【お金で損する人・得する人】副業したら住宅ローンを組めなくなった! 確定申告が済んでしまえば後の祭り

 
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 こんにちは、ファイナンシャルプランナーの高橋成壽です。2018年は「副業元年」といわれています。政府は副業を推進し、企業のあいだでも従業員に副業を認める動きが広がっています。そうした風潮の中、あるサラリーマンから、「副業を頑張りすぎて住宅ローンが組めなくなった」という相談を受けました。本業として会社に勤務しながら、新たな収入源としてビジネスを立ち上げ、新しいビジネスによる収入の目途が立つまでそのビジネスを副業として営業している人です。

 マイホームを現金で買う人は少ないでしょう。ほとんどの人が住宅ローンを借りることになります。ところが、その住宅ローンを組もうとしたときに、副業による収入が仇となり、ローンの審査にひっかかる可能性があるのです。どういうことなのでしょうか。

「収入」がモノをいう住宅ローン審査

 サラリーマン(会社員や公務員)の住宅ローン審査の場合、毎年末あるいは年始に勤務先から配布される源泉徴収票を金融機関に提出します。この書類は、収入を示す書類の1つで勤務先が発行することから、数字の信ぴょう性が高いのが特徴です。

 金融機関は収入をもとに、住宅ローンを貸した場合を考えます。

 年間返済額を借入期間と所定の金利(金融機関による)で計算します。住宅ローンの年間返済額を年収(額面)で割り100をかけると、返済比率といって収入に対する返済額の割合がパーセントで表せます。たとえば、国の住宅ローンともよばれるフラット35の審査では、返済比率が年収の30%あるいは35%(年収による)であれば返済額に関する審査は基準をクリアします。(※他にも審査項目があります。)基準値内であれば借り入れに問題はありませんので、住宅ローンを借りることができます。

収入不安定 個人事業主の住宅ローン審査は厳格

 副業でも、本格的に働きたい人は開業届を国に提出して「個人事業主」となります。個人事業主とは、その仕事が本業か副業かは関係なく「個人」で「事業」を行っている人のことです。個人事業主の住宅ローン審査は少し複雑です。

 個人事業主の場合、毎年所得税の確定申告を実施することで、1年間の所得と税額が確定します。その際、個人事業の経営に関する資料を提出します。個人事業主はサラリーマンなどと異なり、毎月の収入が一定していません。ですから、今後の収入見通しが立てにくくなります。

 金融機関にとっては、収入の見通しが立たなければ住宅ローンを貸すことができません。住宅ローンの返済が滞ってしまえば、金融機関にとっては損失になるからです。従って、必然的に審査が厳しくなります。提出する書類については、過去2~3年分の確定申告書が必要となります。

副業の所得の種類と確定申告の有無

 開業届けの提出の有無にかかわらず、個人事業主の所得は「雑所得」または「事業所得」に分けられます。

・雑所得

給与所得や事業所得といったその他の所得に該当しない所得

・事業所得

事業を営んでいる人が、その事業から得ている所得

(事業=独立・継続・反復して行われる仕事)

 雑所得も事業所得も、収入から必要経費を引いて計算できる点では同じですが、この事業所得と雑所得に「いくらを超えたら雑所得ではなく事業所得」といった明確な基準は設けられていません。

 雑所得の場合は、収入から経費を差し引いた雑所得が20万円以下であれば確定申告する必要はありません。極端なことをいえば、100万円の収入があっても、80万円の経費がかかっているのであれば所得は20万円なので申告の必要はないのです。さらに雑所得には決算書の作成・提出などの必要性がないので、事業所得ほど確定申告の際の手間がかからないというメリットもあります。

 従って、サラリーマンなどの給与所得者が、退勤後の時間や休日を利用して、小遣い稼ぎ程度の収入を得る場合には雑所得として計上しておくのがよいでしょう。

事業所得には「損益通算」という大きなメリットが

 しかし副業でも、将来的に事業展開したい場合などには、事業所得として申告するほうが良いでしょう。事業所得の場合は開業時に青色申告承認申請書を提出することで、「損益通算」という制度を利用できるからです。

 損益通算とは、事業所得が赤字の場合、他の所得の黒字と相殺できたり、赤字を翌年以降に繰り越しできる(=次年度以降の黒字と相殺でき、納税額が減少する)という制度で、節税メリットがあるのです。例えば、副業の事業所得に100万円の赤字が出た場合、本業の給与所得から100万円控除できるのです。

