トラックをシェアするため、相場よりも3~4割ほど安く引っ越しができる。

 見積もり時には電話番号などの登録がないのも特徴。申し込み後に担当者から電話で荷物の確認が行われるため、申告ミスも防げるという。

 アップル引越センターは2月から、ウェブ上で引っ越し予約が完了するサービス「ラクニコス」の対象範囲を家族向けにまで拡大した。利用者は、住所や引っ越し希望日のほか、サーフボードやピアノなどの特殊な荷物、段ボール追加などのオプション情報を入力すると金額が表示され、予約できる。

 運営会社によると、過去の100万件以上の見積もりデータを元に金額を算出しているという。担当者は「広さによってだいたいの荷物量は把握できる。会社もお客さまも、訪問見積もりにかかる時間を削減できます」と話している。

 上手な引っ越しのポイントは?

 引っ越しのときに知っておきたいポイントを、住宅情報サイト「SUUMO(スーモ)」の田辺貴久副編集長に聞いた。

 見積もりサイトに登録すると、すぐに複数の業者から電話がかかってくるのが一般的。間取りや荷物の量など聞かれることは同じなので事前にまとめておく。田辺副編集長は「曜日や時間帯など譲歩できる条件も決めておくとスムーズです」とアドバイスする。電話攻勢を避けたいなら、連絡先を登録せずに見積もりできるサービスもある。

 繁忙期には引っ越し金額も高くなる。田辺副編集長は「費用を抑えるなら、新居に持ち込まないものを処分してから見積もるのがおすすめ」と話している。