【WOMEN】G20に向け女性リーダー「自分の価値に気付いて」
6月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)に向けて、2~3月、国際的な企業や組織で活躍する女性リーダー3人が相次いで大阪を訪れ、講演した。うち2人が共同代表と運営委員を務める国際的な民間団体「W20」は23日、G20の首脳に対し、労働市場やデジタル、金融などの分野での男女平等に向けて行動することを求める政策提言を安倍晋三首相に手渡した。3人がG20を前に発信したメッセージとは-。
今月1日に大阪市内のホテルで講演したのは、「女性初の経団連役員」「米フォーチュン誌が選出する『世界の偉大なリーダー50』で唯一の日本人(2017年)」など華やかな経歴を持つ英通信会社の日本法人「BTジャパン」元会長の吉田晴乃さん。長女の結婚を機に昨年8月、同社と経団連を退き、その後、英オックスフォード大大学院で、世界約30カ国の企業幹部らと経営学の研究を続けている。W20の共同代表でもある。
日米英など4カ国5社のICT企業で働いてきた吉田さんは、W20について「世界で一番大きな女性の組織で、23億人の女性をカバーしている」と説明。20カ国の主張をまとめる難しさを語った上で、「お金が国際社会で唯一の共通の手形」と話し、経済を活性化させることの重要性を強調した。
吉田さんは現在、オックスフォード大での研究テーマの一つとして、働く女性の増加によって生まれた新しい市場規模の数値化を目指しており、「女性がお金を持って、新しい市場ができている。自然体の女性の消費が正しいお金の流れを作る」と指摘する。
さらに「女性への偏見や呪縛は私たち自身の中にあり、自分自身を過小評価している。何も変える必要はない。そのままの自分たちの価値に気付いて」とも訴えた。
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2月には、ソフトウエア大手「SAPジャパン」バイスプレジデントで、横浜市男女共同参画推進担当参与も務めるアキレス美知子さんが大阪へ。企業や行政機関などで働く女性ら約20人と意見交換した。
アキレスさんは、富士ゼロックス総合教育研究所で異文化コミュニケーションのコンサルタントを務め、外資系証券会社などで人事の要職を歴任。W20では運営委員として労働分野の提言を取りまとめた。プライベートでは、米国人の夫との間に2人の娘がいる。
参加者からは「(G20で)関西財界の男性の意識を揺り動かしてほしい」「女性が柔軟に働き続けることと、組織の上にいくことを両立するのは難しい。社会を挙げた“大シャッフル”のような変化が必要」などの意見が出た。
アキレスさんは「目指すところは、男女に関係なく個人がやりたいと思ったこともライフでもワークでも実現できる社会」と強調。参加した女性たちに「環境が変わるのを待つのではなく、それぞれの場所で自ら提案して上を突き上げてほしい。そうでなければ、おそらく世の中は変わらない」と奮起を促した。
また、国連女性差別撤廃委員会前委員長で、G7(主要7カ国)ジェンダー平等諮問委員会メンバーでもある弁護士の林陽子さんも2月、大阪市内で講演。林さんは今年8月にフランスで開かれるG7首脳会議に向けた議論について紹介し、「G20のテーマ(経済、貿易、開発、気候変動、エネルギー、デジタル、テロ対策、移民・難民)の中で、ジェンダーの視点なしに解決できる問題は一つもない」と強調した。
■キーワードは「女性の力」
吉田晴乃さんは平成27年、経団連に新風を吹き込むべく女性初の役員になったとき、「あなたはバジルだ。絶対に七味唐辛子にはならないで」と言われたという。バジルは他の食材を生かしつつ、独自の風味を料理に加えるハーブだ。
男女が対極に立つ必要はなく、共通の目的に向かって力を合わせるべきだろう。吉田さんの「一人一人の女性が果敢に新しい生き方を求め、美しい花を咲かせることで、世の中がよくなっていく」との言葉を胸に刻みたい。(加納裕子)
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