 つまり、節税という観点では、雑所得ではなく事業所得として確定申告するほうが有利といえます。

個人事業主が「節税」を意識する理由

 サラリーマンの場合、所得税が差し引かれて毎月の給与や賞与が振り込まれます。これを源泉徴収といい、一般的には多めに引かれることになります。差し引かれた所得税は、本業の勤務先を通じて国に納められます。手続きとしてはこれで納税が完了するのですが、通常は年末調整という手続きで、年間の所得を確定させ払い過ぎた所得税を払い戻されたり、不足している場合は追加で支払ったりします。

 個人事業主の場合は、原稿執筆や読者モデルをした場合は約10%の源泉徴収が行われたのち雇い主から報酬として支払われます。

 また物販などの場合は、売り上げに相当する金額が源泉徴収なく支払われます。この結果、毎年確定申告を行うタイミングで納税します。

 給与から税金が天引きされるサラリーマンと異なり、個人事業主は後から税金を支払うことになります。先取りと後払いでは税金を支払った感覚がまるで異なります。すると個人事業主は、仕事を通じて税金を抑えることを考えるようになる、すなわち節税を考えるようになるのです。

まさか! 副業収入が住宅ローン審査に悪影響

 個人事業主の場合は、営業活動や営業活動のための設備投資や研修受講があるため赤字になることもあります。事業開始当初はなおさら出費がかさみます。サラリーマンを続けながらの場合、損益通算で給与所得から控除を受けることもできますが、給与所得と事業所得を合算した全体収入が下がることを意味します。すると、住宅ローンを貸し出す金融機関は、収入の低い人に住宅ローンを貸すかどうかという判断になるのです。

 返済が難しいとみなされれば住宅ローンの審査は通りません。たとえ一時的に損益通算目当てで経費計上するなど節税行為をやめたとしても、過去2~3年分の所得を確認されますから、トータルで所得の高低を判断されてしまいます。結果として住宅ローンの審査に落ちて、家が買えなくなるのです。

赤字で確定申告 節税が仇に

 副業の売上が経費などの支出を上回り黒字の状況であれば、住宅ローン審査においてもプラスに作用する可能性はありますが、副業自体を赤字として確定申告する場合、源泉徴収された所得税は戻ってくるのですが、公的な資料を求められた場合の収入は下がるのです。

 結果として、会社員や公務員としての年収は住宅ローン審査上問題ないが、副業を含めると年収が低いものとして計算せざるを得ず、副業が無ければ当然借りられたはずの住宅ローンに落ちたり、借り入れ額の上限が定められるなどします。

住宅ローン難民化 どう回避する?

 確定申告前に気が付けば、副業の経費を申告しないという方法が選択できますが、確定申告が済んでしまえば後の祭り。実務的には確定申告の修正をすることもできますが、金融機関はなぜ修正したのかなどをチェックしますので、審査は修正前と変わらないか、むしろ怪しい行為をする人とみなされて、収入ではなく人物評価で審査を落とされるかもしれません。

 これから副業を積極的にスタートされる人もいるでしょう。しかし、国が力を入れようと、勤務先が副業を承認していようと、住宅ローン審査は別の視点で考える必要があります。

 間もなく確定申告の期限が到来しますが、くれぐれも住宅ローン難民にならないようお気を付けください。なお、この問題は住宅ローンの借り換えの際にも発生しますので、既に家をお持ちの方も対象となることをご留意ください。

【プロフィール】高橋成壽(たかはし・なるひさ)

ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
寿FPコンサルティング株式会社代表取締役

1978年生まれ。神奈川県出身。福沢諭吉にあこがれ中学より慶応義塾に入学。同大学総合政策学部卒。金融業界での実務経験を経て2007年にFP会社を設立。顧客は上場企業の経営者からシングルマザーまで幅広い。保険、ヘッジファンド、住宅ローン、専門家ネットワークを活用して、お金に困らない仕組みづくりとお客様にとって豊かな人生設計の提供に励んでいる。著書「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)。無料のFP相談を提供する「ライフプランの窓口」では事務局を務め、全国から、ライフイベントに伴うマネー相談を依頼されている。業界では「FP王子」と呼ばれ、FPの力で日本の抱える社会課題を解決すべく情報発信を続けている。キッズマネースクール横浜を主催し講師活動を行っている。

【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。毎月第2・第4水曜日掲載。

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