広がる外国人の家事代行サービス 短い在留期間がネックだが…

 
フィリピン人の家事代行サービスは「日本人と遜色ない」と好評だ=東京都中央区(植木裕香子撮影)

 永住権を持たない外国人による家事代行サービスが都内で広がっている。国家戦略特区の規制緩和が背景にあり、日本人と変わらない丁寧な仕事ぶりに利用客のニーズが高まる一方で、短い在留期間が足かせとなって採用が進まないなど、本格普及に向けた課題は多い。人口減に伴う人材確保が急がれるなか、事業者からは抜本的な措置を講じる必要性を指摘する声が上がっている。(植木裕香子、写真も)

 「治安がよく、労働環境が整っているあこがれの日本で働きたくて来ました」。フィリピン人女性のオレダン・ローレンパズさん(25)は家事代行大手「ベアーズ」(中央区)に採用され、昨年12月に来日した。

 ロイター通信などによると、フィリピン人家政婦をめぐっては昨年2月に、クウェートの住宅で、虐待の痕跡があった遺体が冷凍庫の中から発見される事件が発生するなど、外国での出稼ぎ労働者をめぐる虐待事件が続出。だが、家政婦として日本で働くことを決めたローレンパズさんは「日本人の雇用主は私たちを一人の人間として優しく扱ってくれる。他国より日本で働きたいと考えるフィリピン人は多い」と話す。

 実際、パソナグループ(千代田区)傘下のパソナ総合研究所が昨年11月、日本で家事支援業に携わるフィリピン人女性166人に調査したところ、「サービス利用者との関係は良好か」「また日本で働きたいか」との質問に、9割以上が「はい」と回答した。

 一方、外国人家事代行サービスを利用する日本人の姿も目立ち始めている。

 会社員の夫と小学生の子供2人を育てる中央区のパート従業員、西村沙織さん(35)は4年前、友人の紹介で家事代行サービスの利用を開始。外国人の家事代行サービスについて「日本人と遜色ない。こちらがうまく英語で要望を伝えきれなくても、笑顔で仕事をしてくれるので気持ちがいいし、安心できる」と好評価。ベアーズの高橋ゆき副社長(49)も「実際に利用した消費者の口コミが広がり、問い合わせが増えている」と話す。

 永住権を保有しない外国人の家事代行サービスをめぐっては政府が平成27年、国家戦略特区を活用する形で解禁。特区には東京や大阪など6地域が名乗りをあげ、同社など計6社が事業認定を受け、サービスを開始している。

 需要も供給も高まりを見せる外国人による家事代行サービスだが、在留期間最長3年という短さが足かせとなっている。「文化や生活習慣の違いになれてきたころに帰国する」(同社)状況で、長期間働きたい外国人や、外国人材の安定的受け入れを望む企業にとって使いづらいのが実情。現状を踏まえた都は昨年8月、国に対し在留期間を最長5年に拡大するよう提案している。

 高橋副社長は「国には柔軟な対応を求めていきたい。ただ、そのためには、仕事や育児などで忙しい女性が家事を他人に任せることへの社会の理解を広げ、家事代行サービスが受けやすい環境を整備し、新たなニーズを掘り起こす必要もある」と指摘した。